第9巻1787番歌はこちらにまとめました。
第9巻 1787番歌
巻 | 第9巻 |
歌番号 | 1787番歌 |
作者 | 笠金村 |
題詞 | 天平元年己巳冬十二月歌一首[并短歌] |
原文 | 虚蝉乃 世人有者 大王之 御命恐弥 礒城嶋能 日本國乃 石上 振里尓 紐不解 丸寐乎為者 吾衣有 服者奈礼奴 毎見 戀者雖益 色二山上復有山者 一可知美 冬夜之 明毛不得呼 五十母不宿二 吾歯曽戀流 妹之直香仁 |
訓読 | うつせみの 世の人なれば 大君の 命畏み 敷島の 大和の国の 石上 布留の里に 紐解かず 丸寝をすれば 我が着たる 衣はなれぬ 見るごとに 恋はまされど 色に出でば 人知りぬべみ 冬の夜の 明かしもえぬを 寐も寝ずに 我れはぞ恋ふる 妹が直香に |
かな | うつせみの よのひとなれば おほきみの みことかしこみ しきしまの やまとのくにの いそのかみ ふるのさとに ひもとかず まろねをすれば あがきたる ころもはなれぬ みるごとに こひはまされど いろにいでば ひとしりぬべみ ふゆのよの あかしもえぬを いもねずに あれはぞこふる いもがただかに |
英語(ローマ字) | UTSUSEMINO YONOHITONAREBA OHOKIMINO MIKOTOKASHIKOMI SHIKISHIMANO YAMATONOKUNINO ISONOKAMI FURUNOSATONI HIMOTOKAZU MARONEWOSUREBA AGAKITARU KOROMOHANARENU MIRUGOTONI KOHIHAMASAREDO IRONIIDEBA HITOSHIRINUBEMI FUYUNOYONO AKASHIMOENUWO IMONEZUNI AREHAZOKOFURU IMOGATADAKANI |
訳 | 私は現世の人間なので、大君の命を恐れ畏み、大和の国の石上神宮(いそのかみじんぐう)は石上町の北の山地の布留の里で紐を解かず、丸寝をしている。わが着ている着物はよれよれになってしまった。こんな自分の姿を見るたびに妻への思いは勝るばかり。が、その思いを少しでも面に出そうものなら、人が知ってしまうので、長く寒い冬の夜を明けるのを耐えようとするが、寝るに寝られず、妻の暖かい香りを思い出して。 |
左注 | (右件五首笠朝臣金村之歌中出) |
校異 | 歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(別筆訂正)] 短歌 / 色[西(右書)] 色色 |
用語 | 相聞、作者:笠金村歌集、天平1年12月、年紀、天理、奈良、羈旅、恋情、地名、枕詞 |