雑歌一覧

雑歌についてまとめました。

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掲載数 全 1636 首

第1巻 84 首

歌番号本歌
1 番歌 篭もよ み篭持ち 堀串もよ み堀串持ち …
2 番歌 大和には 群山あれど とりよろふ 天の香 …
3 番歌 やすみしし 我が大君の 朝には 取り撫で …
4 番歌 たまきはる宇智の大野に馬並めて朝踏ますら …
5 番歌 霞立つ 長き春日の 暮れにける わづきも …
6 番歌 山越しの風を時じみ寝る夜おちず家なる妹を …
7 番歌 秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の宮処の …
8 番歌 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ …
9 番歌 莫囂円隣之大相七兄爪謁気我が背子がい立た …
10 番歌 君が代も我が代も知るや岩代の岡の草根をい …
11 番歌 我が背子は仮廬作らす草なくは小松が下の草 …
12 番歌 我が欲りし野島は見せつ底深き阿胡根の浦の …
13 番歌 香具山は 畝傍を愛しと 耳成と 相争ひき …
14 番歌 香具山と耳成山と闘ひし時立ちて見に来し印 …
15 番歌 海神の豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけく …
16 番歌 冬こもり 春さり来れば 鳴かずありし 鳥 …
17 番歌 味酒 三輪の山 あをによし 奈良の山の …
18 番歌 三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠 …
19 番歌 綜麻形の林のさきのさ野榛の衣に付くなす目 …
20 番歌 あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君 …
21 番歌 紫のにほへる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋 …
22 番歌 川の上のゆつ岩群に草生さず常にもがもな常 …
23 番歌 打ち麻を麻続の王海人なれや伊良虞の島の玉 …
24 番歌 うつせみの命を惜しみ波に濡れ伊良虞の島の …
25 番歌 み吉野の 耳我の嶺に 時なくぞ 雪は降り …
26 番歌 み吉野の 耳我の山に 時じくぞ 雪は降る …
27 番歌 淑き人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よ …
28 番歌 春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香 …
29 番歌 玉たすき 畝傍の山の 橿原の ひじりの御 …
30 番歌 楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人の舟待ち …
31 番歌 楽浪の志賀の [一云 比良の] 大わだ淀 …
32 番歌 古の人に我れあれや楽浪の古き都を見れば悲 …
33 番歌 楽浪の国つ御神のうらさびて荒れたる都見れ …
34 番歌 白波の浜松が枝の手向けぐさ幾代までにか年 …
35 番歌 これやこの大和にしては我が恋ふる紀路にあ …
36 番歌 やすみしし 我が大君の きこしめす 天の …
37 番歌 見れど飽かぬ吉野の川の常滑の絶ゆることな …
38 番歌 やすみしし 我が大君 神ながら 神さびせ …
39 番歌 山川も依りて仕ふる神ながらたぎつ河内に舟 …
40 番歌 嗚呼見の浦に舟乗りすらむをとめらが玉裳の …
41 番歌 釧着く答志の崎に今日もかも大宮人の玉藻刈 …
42 番歌 潮騒に伊良虞の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒 …
43 番歌 我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山 …
44 番歌 我妹子をいざ見の山を高みかも大和の見えぬ …
45 番歌 やすみしし 我が大君 高照らす 日の皇子 …
46 番歌 安騎の野に宿る旅人うち靡き寐も寝らめやも …
47 番歌 ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が …
48 番歌 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれ …
49 番歌 日並の皇子の命の馬並めてみ狩り立たしし時 …
50 番歌 やすみしし 我が大君 高照らす 日の皇子 …
51 番歌 采女の袖吹きかへす明日香風都を遠みいたづ …
52 番歌 やすみしし 我ご大君 高照らす 日の皇子 …
53 番歌 藤原の大宮仕へ生れ付くや娘子がともは羨し …
54 番歌 巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな …
55 番歌 あさもよし紀人羨しも真土山行き来と見らむ …
56 番歌 川上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず …
57 番歌 引間野ににほふ榛原入り乱れ衣にほはせ旅の …
58 番歌 いづくにか船泊てすらむ安礼の崎漕ぎ廻み行 …
59 番歌 流らふる妻吹く風の寒き夜に我が背の君はひ …
60 番歌 宵に逢ひて朝面無み名張にか日長く妹が廬り …
61 番歌 大丈夫のさつ矢手挟み立ち向ひ射る圓方は見 …
62 番歌 在り嶺よし対馬の渡り海中に幣取り向けて早 …
63 番歌 いざ子ども早く日本へ大伴の御津の浜松待ち …
64 番歌 葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和 …
65 番歌 霰打つ安良礼松原住吉の弟日娘女と見れど飽 …
66 番歌 大伴の高師の浜の松が根を枕き寝れど家し偲 …
67 番歌 旅にしてもの恋ほしきに鶴が音も聞こえずあ …
68 番歌 大伴の御津の浜なる忘れ貝家なる妹を忘れて …
69 番歌 草枕旅行く君と知らませば岸の埴生ににほは …
70 番歌 大和には鳴きてか来らむ呼子鳥象の中山呼び …
71 番歌 大和恋ひ寐の寝らえぬに心なくこの洲崎廻に …
72 番歌 玉藻刈る沖へは漕がじ敷栲の枕のあたり忘れ …
73 番歌 我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざる …
74 番歌 み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜も …
75 番歌 宇治間山朝風寒し旅にして衣貸すべき妹もあ …
76 番歌 ますらをの鞆の音すなり物部の大臣盾立つら …
77 番歌 吾が大君ものな思ほし皇神の継ぎて賜へる我 …
78 番歌 飛ぶ鳥の明日香の里を置きて去なば君があた …
79 番歌 大君の 命畏み 柔びにし 家を置き こも …
80 番歌 あをによし奈良の家には万代に我れも通はむ …
81 番歌 山辺の御井を見がてり神風の伊勢娘子どもあ …
82 番歌 うらさぶる心さまねしひさかたの天のしぐれ …
83 番歌 海の底沖つ白波龍田山いつか越えなむ妹があ …
84 番歌 秋さらば今も見るごと妻恋ひに鹿鳴かむ山ぞ …

