第13巻3272番歌はこちらにまとめました。
第13巻 3272番歌
巻 | 第13巻 |
歌番号 | 3272番歌 |
作者 | 作者不詳 |
題詞 | – |
原文 | 打延而 思之小野者 不遠 其里人之 標結等 聞手師日従 立良久乃 田付毛不知 居久乃 於久鴨不知 親<之> 己<之>家尚乎 草枕 客宿之如久 思空 不安物乎 嗟空 過之不得物乎 天雲之 行莫々 蘆垣乃 思乱而 乱麻乃 麻笥乎無登 吾戀流 千重乃一重母 人不令知 本名也戀牟 氣之緒尓為而 |
訓読 | うちはへて 思ひし小野は 遠からぬ その里人の 標結ふと 聞きてし日より 立てらくの たづきも知らず 居らくの 奥処も知らず にきびにし 我が家すらを 草枕 旅寝のごとく 思ふそら 苦しきものを 嘆くそら 過ぐしえぬものを 天雲の ゆくらゆくらに 葦垣の 思ひ乱れて 乱れ麻の をけをなみと 我が恋ふる 千重の一重も 人知れず もとなや恋ひむ 息の緒にして |
かな | うちはへて おもひしをのは とほからぬ そのさとびとの しめゆふと ききてしひより たてらくの たづきもしらず をらくの おくかもしらず にきびにし わがいへすらを くさまくら たびねのごとく おもふそら くるしきものを なげくそら すぐしえぬものを あまくもの ゆくらゆくらに あしかきの おもひみだれて みだれをの をけをなみと あがこふる ちへのひとへも ひとしれず もとなやこひむ いきのをにして |
英語(ローマ字) | UCHIHAHETE OMOHISHIWONOHA TOHOKARANU SONOSATOBITONO SHIMEYUFUTO KIKITESHIHIYORI TATERAKUNO TADUKIMOSHIRAZU WORAKUNO OKUKAMOSHIRAZU NIKIBINISHI WAGAIHESURAWO KUSAMAKURA TABINENOGOTOKU OMOFUSORA KURUSHIKIMONOWO NAGEKUSORA SUGUSHIENUMONOWO AMAKUMONO YUKURAYUKURANI ASHIKAKINO OMOHIMIDARETE MIDAREWONO WOKEWONAMITO AGAKOFURU CHIHENOHITOHEMO HITOSHIREZU MOTONAYAKOHIMU IKINOWONISHITE |
訳 | ずっと前から思っていた小野は、遠からぬ里人が標(しめ)を結んだと聞いた。そう聞いた日より私はどうしてよいか手段も浮かばず、お先真っ暗になり、居ても立ってもいられなくなった。住み慣れた我が家すら、草を枕の旅寝のごとく思われ、胸の内は苦しく、やり過ごすことが出来ない。ゆらゆら揺れる天雲のように、また葦(よし)垣のように思い乱れる日々。桶のない麻のように思い乱れ、この恋いごころも千に一つも彼女に知られることもなく、人しれずしきりに恋い焦がれるばかり、息も絶え絶えに。 |
左注 | (右二首) |
校異 | [類] / <> 之 [元][天] / 麻笥 [元][天][類] 司 |
用語 | 枕詞 |