第13巻3329番歌はこちらにまとめました。
第13巻 3329番歌
巻 | 第13巻 |
歌番号 | 3329番歌 |
作者 | 作者不詳 |
題詞 | – |
原文 | 白雲之 棚曳國之 青雲之 向伏國乃 天雲 下有人者 妾耳鴨 君尓戀濫 吾耳鴨 夫君尓戀礼薄 天地 満言 戀鴨 る之病有 念鴨 意之痛 妾戀叙 日尓異尓益 何時橋物 不戀時等者 不有友 是九月乎 吾背子之 偲丹為与得 千世尓物 偲渡登 万代尓 語都我部等 始而之 此九月之 過莫呼 伊多母為便無見 荒玉之 月乃易者 将為須部乃 田度伎乎不知 石根之 許凝敷道之 石床之 根延門尓 朝庭 出座而嘆 夕庭 入座戀乍 烏玉之 黒髪敷而 人寐 味寐者不宿尓 大船之 行良行良尓 思乍 吾寐夜等者 數物不敢<鴨> |
訓読 | 白雲の たなびく国の 青雲の 向伏す国の 天雲の 下なる人は 我のみかも 君に恋ふらむ 我のみかも 君に恋ふれば 天地に 言を満てて 恋ふれかも 胸の病みたる 思へかも 心の痛き 我が恋ぞ 日に異にまさる いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども この九月を 我が背子が 偲ひにせよと 千代にも 偲ひわたれと 万代に 語り継がへと 始めてし この九月の 過ぎまくを いたもすべなみ あらたまの 月の変れば 為むすべの たどきを知らに 岩が根の こごしき道の 岩床の 根延へる門に 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居恋ひつつ ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずに 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らは 数みもあへぬかも |
かな | しらくもの たなびくくにの あをくもの むかぶすくにの あまくもの したなるひとは あのみかも きみにこふらむ あのみかも きみにこふれば あめつちに ことをみてて こふれかも むねのやみたる おもへかも こころのいたき あがこひぞ ひにけにまさる いつはしも こひぬときとは あらねども このながつきを わがせこが しのひにせよと ちよにも しのひわたれと よろづよに かたりつがへと はじめてし このながつきの すぎまくを いたもすべなみ あらたまの つきのかはれば せむすべの たどきをしらに いはがねの こごしきみちの いはとこの ねばへるかどに あしたには いでゐてなげき ゆふへには いりゐこひつつ ぬばたまの くろかみしきて ひとのぬる うまいはねずに おほぶねの ゆくらゆくらに おもひつつ わがぬるよらは よみもあへぬかも |
英語(ローマ字) | SHIRAKUMONO TANABIKUKUNINO AWOKUMONO MUKABUSUKUNINO AMAKUMONO SHITANARUHITOHA ANOMIKAMO KIMINIKOFURAMU ANOMIKAMO KIMINIKOFUREBA AMETSUCHINI KOTOWOMITETE KOFUREKAMO MUNENOYAMITARU OMOHEKAMO KOKORONOITAKI AGAKOHIZO HINIKENIMASARU ITSUHASHIMO KOHINUTOKITOHA ARANEDOMO KONONAGATSUKIWO WAGASEKOGA SHINOHINISEYOTO CHIYONIMO SHINOHIWATARETO YORODUYONI KATARITSUGAHETO HAJIMETESHI KONONAGATSUKINO SUGIMAKUWO ITAMOSUBENAMI ARATAMANO TSUKINOKAHAREBA SEMUSUBENO TADOKIWOSHIRANI IHAGANENO KOGOSHIKIMICHINO IHATOKONO NEBAHERUKADONI ASHITANIHA IDEゐTENAGEKI YUFUHENIHA IRIゐKOHITSUTSU NUBATAMANO KUROKAMISHIKITE HITONONURU UMAIHANEZUNI OHOBUNENO YUKURAYUKURANI OMOHITSUTSU WAGANURUYORAHA YOMIMOAHENUKAMO |
訳 | 白雲のたなびくこの国、青雲の向こうの下に伏す国の、この広大な天雲の下にいる人々の中で私のみであろうか、あなたを恋慕うのは。さらに私のみであろうか、あなたを恋い慕って言葉を尽くしても尽くしきれないほど天に満ち満ちたる言葉を吐くのは。それほどまでに恋い慕うので胸が病み、あなたのことを思うと心が痛みます。私の恋い慕う思いは日に日に増すばかりです。いつといって恋わない時はありませんが、特にこの九月は恋しさがつのります。この九月が来ると「私を偲んでおくれ、いついつまでも忘れないで偲んでおくれ」とあの人に言われているようで、さらにはこの九月を万代(よろづよ)まで語り継いでいこうと大切にし始めた。この九月が過ぎるとどうしようもありません。月がかわってしまうと(あなたに向き合う)機会がなくなり、為すすべのとっかかりも分からず、岩でごつごつした道を、どっしりした岩床のような門口なのに、朝には門を出て嘆き、夕方には門に入って思い嘆く。白栲の着物の袖を折り返しひとり床につく。折り返した袖に黒髪を敷いて人様のように共寝をすることもなく、ゆらゆら揺れる大船のようにああでもないこうでもないと思いつつ我が寝る夜は数え切れない。 |
左注 | 右一首 |
校異 | [類][細] |
用語 | 枕詞 |