第3巻 155 首

歌番号本歌
235 番歌 大君は神にしませば天雲の雷の上に廬りせる …
236 番歌 いなと言へど強ふる志斐のが強ひ語りこのこ …
237 番歌 いなと言へど語れ語れと宣らせこそ志斐いは …
238 番歌 大宮の内まで聞こゆ網引すと網子ととのふる …
239 番歌 やすみしし 我が大君 高照らす 我が日の …
240 番歌 ひさかたの天行く月を網に刺し我が大君は蓋 …
241 番歌 大君は神にしませば真木の立つ荒山中に海を …
242 番歌 滝の上の三船の山に居る雲の常にあらむと我 …
243 番歌 大君は千年に座さむ白雲も三船の山に絶ゆる …
244 番歌 み吉野の三船の山に立つ雲の常にあらむと我 …
245 番歌 聞きしごとまこと尊くくすしくも神さびをる …
246 番歌 芦北の野坂の浦ゆ船出して水島に行かむ波立 …
247 番歌 沖つ波辺波立つとも我が背子が御船の泊り波 …
248 番歌 隼人の薩摩の瀬戸を雲居なす遠くも我れは今 …
249 番歌 御津の崎波を畏み隠江の舟公宣奴嶋尓 …
250 番歌 玉藻刈る敏馬を過ぎて夏草の野島が崎に船近 …
251 番歌 淡路の野島が崎の浜風に妹が結びし紐吹き返 …
252 番歌 荒栲の藤江の浦に鱸釣る海人とか見らむ旅行 …
253 番歌 稲日野も行き過ぎかてに思へれば心恋しき加 …
254 番歌 燈火の明石大門に入らむ日や漕ぎ別れなむ家 …
255 番歌 天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大 …
256 番歌 笥飯の海の庭よくあらし刈薦の乱れて出づ見 …
257 番歌 天降りつく 天の香具山 霞立つ 春に至れ …
258 番歌 人漕がずあらくもしるし潜きする鴛鴦とたか …
259 番歌 いつの間も神さびけるか香具山の桙杉の本に …
260 番歌 天降りつく 神の香具山 うち靡く 春さり …
261 番歌 やすみしし 我が大君 高照らす 日の御子 …
262 番歌 矢釣山木立も見えず降りまがふ雪に騒ける朝 …
263 番歌 馬ないたく打ちてな行きそ日ならべて見ても …
264 番歌 もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波 …
265 番歌 苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに …
266 番歌 近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいに …
267 番歌 むささびは木末求むとあしひきの山のさつ男 …
268 番歌 我が背子が古家の里の明日香には千鳥鳴くな …
269 番歌 人見ずは我が袖もちて隠さむを焼けつつかあ …
270 番歌 旅にしてもの恋しきに山下の赤のそほ船沖を …
271 番歌 桜田へ鶴鳴き渡る年魚市潟潮干にけらし鶴鳴 …
272 番歌 四極山うち越え見れば笠縫の島漕ぎ隠る棚な …
273 番歌 磯の崎漕ぎ廻み行けば近江の海八十の港に鶴 …
274 番歌 我が舟は比良の港に漕ぎ泊てむ沖へな離りさ …
275 番歌 いづくにか我は宿らむ高島の勝野の原にこの …
276 番歌 妹も我れも一つなれかも三河なる二見の道ゆ …
277 番歌 早来ても見てましものを山背の高の槻群散り …
278 番歌 志賀の海女は藻刈り塩焼き暇なみ櫛笥の小櫛 …
279 番歌 我妹子に猪名野は見せつ名次山角の松原いつ …
280 番歌 いざ子ども大和へ早く白菅の真野の榛原手折 …
281 番歌 白菅の真野の榛原行くさ来さ君こそ見らめ真 …
282 番歌 つのさはふ磐余も過ぎず泊瀬山いつかも越え …
283 番歌 住吉の得名津に立ちて見わたせば武庫の泊り …
284 番歌 焼津辺に我が行きしかば駿河なる阿倍の市道 …
285 番歌 栲領巾の懸けまく欲しき妹が名をこの背の山 …
286 番歌 よろしなへ我が背の君が負ひ来にしこの背の …
287 番歌 ここにして家やもいづく白雲のたなびく山を …
288 番歌 我が命のま幸くあらばまたも見む志賀の大津 …
289 番歌 天の原振り放け見れば白真弓張りて懸けたり …
290 番歌 倉橋の山を高みか夜隠りに出で来る月の光乏 …
291 番歌 真木の葉のしなふ背の山偲はずて我が越え行 …
292 番歌 ひさかたの天の探女が岩船の泊てし高津はあ …
293 番歌 潮干の御津の海女のくぐつ持ち玉藻刈るらむ …
294 番歌 風をいたみ沖つ白波高からし海人の釣舟浜に …
295 番歌 住吉の岸の松原遠つ神我が大君の幸しところ …
296 番歌 廬原の清見の崎の三保の浦のゆたけき見つつ …
297 番歌 昼見れど飽かぬ田子の浦大君の命畏み夜見つ …
298 番歌 真土山夕越え行きて廬前の角太川原にひとり …
299 番歌 奥山の菅の葉しのぎ降る雪の消なば惜しけむ …
300 番歌 佐保過ぎて奈良の手向けに置く幣は妹を目離 …
301 番歌 岩が根のこごしき山を越えかねて音には泣く …
302 番歌 子らが家道やや間遠きをぬばたまの夜渡る月 …
303 番歌 名ぐはしき印南の海の沖つ波千重に隠りぬ大 …
304 番歌 大君の遠の朝廷とあり通ふ島門を見れば神代 …
305 番歌 かく故に見じと言ふものを楽浪の旧き都を見 …
306 番歌 伊勢の海の沖つ白波花にもが包みて妹が家づ …
307 番歌 はだ薄久米の若子がいましける [一云 け …
308 番歌 常磐なす石室は今もありけれど住みける人ぞ …
309 番歌 石室戸に立てる松の木汝を見れば昔の人を相 …
310 番歌 東の市の植木の木垂るまで逢はず久しみうべ …
311 番歌 梓弓引き豊国の鏡山見ず久ならば恋しけむか …
312 番歌 昔こそ難波田舎と言はれけめ今は都引き都び …
313 番歌 み吉野の滝の白波知らねども語りし継げばい …
314 番歌 さざれ波礒越道なる能登瀬川音のさやけさた …
315 番歌 み吉野の 吉野の宮は 山からし 貴くあら …
316 番歌 昔見し象の小川を今見ればいよよさやけくな …
317 番歌 天地の 別れし時ゆ 神さびて 高く貴き …
318 番歌 田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ富士の …
319 番歌 なまよみの 甲斐の国 うち寄する 駿河の …
320 番歌 富士の嶺に降り置く雪は六月の十五日に消ぬ …
321 番歌 富士の嶺を高み畏み天雲もい行きはばかりた …
322 番歌 すめろきの 神の命の 敷きませる 国のこ …
323 番歌 ももしきの大宮人の熟田津に船乗りしけむ年 …
324 番歌 みもろの 神なび山に 五百枝さし しじに …
325 番歌 明日香河川淀さらず立つ霧の思ひ過ぐべき恋 …
326 番歌 見わたせば明石の浦に燭す火の穂にぞ出でぬ …
327 番歌 海神の沖に持ち行きて放つともうれむぞこれ …
328 番歌 あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごと …
329 番歌 やすみしし我が大君の敷きませる国の中には …
330 番歌 藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほ …
331 番歌 我が盛りまたをちめやもほとほとに奈良の都 …
332 番歌 我が命も常にあらぬか昔見し象の小川を行き …
333 番歌 浅茅原つばらつばらにもの思へば古りにし里 …
334 番歌 忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘 …
335 番歌 我が行きは久にはあらじ夢のわだ瀬にはなら …
336 番歌 しらぬひ筑紫の綿は身に付けていまだは着ね …
337 番歌 憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も …
338 番歌 験なきものを思はずは一杯の濁れる酒を飲む …
339 番歌 酒の名を聖と負ほせしいにしへの大き聖の言 …
340 番歌 いにしへの七の賢しき人たちも欲りせしもの …
341 番歌 賢しみと物言ふよりは酒飲みて酔ひ泣きする …
342 番歌 言はむすべ為むすべ知らず極まりて貴きもの …
343 番歌 なかなかに人とあらずは酒壷になりにてしか …
344 番歌 あな醜賢しらをすと酒飲まぬ人をよく見ば猿 …
345 番歌 価なき宝といふとも一杯の濁れる酒にあにま …
346 番歌 夜光る玉といふとも酒飲みて心を遣るにあに …
347 番歌 世間の遊びの道に楽しきは酔ひ泣きするにあ …
348 番歌 この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥に …
349 番歌 生ける者遂にも死ぬるものにあればこの世な …
350 番歌 黙居りて賢しらするは酒飲みて酔ひ泣きする …
351 番歌 世間を何に譬へむ朝開き漕ぎ去にし船の跡な …
352 番歌 葦辺には鶴がね鳴きて港風寒く吹くらむ津乎 …
353 番歌 み吉野の高城の山に白雲は行きはばかりてた …
354 番歌 縄の浦に塩焼く煙夕されば行き過ぎかねて山 …
355 番歌 大汝少彦名のいましけむ志都の石屋は幾代経 …
356 番歌 今日もかも明日香の川の夕さらずかはづ鳴く …
357 番歌 縄の浦ゆそがひに見ゆる沖つ島漕ぎ廻る舟は …
358 番歌 武庫の浦を漕ぎ廻る小舟粟島をそがひに見つ …
359 番歌 阿倍の島鵜の住む磯に寄する波間なくこのこ …
360 番歌 潮干なば玉藻刈りつめ家の妹が浜づと乞はば …
361 番歌 秋風の寒き朝明を佐農の岡越ゆらむ君に衣貸 …
362 番歌 みさご居る磯廻に生ふるなのりその名は告ら …
363 番歌 みさご居る荒磯に生ふるなのりそのよし名は …
364 番歌 ますらをの弓末振り起し射つる矢を後見む人 …
365 番歌 塩津山打ち越え行けば我が乗れる馬ぞつまづ …
366 番歌 越の海の 角鹿の浜ゆ 大船に 真楫貫き下 …
367 番歌 越の海の手結が浦を旅にして見れば羨しみ大 …
368 番歌 大船に真楫しじ貫き大君の命畏み磯廻するか …
369 番歌 物部の臣の壮士は大君の任けのまにまに聞く …
370 番歌 雨降らずとの曇る夜のぬるぬると恋ひつつ居 …
371 番歌 意宇の海の河原の千鳥汝が鳴けば我が佐保川 …
372 番歌 春日を 春日の山の 高座の 御笠の山に …
373 番歌 高座の御笠の山に鳴く鳥の止めば継がるる恋 …
374 番歌 雨降らば着むと思へる笠の山人にな着せそ濡 …
375 番歌 吉野なる菜摘の川の川淀に鴨ぞ鳴くなる山蔭 …
376 番歌 あきづ羽の袖振る妹を玉櫛笥奥に思ふを見た …
377 番歌 青山の嶺の白雲朝に日に常に見れどもめづら …
378 番歌 いにしへの古き堤は年深み池の渚に水草生ひ …
379 番歌 ひさかたの 天の原より 生れ来る 神の命 …
380 番歌 木綿畳手に取り持ちてかくだにも我れは祈ひ …
381 番歌 家思ふと心進むな風まもり好くしていませ荒 …
382 番歌 鶏が鳴く 東の国に 高山は さはにあれど …
383 番歌 筑波嶺を外のみ見つつありかねて雪消の道を …
384 番歌 我がやどに韓藍蒔き生ほし枯れぬれど懲りず …
385 番歌 霰降り吉志美が岳をさがしみと草取りかなわ …
386 番歌 この夕柘のさ枝の流れ来ば梁は打たずて取ら …
387 番歌 いにしへに梁打つ人のなかりせばここにもあ …
388 番歌 海神は くすしきものか 淡路島 中に立て …
389 番歌 島伝ひ敏馬の崎を漕ぎ廻れば大和恋しく鶴さ …

第5巻 114 首

歌番号本歌
793 番歌 世間は空しきものと知る時しいよよますます …
794 番歌 大君の 遠の朝廷と しらぬひ 筑紫の国に …
795 番歌 家に行きていかにか我がせむ枕付く妻屋寂し …
796 番歌 はしきよしかくのみからに慕ひ来し妹が心の …
797 番歌 悔しかもかく知らませばあをによし国内こと …
798 番歌 妹が見し楝の花は散りぬべし我が泣く涙いま …
799 番歌 大野山霧立ちわたる我が嘆くおきその風に霧 …
800 番歌 父母を 見れば貴し 妻子見れば めぐし愛 …
801 番歌 ひさかたの天道は遠しなほなほに家に帰りて …
802 番歌 瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして …
803 番歌 銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめ …
804 番歌 世間の すべなきものは 年月は 流るるご …
805 番歌 常磐なすかくしもがもと思へども世の事なれ …
806 番歌 龍の馬も今も得てしかあをによし奈良の都に …
807 番歌 うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜の夢 …
808 番歌 龍の馬を我れは求めむあをによし奈良の都に …
809 番歌 直に逢はずあらくも多く敷栲の枕去らずて夢 …
810 番歌 いかにあらむ日の時にかも声知らむ人の膝の …
811 番歌 言とはぬ木にはありともうるはしき君が手馴 …
812 番歌 言とはぬ木にもありとも我が背子が手馴れの …
813 番歌 かけまくは あやに畏し 足日女 神の命 …
814 番歌 天地のともに久しく言ひ継げとこの奇し御魂 …
815 番歌 正月立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ …
816 番歌 梅の花今咲けるごと散り過ぎず我が家の園に …
817 番歌 梅の花咲きたる園の青柳は蘰にすべくなりに …
818 番歌 春さればまづ咲くやどの梅の花独り見つつや …
819 番歌 世の中は恋繁しゑやかくしあらば梅の花にも …
820 番歌 梅の花今盛りなり思ふどちかざしにしてな今 …
821 番歌 青柳梅との花を折りかざし飲みての後は散り …
822 番歌 我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流 …
823 番歌 梅の花散らくはいづくしかすがにこの城の山 …
824 番歌 梅の花散らまく惜しみ我が園の竹の林に鴬鳴 …
825 番歌 梅の花咲きたる園の青柳を蘰にしつつ遊び暮 …
826 番歌 うち靡く春の柳と我がやどの梅の花とをいか …
827 番歌 春されば木末隠りて鴬ぞ鳴きて去ぬなる梅が …
828 番歌 人ごとに折りかざしつつ遊べどもいやめづら …
829 番歌 梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくな …
830 番歌 万代に年は来経とも梅の花絶ゆることなく咲 …
831 番歌 春なればうべも咲きたる梅の花君を思ふと夜 …
832 番歌 梅の花折りてかざせる諸人は今日の間は楽し …
833 番歌 年のはに春の来らばかくしこそ梅をかざして …
834 番歌 梅の花今盛りなり百鳥の声の恋しき春来るら …
835 番歌 春さらば逢はむと思ひし梅の花今日の遊びに …
836 番歌 梅の花手折りかざして遊べども飽き足らぬ日 …
837 番歌 春の野に鳴くや鴬なつけむと我が家の園に梅 …
838 番歌 梅の花散り乱ひたる岡びには鴬鳴くも春かた …
839 番歌 春の野に霧立ちわたり降る雪と人の見るまで …
840 番歌 春柳かづらに折りし梅の花誰れか浮かべし酒 …
841 番歌 鴬の音聞くなへに梅の花我家の園に咲きて散 …
842 番歌 我がやどの梅の下枝に遊びつつ鴬鳴くも散ら …
843 番歌 梅の花折りかざしつつ諸人の遊ぶを見れば都 …
844 番歌 妹が家に雪かも降ると見るまでにここだもま …
845 番歌 鴬の待ちかてにせし梅が花散らずありこそ思 …
846 番歌 霞立つ長き春日をかざせれどいやなつかしき …
847 番歌 我が盛りいたくくたちぬ雲に飛ぶ薬食むとも …
848 番歌 雲に飛ぶ薬食むよは都見ばいやしき我が身ま …
849 番歌 残りたる雪に交れる梅の花早くな散りそ雪は …
850 番歌 雪の色を奪ひて咲ける梅の花今盛りなり見む …
851 番歌 我がやどに盛りに咲ける梅の花散るべくなり …
852 番歌 梅の花夢に語らくみやびたる花と我れ思ふ酒 …
853 番歌 あさりする海人の子どもと人は言へど見るに …
854 番歌 玉島のこの川上に家はあれど君をやさしみあ …
855 番歌 松浦川川の瀬光り鮎釣ると立たせる妹が裳の …
856 番歌 松浦なる玉島川に鮎釣ると立たせる子らが家 …
857 番歌 遠つ人松浦の川に若鮎釣る妹が手本を我れこ …
858 番歌 若鮎釣る松浦の川の川なみの並にし思はば我 …
859 番歌 春されば我家の里の川門には鮎子さ走る君待 …
860 番歌 松浦川七瀬の淀は淀むとも我れは淀まず君を …
861 番歌 松浦川川の瀬早み紅の裳の裾濡れて鮎か釣る …
862 番歌 人皆の見らむ松浦の玉島を見ずてや我れは恋 …
863 番歌 松浦川玉島の浦に若鮎釣る妹らを見らむ人の …
864 番歌 後れ居て長恋せずは御園生の梅の花にもなら …
865 番歌 君を待つ松浦の浦の娘子らは常世の国の海人 …
866 番歌 はろはろに思ほゆるかも白雲の千重に隔てる …
867 番歌 君が行き日長くなりぬ奈良道なる山斎の木立 …
868 番歌 松浦県佐用姫の子が領巾振りし山の名のみや …
869 番歌 足姫神の命の魚釣らすとみ立たしせりし石を …
870 番歌 百日しも行かぬ松浦道今日行きて明日は来な …
871 番歌 遠つ人松浦佐用姫夫恋ひに領巾振りしより負 …
872 番歌 山の名と言ひ継げとかも佐用姫がこの山の上 …
873 番歌 万世に語り継げとしこの丘に領巾振りけらし …
874 番歌 海原の沖行く船を帰れとか領巾振らしけむ松 …
875 番歌 行く船を振り留みかねいかばかり恋しくあり …
876 番歌 天飛ぶや鳥にもがもや都まで送りまをして飛 …
877 番歌 ひともねのうらぶれ居るに龍田山御馬近づか …
878 番歌 言ひつつも後こそ知らめとのしくも寂しけめ …
879 番歌 万世にいましたまひて天の下奏したまはね朝 …
880 番歌 天離る鄙に五年住まひつつ都のてぶり忘らえ …
881 番歌 かくのみや息づき居らむあらたまの来経行く …
882 番歌 我が主の御霊賜ひて春さらば奈良の都に召上 …
883 番歌 音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫が領巾振り …
884 番歌 国遠き道の長手をおほほしく今日や過ぎなむ …
885 番歌 朝露の消やすき我が身他国に過ぎかてぬかも …
886 番歌 うちひさす 宮へ上ると たらちしや 母が …
887 番歌 たらちしの母が目見ずておほほしくいづち向 …
888 番歌 常知らぬ道の長手をくれくれといかにか行か …
889 番歌 家にありて母がとり見ば慰むる心はあらまし …
890 番歌 出でて行きし日を数へつつ今日今日と我を待 …
891 番歌 一世にはふたたび見えぬ父母を置きてや長く …
892 番歌 風交り 雨降る夜の 雨交り 雪降る夜は …
893 番歌 世間を憂しとやさしと思へども飛び立ちかね …
894 番歌 神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 大和 …
895 番歌 大伴の御津の松原かき掃きて我れ立ち待たむ …
896 番歌 難波津に御船泊てぬと聞こえ来ば紐解き放け …
897 番歌 たまきはる うちの限りは [謂瞻州人<壽 …
898 番歌 慰むる心はなしに雲隠り鳴き行く鳥の音のみ …
899 番歌 すべもなく苦しくあれば出で走り去ななと思 …
900 番歌 富人の家の子どもの着る身なみ腐し捨つらむ …
901 番歌 荒栲の布衣をだに着せかてにかくや嘆かむ為 …
902 番歌 水沫なすもろき命も栲縄の千尋にもがと願ひ …
903 番歌 しつたまき数にもあらぬ身にはあれど千年に …
904 番歌 世間の 貴び願ふ 七種の 宝も我れは 何 …
905 番歌 若ければ道行き知らじ賄はせむ黄泉の使負ひ …
906 番歌 布施置きて我れは祈ひ祷むあざむかず直に率 …

第6巻 161 首

歌番号本歌
907 番歌 瀧の上の 三船の山に 瑞枝さし 繁に生ひ …
908 番歌 年のはにかくも見てしかみ吉野の清き河内の …
909 番歌 山高み白木綿花におちたぎつ瀧の河内は見れ …
910 番歌 神からか見が欲しからむみ吉野の滝の河内は …
911 番歌 み吉野の秋津の川の万代に絶ゆることなくま …
912 番歌 泊瀬女の造る木綿花み吉野の滝の水沫に咲き …
913 番歌 味凝り あやにともしく 鳴る神の 音のみ …
914 番歌 滝の上の三船の山は畏けど思ひ忘るる時も日 …
915 番歌 千鳥泣くみ吉野川の川音のやむ時なしに思ほ …
916 番歌 あかねさす日並べなくに我が恋は吉野の川の …
917 番歌 やすみしし 我ご大君の 常宮と 仕へ奉れ …
918 番歌 沖つ島荒礒の玉藻潮干満ちい隠りゆかば思ほ …
919 番歌 若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして …
920 番歌 あしひきの み山もさやに 落ちたぎつ 吉 …
921 番歌 万代に見とも飽かめやみ吉野のたぎつ河内の …
922 番歌 皆人の命も我れもみ吉野の滝の常磐の常なら …
923 番歌 やすみしし 我ご大君の 高知らす 吉野の …
924 番歌 み吉野の象山の際の木末にはここだも騒く鳥 …
925 番歌 ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川 …
926 番歌 やすみしし 我ご大君は み吉野の 秋津の …
927 番歌 あしひきの山にも野にも御狩人さつ矢手挾み …
928 番歌 おしてる 難波の国は 葦垣の 古りにし里 …
929 番歌 荒野らに里はあれども大君の敷きます時は都 …
930 番歌 海人娘女棚なし小舟漕ぎ出らし旅の宿りに楫 …
931 番歌 鯨魚取り 浜辺を清み うち靡き 生ふる玉 …
932 番歌 白波の千重に来寄する住吉の岸の埴生ににほ …
933 番歌 天地の 遠きがごとく 日月の 長きがごと …
934 番歌 朝なぎに楫の音聞こゆ御食つ国野島の海人の …
935 番歌 名寸隅の 舟瀬ゆ見ゆる 淡路島 松帆の浦 …
936 番歌 玉藻刈る海人娘子ども見に行かむ舟楫もがも …
937 番歌 行き廻り見とも飽かめや名寸隅の舟瀬の浜に …
938 番歌 やすみしし 我が大君の 神ながら 高知ら …
939 番歌 沖つ波辺波静けみ漁りすと藤江の浦に舟ぞ騒 …
940 番歌 印南野の浅茅押しなべさ寝る夜の日長くしあ …
941 番歌 明石潟潮干の道を明日よりは下笑ましけむ家 …
942 番歌 あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もま …
943 番歌 玉藻刈る唐荷の島に島廻する鵜にしもあれや …
944 番歌 島隠り我が漕ぎ来れば羨しかも大和へ上るま …
945 番歌 風吹けば波か立たむとさもらひに都太の細江 …
946 番歌 御食向ふ 淡路の島に 直向ふ 敏馬の浦の …
947 番歌 須磨の海女の塩焼き衣の慣れなばか一日も君 …
948 番歌 ま葛延ふ 春日の山は うち靡く 春さりゆ …
949 番歌 梅柳過ぐらく惜しみ佐保の内に遊びしことを …
950 番歌 大君の境ひたまふと山守据ゑ守るといふ山に …
951 番歌 見わたせば近きものから岩隠りかがよふ玉を …
952 番歌 韓衣着奈良の里の嶋松に玉をし付けむよき人 …
953 番歌 さを鹿の鳴くなる山を越え行かむ日だにや君 …
954 番歌 朝は海辺にあさりし夕されば大和へ越ゆる雁 …
955 番歌 さす竹の大宮人の家と住む佐保の山をば思ふ …
956 番歌 やすみしし我が大君の食す国は大和もここも …
957 番歌 いざ子ども香椎の潟に白栲の袖さへ濡れて朝 …
958 番歌 時つ風吹くべくなりぬ香椎潟潮干の浦に玉藻 …
959 番歌 行き帰り常に我が見し香椎潟明日ゆ後には見 …
960 番歌 隼人の瀬戸の巌も鮎走る吉野の瀧になほしか …
961 番歌 湯の原に鳴く葦鶴は我がごとく妹に恋ふれや …
962 番歌 奥山の岩に苔生し畏くも問ひたまふかも思ひ …
963 番歌 大汝 少彦名の 神こそば 名付けそめけめ …
964 番歌 我が背子に恋ふれば苦し暇あらば拾ひて行か …
965 番歌 おほならばかもかもせむを畏みと振りたき袖 …
966 番歌 大和道は雲隠りたりしかれども我が振る袖を …
967 番歌 大和道の吉備の児島を過ぎて行かば筑紫の児 …
968 番歌 ますらをと思へる我れや水茎の水城の上に涙 …
969 番歌 しましくも行きて見てしか神なびの淵はあせ …
970 番歌 指進の栗栖の小野の萩の花散らむ時にし行き …
971 番歌 白雲の 龍田の山の 露霜に 色づく時に …
972 番歌 千万の軍なりとも言挙げせず取りて来ぬべき …
973 番歌 食す国の 遠の朝廷に 汝らが かく罷りな …
974 番歌 大夫の行くといふ道ぞおほろかに思ひて行く …
975 番歌 かくしつつあらくをよみぞたまきはる短き命 …
976 番歌 難波潟潮干のなごりよく見てむ家なる妹が待 …
977 番歌 直越のこの道にしておしてるや難波の海と名 …
978 番歌 士やも空しくあるべき万代に語り継ぐべき名 …
979 番歌 我が背子が着る衣薄し佐保風はいたくな吹き …
980 番歌 雨隠り御笠の山を高みかも月の出で来ぬ夜は …
981 番歌 狩高の高円山を高みかも出で来る月の遅く照 …
982 番歌 ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく照れる月 …
983 番歌 山の端のささら愛壮士天の原門渡る光見らく …
984 番歌 雲隠り去方をなみと我が恋ふる月をや君が見 …
985 番歌 天にます月読壮士賄はせむ今夜の長さ五百夜 …
986 番歌 はしきやし間近き里の君来むとおほのびにか …
987 番歌 待ちかてに我がする月は妹が着る御笠の山に …
988 番歌 春草は後はうつろふ巌なす常盤にいませ貴き …
989 番歌 焼太刀のかど打ち放ち大夫の寿く豊御酒に我 …
990 番歌 茂岡に神さび立ちて栄えたる千代松の木の年 …
991 番歌 石走りたぎち流るる泊瀬川絶ゆることなくま …
992 番歌 故郷の飛鳥はあれどあをによし奈良の明日香 …
993 番歌 月立ちてただ三日月の眉根掻き日長く恋ひし …
994 番歌 振り放けて三日月見れば一目見し人の眉引き …
995 番歌 かくしつつ遊び飲みこそ草木すら春は咲きつ …
996 番歌 御民我れ生ける験あり天地の栄ゆる時にあへ …
997 番歌 住吉の粉浜のしじみ開けもみず隠りてのみや …
998 番歌 眉のごと雲居に見ゆる阿波の山懸けて漕ぐ舟 …
999 番歌 茅渟廻より雨ぞ降り来る四極の海人綱手干し …
1000 番歌 子らしあらばふたり聞かむを沖つ洲に鳴くな …
1001 番歌 大夫は御狩に立たし娘子らは赤裳裾引く清き …
1002 番歌 馬の歩み抑へ留めよ住吉の岸の埴生ににほひ …
1003 番歌 海女娘子玉求むらし沖つ波畏き海に舟出せり …
1004 番歌 思ほえず来ましし君を佐保川のかはづ聞かせ …
1005 番歌 やすみしし 我が大君の 見したまふ 吉野 …
1006 番歌 神代より吉野の宮にあり通ひ高知らせるは山 …
1007 番歌 言問はぬ木すら妹と兄とありといふをただ独 …
1008 番歌 山の端にいさよふ月の出でむかと我が待つ君 …
1009 番歌 橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどい …
1010 番歌 奥山の真木の葉しのぎ降る雪の降りは増すと …
1011 番歌 我が宿の梅咲きたりと告げ遣らば来と言ふに …
1012 番歌 春さればををりにををり鴬の鳴く我が山斎ぞ …
1013 番歌 あらかじめ君来まさむと知らませば門に宿に …
1014 番歌 一昨日も昨日も今日も見つれども明日さへ見 …
1015 番歌 玉敷きて待たましよりはたけそかに来る今夜 …
1016 番歌 海原の遠き渡りを風流士の遊ぶを見むとなづ …
1017 番歌 木綿畳手向けの山を今日越えていづれの野辺 …
1018 番歌 白玉は人に知らえず知らずともよし知らずと …
1019 番歌 石上 布留の命は 手弱女の 惑ひによりて …
1020 番歌 大君の 命畏み さし並ぶ 国に出でます …
1021 番歌
1022 番歌 父君に 我れは愛子ぞ 母刀自に 我れは愛 …
1023 番歌 大崎の神の小浜は狭けども百舟人も過ぐと言 …
1024 番歌 長門なる沖つ借島奥まへて我が思ふ君は千年 …
1025 番歌 奥まへて我れを思へる我が背子は千年五百年 …
1026 番歌 ももしきの大宮人は今日もかも暇をなみと里 …
1027 番歌 橘の本に道踏む八衢に物をぞ思ふ人に知らえ …
1028 番歌 ますらをの高円山に迫めたれば里に下り来る …
1029 番歌 河口の野辺に廬りて夜の経れば妹が手本し思 …
1030 番歌 妹に恋ひ吾の松原見わたせば潮干の潟に鶴鳴 …
1031 番歌 後れにし人を思はく思泥の崎木綿取り垂でて …
1032 番歌 大君の行幸のまにま我妹子が手枕まかず月ぞ …
1033 番歌 御食つ国志摩の海人ならしま熊野の小舟に乗 …
1034 番歌 いにしへゆ人の言ひ来る老人の変若つといふ …
1035 番歌 田跡川の瀧を清みかいにしへゆ宮仕へけむ多 …
1036 番歌 関なくは帰りにだにもうち行きて妹が手枕ま …
1037 番歌 今造る久迩の都は山川のさやけき見ればうべ …
1038 番歌 故郷は遠くもあらず一重山越ゆるがからに思 …
1039 番歌 我が背子とふたりし居らば山高み里には月は …
1040 番歌 ひさかたの雨は降りしけ思ふ子がやどに今夜 …
1041 番歌 我がやどの君松の木に降る雪の行きには行か …
1042 番歌 一つ松幾代か経ぬる吹く風の音の清きは年深 …
1043 番歌 たまきはる命は知らず松が枝を結ぶ心は長く …
1044 番歌 紅に深く染みにし心かも奈良の都に年の経ぬ …
1045 番歌 世間を常なきものと今ぞ知る奈良の都のうつ …
1046 番歌 岩綱のまた変若ちかへりあをによし奈良の都 …
1047 番歌 やすみしし 我が大君の 高敷かす 大和の …
1048 番歌 たち変り古き都となりぬれば道の芝草長く生 …
1049 番歌 なつきにし奈良の都の荒れゆけば出で立つご …
1050 番歌 現つ神 我が大君の 天の下 八島の内に …
1051 番歌 三香の原布当の野辺を清みこそ大宮所 [一 …
1052 番歌 山高く川の瀬清し百代まで神しみゆかむ大宮 …
1053 番歌 吾が大君 神の命の 高知らす 布当の宮は …
1054 番歌 泉川行く瀬の水の絶えばこそ大宮所移ろひ行 …
1055 番歌 布当山山なみ見れば百代にも変るましじき大 …
1056 番歌 娘子らが続麻懸くといふ鹿背の山時しゆけれ …
1057 番歌 鹿背の山木立を茂み朝さらず来鳴き響もす鴬 …
1058 番歌 狛山に鳴く霍公鳥泉川渡りを遠みここに通は …
1059 番歌 三香の原 久迩の都は 山高み 川の瀬清み …
1060 番歌 三香の原久迩の都は荒れにけり大宮人のうつ …
1061 番歌 咲く花の色は変らずももしきの大宮人ぞたち …
1062 番歌 やすみしし 我が大君の あり通ふ 難波の …
1063 番歌 あり通ふ難波の宮は海近み海人娘子らが乗れ …
1064 番歌 潮干れば葦辺に騒く白鶴の妻呼ぶ声は宮もと …
1065 番歌 八千桙の 神の御代より 百舟の 泊つる泊 …
1066 番歌 まそ鏡敏馬の浦は百舟の過ぎて行くべき浜な …
1067 番歌 浜清み浦うるはしみ神代より千舟の泊つる大 …

第7巻 228 首

歌番号本歌
1068 番歌 天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る …
1069 番歌 常はさね思はぬものをこの月の過ぎ隠らまく …
1070 番歌 大夫の弓末振り起し狩高の野辺さへ清く照る …
1071 番歌 山の端にいさよふ月を出でむかと待ちつつ居 …
1072 番歌 明日の宵照らむ月夜は片寄りに今夜に寄りて …
1073 番歌 玉垂の小簾の間通しひとり居て見る験なき夕 …
1074 番歌 春日山おして照らせるこの月は妹が庭にもさ …
1075 番歌 海原の道遠みかも月読の光少き夜は更けにつ …
1076 番歌 ももしきの大宮人の罷り出て遊ぶ今夜の月の …
1077 番歌 ぬばたまの夜渡る月を留めむに西の山辺に関 …
1078 番歌 この月のここに来たれば今とかも妹が出で立 …
1079 番歌 まそ鏡照るべき月を白栲の雲か隠せる天つ霧 …
1080 番歌 ひさかたの天照る月は神代にか出で反るらむ …
1081 番歌 ぬばたまの夜渡る月をおもしろみ我が居る袖 …
1082 番歌 水底の玉さへさやに見つべくも照る月夜かも …
1083 番歌 霜曇りすとにかあるらむ久方の夜渡る月の見 …
1084 番歌 山の端にいさよふ月をいつとかも我は待ち居 …
1085 番歌 妹があたり我が袖振らむ木の間より出で来る …
1086 番歌 靫懸くる伴の男広き大伴に国栄えむと月は照 …
1087 番歌 穴師川川波立ちぬ巻向の弓月が岳に雲居立て …
1088 番歌 あしひきの山川の瀬の鳴るなへに弓月が岳に …
1089 番歌 大海に島もあらなくに海原のたゆたふ波に立 …
1090 番歌 我妹子が赤裳の裾のひづちなむ今日の小雨に …
1091 番歌 通るべく雨はな降りそ我妹子が形見の衣我れ …
1092 番歌 鳴る神の音のみ聞きし巻向の桧原の山を今日 …
1093 番歌 三諸のその山なみに子らが手を巻向山は継ぎ …
1094 番歌 我が衣色取り染めむ味酒三室の山は黄葉しに …
1095 番歌 三諸つく三輪山見れば隠口の泊瀬の桧原思ほ …
1096 番歌 いにしへのことは知らぬを我れ見ても久しく …
1097 番歌 我が背子をこち巨勢山と人は言へど君も来ま …
1098 番歌 紀道にこそ妹山ありといへ玉櫛笥二上山も妹 …
1099 番歌 片岡のこの向つ峰に椎蒔かば今年の夏の蔭に …
1100 番歌 巻向の穴師の川ゆ行く水の絶ゆることなくま …
1101 番歌 ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しもあ …
1102 番歌 大君の御笠の山の帯にせる細谷川の音のさや …
1103 番歌 今しくは見めやと思ひしみ吉野の大川淀を今 …
1104 番歌 馬並めてみ吉野川を見まく欲りうち越え来て …
1105 番歌 音に聞き目にはいまだ見ぬ吉野川六田の淀を …
1106 番歌 かはづ鳴く清き川原を今日見てはいつか越え …
1107 番歌 泊瀬川白木綿花に落ちたぎつ瀬をさやけみと …
1108 番歌 泊瀬川流るる水脈の瀬を早みゐで越す波の音 …
1109 番歌 さ桧の隈桧隈川の瀬を早み君が手取らば言寄 …
1110 番歌 ゆ種蒔くあらきの小田を求めむと足結ひ出で …
1111 番歌 いにしへもかく聞きつつか偲ひけむこの布留 …
1112 番歌 はねかづら今する妹をうら若みいざ率川の音 …
1113 番歌 この小川霧ぞ結べるたぎちゆく走井の上に言 …
1114 番歌 我が紐を妹が手もちて結八川またかへり見む …
1115 番歌 妹が紐結八河内をいにしへのみな人見きとこ …
1116 番歌 ぬばたまの我が黒髪に降りなづむ天の露霜取 …
1117 番歌 島廻すと磯に見し花風吹きて波は寄すとも採 …
1118 番歌 いにしへにありけむ人も我がごとか三輪の桧 …
1119 番歌 行く川の過ぎにし人の手折らねばうらぶれ立 …
1120 番歌 み吉野の青根が岳の蘿むしろ誰れか織りけむ …
1121 番歌 妹らがり我が通ひ道の小竹すすき我れし通は …
1122 番歌 山の際に渡るあきさの行きて居むその川の瀬 …
1123 番歌 佐保川の清き川原に鳴く千鳥かはづと二つ忘 …
1124 番歌 佐保川に騒ける千鳥さ夜更けて汝が声聞けば …
1125 番歌 清き瀬に千鳥妻呼び山の際に霞立つらむ神な …
1126 番歌 年月もいまだ経なくに明日香川瀬々ゆ渡しし …
1127 番歌 落ちたぎつ走井水の清くあれば置きては我れ …
1128 番歌 馬酔木なす栄えし君が掘りし井の石井の水は …
1129 番歌 琴取れば嘆き先立つけだしくも琴の下樋に妻 …
1130 番歌 神さぶる岩根こごしきみ吉野の水分山を見れ …
1131 番歌 皆人の恋ふるみ吉野今日見ればうべも恋ひけ …
1132 番歌 夢のわだ言にしありけりうつつにも見て来る …
1133 番歌 すめろきの神の宮人ところづらいやとこしく …
1134 番歌 吉野川巌と栢と常磐なす我れは通はむ万代ま …
1135 番歌 宇治川は淀瀬なからし網代人舟呼ばふ声をち …
1136 番歌 宇治川に生ふる菅藻を川早み採らず来にけり …
1137 番歌 宇治人の譬への網代我れならば今は寄らまし …
1138 番歌 宇治川を舟渡せをと呼ばへども聞こえざるら …
1139 番歌 ちはや人宇治川波を清みかも旅行く人の立ち …
1140 番歌 しなが鳥猪名野を来れば有馬山夕霧立ちぬ宿 …
1141 番歌 武庫川の水脈を早みと赤駒の足掻くたぎちに …
1142 番歌 命をし幸くよけむと石走る垂水の水をむすび …
1143 番歌 さ夜更けて堀江漕ぐなる松浦舟楫の音高し水 …
1144 番歌 悔しくも満ちぬる潮か住吉の岸の浦廻ゆ行か …
1145 番歌 妹がため貝を拾ふと茅渟の海に濡れにし袖は …
1146 番歌 めづらしき人を我家に住吉の岸の埴生を見む …
1147 番歌 暇あらば拾ひに行かむ住吉の岸に寄るといふ …
1148 番歌 馬並めて今日我が見つる住吉の岸の埴生を万 …
1149 番歌 住吉に行くといふ道に昨日見し恋忘れ貝言に …
1150 番歌 住吉の岸に家もが沖に辺に寄する白波見つつ …
1151 番歌 大伴の御津の浜辺をうちさらし寄せ来る波の …
1152 番歌 楫の音ぞほのかにすなる海人娘子沖つ藻刈り …
1153 番歌 住吉の名児の浜辺に馬立てて玉拾ひしく常忘 …
1154 番歌 雨は降る刈廬は作るいつの間に吾児の潮干に …
1155 番歌 名児の海の朝明のなごり今日もかも磯の浦廻 …
1156 番歌 住吉の遠里小野の真榛もち摺れる衣の盛り過 …
1157 番歌 時つ風吹かまく知らず吾児の海の朝明の潮に …
1158 番歌 住吉の沖つ白波風吹けば来寄する浜を見れば …
1159 番歌 住吉の岸の松が根うちさらし寄せ来る波の音 …
1160 番歌 難波潟潮干に立ちて見わたせば淡路の島に鶴 …
1161 番歌 家離り旅にしあれば秋風の寒き夕に雁鳴き渡 …
1162 番歌 円方の港の洲鳥波立てや妻呼びたてて辺に近 …
1163 番歌 年魚市潟潮干にけらし知多の浦に朝漕ぐ舟も …
1164 番歌 潮干ればともに潟に出で鳴く鶴の声遠ざかる …
1165 番歌 夕なぎにあさりする鶴潮満てば沖波高み己妻 …
1166 番歌 いにしへにありけむ人の求めつつ衣に摺りけ …
1167 番歌 あさりすと礒に我が見しなのりそをいづれの …
1168 番歌 今日もかも沖つ玉藻は白波の八重をるが上に …
1169 番歌 近江の海港は八十ちいづくにか君が舟泊て草 …
1170 番歌 楽浪の連庫山に雲居れば雨ぞ降るちふ帰り来 …
1171 番歌 大御船泊ててさもらふ高島の三尾の勝野の渚 …
1172 番歌 いづくにか舟乗りしけむ高島の香取の浦ゆ漕 …
1173 番歌 飛騨人の真木流すといふ丹生の川言は通へど …
1174 番歌 霰降り鹿島の崎を波高み過ぎてや行かむ恋し …
1175 番歌 足柄の箱根飛び越え行く鶴の羨しき見れば大 …
1176 番歌 夏麻引く海上潟の沖つ洲に鳥はすだけど君は …
1177 番歌 若狭なる三方の海の浜清みい行き帰らひ見れ …
1178 番歌 印南野は行き過ぎぬらし天伝ふ日笠の浦に波 …
1179 番歌 家にして我れは恋ひむな印南野の浅茅が上に …
1180 番歌 荒磯越す波を畏み淡路島見ずか過ぎなむここ …
1181 番歌 朝霞止まずたなびく龍田山舟出せむ日は我れ …
1182 番歌 海人小舟帆かも張れると見るまでに鞆の浦廻 …
1183 番歌 ま幸くてまたかへり見む大夫の手に巻き持て …
1184 番歌 鳥じもの海に浮き居て沖つ波騒くを聞けばあ …
1185 番歌 朝なぎに真楫漕ぎ出て見つつ来し御津の松原 …
1186 番歌 あさりする海人娘子らが袖通り濡れにし衣干 …
1187 番歌 網引する海人とか見らむ飽の浦の清き荒磯を …
1188 番歌 山越えて遠津の浜の岩つつじ我が来るまでに …
1189 番歌 大海にあらしな吹きそしなが鳥猪名の港に舟 …
1190 番歌 舟泊ててかし振り立てて廬りせむ名児江の浜 …
1191 番歌 妹が門出入の川の瀬を早み我が馬つまづく家 …
1192 番歌 白栲ににほふ真土の山川に我が馬なづむ家恋 …
1193 番歌 背の山に直に向へる妹の山事許せやも打橋渡 …
1194 番歌 紀の国の雑賀の浦に出で見れば海人の燈火波 …
1195 番歌 麻衣着ればなつかし紀の国の妹背の山に麻蒔 …
1196 番歌 つともがと乞はば取らせむ貝拾ふ我れを濡ら …
1197 番歌 手に取るがからに忘ると海人の言ひし恋忘れ …
1198 番歌 あさりすと礒に棲む鶴明けされば浜風寒み己 …
1199 番歌 藻刈り舟沖漕ぎ来らし妹が島形見の浦に鶴翔 …
1200 番歌 我が舟は沖ゆな離り迎へ舟方待ちがてり浦ゆ …
1201 番歌 大海の水底響み立つ波の寄らむと思へる礒の …
1202 番歌 荒礒ゆもまして思へや玉の浦離れ小島の夢に …
1203 番歌 礒の上に爪木折り焚き汝がためと我が潜き来 …
1204 番歌 浜清み礒に我が居れば見む人は海人とか見ら …
1205 番歌 沖つ楫やくやくしぶを見まく欲り我がする里 …
1206 番歌 沖つ波辺つ藻巻き持ち寄せ来とも君にまされ …
1207 番歌 粟島に漕ぎ渡らむと思へども明石の門波いま …
1208 番歌 妹に恋ひ我が越え行けば背の山の妹に恋ひず …
1209 番歌 人ならば母が愛子ぞあさもよし紀の川の辺の …
1210 番歌 我妹子に我が恋ひ行けば羨しくも並び居るか …
1211 番歌 妹があたり今ぞ我が行く目のみだに我れに見 …
1212 番歌 足代過ぎて糸鹿の山の桜花散らずもあらなむ …
1213 番歌 名草山言にしありけり我が恋ふる千重の一重 …
1214 番歌 安太へ行く小為手の山の真木の葉も久しく見 …
1215 番歌 玉津島よく見ていませあをによし奈良なる人 …
1216 番歌 潮満たばいかにせむとか海神の神が手渡る海 …
1217 番歌 玉津島見てしよけくも我れはなし都に行きて …
1218 番歌 黒牛の海紅にほふももしきの大宮人しあさり …
1219 番歌 若の浦に白波立ちて沖つ風寒き夕は大和し思 …
1220 番歌 妹がため玉を拾ふと紀伊の国の由良の岬にこ …
1221 番歌 我が舟の楫はな引きそ大和より恋ひ来し心い …
1222 番歌 玉津島見れども飽かずいかにして包み持ち行 …
1223 番歌 海の底沖漕ぐ舟を辺に寄せむ風も吹かぬか波 …
1224 番歌 大葉山霞たなびきさ夜更けて我が舟泊てむ泊 …
1225 番歌 さ夜更けて夜中の方におほほしく呼びし舟人 …
1226 番歌 三輪の崎荒磯も見えず波立ちぬいづくゆ行か …
1227 番歌 礒に立ち沖辺を見れば藻刈り舟海人漕ぎ出ら …
1228 番歌 風早の三穂の浦廻を漕ぐ舟の舟人騒く波立つ …
1229 番歌 我が舟は明石の水門に漕ぎ泊てむ沖へな離り …
1230 番歌 ちはやぶる鐘の岬を過ぎぬとも我れは忘れじ …
1231 番歌 天霧らひひかた吹くらし水茎の岡の港に波立 …
1232 番歌 大海の波は畏ししかれども神を斎ひて舟出せ …
1233 番歌 娘子らが織る機の上を真櫛もち掻上げ栲島波 …
1234 番歌 潮早み磯廻に居れば潜きする海人とや見らむ …
1235 番歌 波高しいかに楫取り水鳥の浮寝やすべきなほ …
1236 番歌 夢のみに継ぎて見えつつ高島の礒越す波のし …
1237 番歌 静けくも岸には波は寄せけるかこれの屋通し …
1238 番歌 高島の安曇白波は騒けども我れは家思ふ廬り …
1239 番歌 大海の礒もと揺り立つ波の寄せむと思へる浜 …
1240 番歌 玉櫛笥みもろと山を行きしかばおもしろくし …
1241 番歌 ぬばたまの黒髪山を朝越えて山下露に濡れに …
1242 番歌 あしひきの山行き暮らし宿借らば妹立ち待ち …
1243 番歌 見わたせば近き里廻をた廻り今ぞ我が来る領 …
1244 番歌 娘子らが放りの髪を由布の山雲なたなびき家 …
1245 番歌 志賀の海人の釣舟の綱堪へずして心に思ひて …
1246 番歌 志賀の海人の塩焼く煙風をいたみ立ちは上ら …
1247 番歌 大汝少御神の作らしし妹背の山を見らくしよ …
1248 番歌 我妹子と見つつ偲はむ沖つ藻の花咲きたらば …
1249 番歌 君がため浮沼の池の菱摘むと我が染めし袖濡 …
1250 番歌 妹がため菅の実摘みに行きし我れ山道に惑ひ …
1251 番歌 佐保川に鳴くなる千鳥何しかも川原を偲ひい …
1252 番歌 人こそばおほにも言はめ我がここだ偲ふ川原 …
1253 番歌 楽浪の志賀津の海人は我れなしに潜きはなせ …
1254 番歌 大船に楫しもあらなむ君なしに潜きせめやも …
1255 番歌 月草に衣ぞ染むる君がため斑の衣摺らむと思 …
1256 番歌 春霞井の上ゆ直に道はあれど君に逢はむとた …
1257 番歌 道の辺の草深百合の花笑みに笑みしがからに …
1258 番歌 黙あらじと言のなぐさに言ふことを聞き知れ …
1259 番歌 佐伯山卯の花持ちし愛しきが手をし取りてば …
1260 番歌 時ならぬ斑の衣着欲しきか島の榛原時にあら …
1261 番歌 山守の里へ通ひし山道ぞ茂くなりける忘れけ …
1262 番歌 あしひきの山椿咲く八つ峰越え鹿待つ君が斎 …
1263 番歌 暁と夜烏鳴けどこの岡の木末の上はいまだ静 …
1264 番歌 西の市にただ独り出でて目並べず買ひてし絹 …
1265 番歌 今年行く新防人が麻衣肩のまよひは誰れか取 …
1266 番歌 大船を荒海に漕ぎ出でや船たけ我が見し子ら …
1267 番歌 ももしきの大宮人の踏みし跡ところ沖つ波来 …
1268 番歌 子らが手を巻向山は常にあれど過ぎにし人に …
1269 番歌 巻向の山辺響みて行く水の水沫のごとし世の …
1270 番歌 こもりくの泊瀬の山に照る月は満ち欠けしけ …
1271 番歌 遠くありて雲居に見ゆる妹が家に早く至らむ …
1272 番歌 大刀の後鞘に入野に葛引く我妹真袖もち着せ …
1273 番歌 住吉の波豆麻の君が馬乗衣さひづらふ漢女を …
1274 番歌 住吉の出見の浜の柴な刈りそね娘子らが赤裳 …
1275 番歌 住吉の小田を刈らす子奴かもなき奴あれど妹 …
1276 番歌 池の辺の小槻の下の小竹な刈りそねそれをだ …
1277 番歌 天なる日売菅原の草な刈りそね蜷の腸か黒き …
1278 番歌 夏蔭の妻屋の下に衣裁つ我妹うら設けて我が …
1279 番歌 梓弓引津の辺なるなのりその花摘むまでに逢 …
1280 番歌 うちひさす宮道を行くに我が裳は破れぬ玉の …
1281 番歌 君がため手力疲れ織れる衣ぞ春さらばいかな …
1282 番歌 はしたての倉橋山に立てる白雲見まく欲り我 …
1283 番歌 はしたての倉橋川の石の橋はも男盛りに我が …
1284 番歌 はしたての倉橋川の川の静菅我が刈りて笠に …
1285 番歌 春日すら田に立ち疲る君は悲しも若草の妻な …
1286 番歌 山背の久世の社の草な手折りそ我が時と立ち …
1287 番歌 青みづら依網の原に人も逢はぬかも石走る近 …
1288 番歌 港の葦の末葉を誰れか手折りし我が背子が振 …
1289 番歌 垣越しに犬呼び越して鳥猟する君青山の茂き …
1290 番歌 海の底沖つ玉藻のなのりその花妹と我れとこ …
1291 番歌 この岡に草刈るわらはなしか刈りそねありつ …
1292 番歌 江林に臥せる獣やも求むるによき白栲の袖巻 …
1293 番歌 霰降り遠つ淡海の吾跡川楊刈れどもまたも生 …
1294 番歌 朝月の日向の山に月立てり見ゆ遠妻を待ちた …
1295 番歌 春日なる御笠の山に月の舟出づ風流士の飲む …

第8巻 177 首

第8巻は春夏秋冬で区分けしています。

春 30 首

歌番号本歌
1418 番歌 石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春に …
1419 番歌 神なびの石瀬の社の呼子鳥いたくな鳴きそ我 …
1420 番歌 沫雪かはだれに降ると見るまでに流らへ散る …
1421 番歌 春山の咲きのををりに春菜摘む妹が白紐見ら …
1422 番歌 うち靡く春来るらし山の際の遠き木末の咲き …
1423 番歌 去年の春いこじて植ゑし我がやどの若木の梅 …
1424 番歌 春の野にすみれ摘みにと来し我れぞ野をなつ …
1425 番歌 あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばい …
1426 番歌 我が背子に見せむと思ひし梅の花それとも見 …
1427 番歌 明日よりは春菜摘まむと標めし野に昨日も今 …
1428 番歌 おしてる 難波を過ぎて うち靡く 草香の …
1429 番歌 娘子らが かざしのために 風流士の かづ …
1430 番歌 去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎 …
1431 番歌 百済野の萩の古枝に春待つと居りし鴬鳴きに …
1432 番歌 我が背子が見らむ佐保道の青柳を手折りてだ …
1433 番歌 うち上る佐保の川原の青柳は今は春へとなり …
1434 番歌 霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに春日の里に梅 …
1435 番歌 かはづ鳴く神奈備川に影見えて今か咲くらむ …
1436 番歌 含めりと言ひし梅が枝今朝降りし沫雪にあひ …
1437 番歌 霞立つ春日の里の梅の花山のあらしに散りこ …
1438 番歌 霞立つ春日の里の梅の花花に問はむと我が思 …
1439 番歌 時は今は春になりぬとみ雪降る遠山の辺に霞 …
1440 番歌 春雨のしくしく降るに高円の山の桜はいかに …
1441 番歌 うち霧らひ雪は降りつつしかすがに我家の苑 …
1442 番歌 難波辺に人の行ければ後れ居て春菜摘む子を …
1443 番歌 霞立つ野の上の方に行きしかば鴬鳴きつ春に …
1444 番歌 山吹の咲きたる野辺のつほすみれこの春の雨 …
1445 番歌 風交り雪は降るとも実にならぬ我家の梅を花 …
1446 番歌 春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを …
1447 番歌 世の常に聞けば苦しき呼子鳥声なつかしき時 …

夏 33 首

歌番号本歌
1465 番歌 霍公鳥いたくな鳴きそ汝が声を五月の玉にあ …
1466 番歌 神奈備の石瀬の社の霍公鳥毛無の岡にいつか …
1467 番歌 霍公鳥なかる国にも行きてしかその鳴く声を …
1468 番歌 霍公鳥声聞く小野の秋風に萩咲きぬれや声の …
1469 番歌 あしひきの山霍公鳥汝が鳴けば家なる妹し常 …
1470 番歌 もののふの石瀬の社の霍公鳥今も鳴かぬか山 …
1471 番歌 恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波 …
1472 番歌 霍公鳥来鳴き響もす卯の花の伴にや来しと問 …
1473 番歌 橘の花散る里の霍公鳥片恋しつつ鳴く日しぞ …
1474 番歌 今もかも大城の山に霍公鳥鳴き響むらむ我れ …
1475 番歌 何しかもここだく恋ふる霍公鳥鳴く声聞けば …
1476 番歌 ひとり居て物思ふ宵に霍公鳥こゆ鳴き渡る心 …
1477 番歌 卯の花もいまだ咲かねば霍公鳥佐保の山辺に …
1478 番歌 我が宿の花橘のいつしかも玉に貫くべくその …
1479 番歌 隠りのみ居ればいぶせみ慰むと出で立ち聞け …
1480 番歌 我が宿に月おし照れり霍公鳥心あれ今夜来鳴 …
1481 番歌 我が宿の花橘に霍公鳥今こそ鳴かめ友に逢へ …
1482 番歌 皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴く霍公鳥我 …
1483 番歌 我が背子が宿の橘花をよみ鳴く霍公鳥見にぞ …
1484 番歌 霍公鳥いたくな鳴きそひとり居て寐の寝らえ …
1485 番歌 夏まけて咲きたるはねずひさかたの雨うち降 …
1486 番歌 我が宿の花橘を霍公鳥来鳴かず地に散らして …
1487 番歌 霍公鳥思はずありき木の暗のかくなるまでに …
1488 番歌 いづくには鳴きもしにけむ霍公鳥我家の里に …
1489 番歌 我が宿の花橘は散り過ぎて玉に貫くべく実に …
1490 番歌 霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をい …
1491 番歌 卯の花の過ぎば惜しみか霍公鳥雨間も置かず …
1492 番歌 君が家の花橘はなりにけり花のある時に逢は …
1493 番歌 我が宿の花橘を霍公鳥来鳴き響めて本に散ら …
1494 番歌 夏山の木末の茂に霍公鳥鳴き響むなる声の遥 …
1495 番歌 あしひきの木の間立ち潜く霍公鳥かく聞きそ …
1496 番歌 我が宿のなでしこの花盛りなり手折りて一目 …
1497 番歌 筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥山彦響め鳴か …

秋 95 首

歌番号本歌
1511 番歌 夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かず寐 …
1512 番歌 経もなく緯も定めず娘子らが織る黄葉に霜な …
1513 番歌 今朝の朝明雁が音聞きつ春日山もみちにけら …
1514 番歌 秋萩は咲くべくあらし我がやどの浅茅が花の …
1515 番歌 言繁き里に住まずは今朝鳴きし雁にたぐひて …
1516 番歌 秋山にもみつ木の葉のうつりなばさらにや秋 …
1517 番歌 味酒三輪のはふりの山照らす秋の黄葉の散ら …
1518 番歌 天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり …
1519 番歌 久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり …
1520 番歌 彦星は 織女と 天地の 別れし時ゆ いな …
1521 番歌 風雲は二つの岸に通へども我が遠妻の [一 …
1522 番歌 たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればか …
1523 番歌 秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋 …
1524 番歌 天の川いと川波は立たねどもさもらひかたし …
1525 番歌 袖振らば見も交しつべく近けども渡るすべな …
1526 番歌 玉かぎるほのかに見えて別れなばもとなや恋 …
1527 番歌 彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし天の川原に霧の立 …
1528 番歌 霞立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳の …
1529 番歌 天の川浮津の波音騒くなり我が待つ君し舟出 …
1530 番歌 をみなへし秋萩交る蘆城の野今日を始めて万 …
1531 番歌 玉櫛笥蘆城の川を今日見ては万代までに忘ら …
1532 番歌 草枕旅行く人も行き触ればにほひぬべくも咲 …
1533 番歌 伊香山野辺に咲きたる萩見れば君が家なる尾 …
1534 番歌 をみなへし秋萩折れれ玉桙の道行きづとと乞 …
1535 番歌 我が背子をいつぞ今かと待つなへに面やは見 …
1536 番歌 宵に逢ひて朝面なみ名張野の萩は散りにき黄 …
1537 番歌 秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七 …
1538 番歌 萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた …
1539 番歌 秋の田の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろに …
1540 番歌 今朝の朝明雁が音寒く聞きしなへ野辺の浅茅 …
1541 番歌 我が岡にさを鹿来鳴く初萩の花妻どひに来鳴 …
1542 番歌 我が岡の秋萩の花風をいたみ散るべくなりぬ …
1543 番歌 秋の露は移しにありけり水鳥の青葉の山の色 …
1544 番歌 彦星の思ひますらむ心より見る我れ苦し夜の …
1545 番歌 織女の袖継ぐ宵の暁は川瀬の鶴は鳴かずとも …
1546 番歌 妹がりと我が行く道の川しあればつくめ結ぶ …
1547 番歌 さを鹿の萩に貫き置ける露の白玉あふさわに …
1548 番歌 咲く花もをそろはいとはしおくてなる長き心 …
1549 番歌 射目立てて跡見の岡辺のなでしこの花ふさ手 …
1550 番歌 秋萩の散りの乱ひに呼びたてて鳴くなる鹿の …
1551 番歌 時待ちて降れるしぐれの雨やみぬ明けむ朝か …
1552 番歌 夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこほろ …
1553 番歌 時雨の雨間なくし降れば御笠山木末あまねく …
1554 番歌 大君の御笠の山の黄葉は今日の時雨に散りか …
1555 番歌 秋立ちて幾日もあらねばこの寝ぬる朝明の風 …
1556 番歌 秋田刈る刈廬もいまだ壊たねば雁が音寒し霜 …
1557 番歌 明日香川行き廻る岡の秋萩は今日降る雨に散 …
1558 番歌 鶉鳴く古りにし里の秋萩を思ふ人どち相見つ …
1559 番歌 秋萩は盛り過ぐるをいたづらにかざしに挿さ …
1560 番歌 妹が目を始見の崎の秋萩はこの月ごろは散り …
1561 番歌 吉隠の猪養の山に伏す鹿の妻呼ぶ声を聞くが …
1562 番歌 誰れ聞きつこゆ鳴き渡る雁がねの妻呼ぶ声の …
1563 番歌 聞きつやと妹が問はせる雁が音はまことも遠 …
1564 番歌 秋づけば尾花が上に置く露の消ぬべくも我は …
1565 番歌 我が宿の一群萩を思ふ子に見せずほとほと散 …
1566 番歌 久方の雨間も置かず雲隠り鳴きぞ行くなる早 …
1567 番歌 雲隠り鳴くなる雁の行きて居む秋田の穂立繁 …
1568 番歌 雨隠り心いぶせみ出で見れば春日の山は色づ …
1569 番歌 雨晴れて清く照りたるこの月夜またさらにし …
1570 番歌 ここにありて春日やいづち雨障み出でて行か …
1571 番歌 春日野に時雨降る見ゆ明日よりは黄葉かざさ …
1572 番歌 我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫く …
1573 番歌 秋の雨に濡れつつ居ればいやしけど我妹が宿 …
1574 番歌 雲の上に鳴くなる雁の遠けども君に逢はむと …
1575 番歌 雲の上に鳴きつる雁の寒きなへ萩の下葉はも …
1576 番歌 この岡に小鹿踏み起しうかねらひかもかもす …
1577 番歌 秋の野の尾花が末を押しなべて来しくもしる …
1578 番歌 今朝鳴きて行きし雁が音寒みかもこの野の浅 …
1579 番歌 朝戸開けて物思ふ時に白露の置ける秋萩見え …
1580 番歌 さを鹿の来立ち鳴く野の秋萩は露霜負ひて散 …
1581 番歌 手折らずて散りなば惜しと我が思ひし秋の黄 …
1582 番歌 めづらしき人に見せむと黄葉を手折りぞ我が …
1583 番歌 黄葉を散らす時雨に濡れて来て君が黄葉をか …
1584 番歌 めづらしと我が思ふ君は秋山の初黄葉に似て …
1585 番歌 奈良山の嶺の黄葉取れば散る時雨の雨し間な …
1586 番歌 黄葉を散らまく惜しみ手折り来て今夜かざし …
1587 番歌 あしひきの山の黄葉今夜もか浮かび行くらむ …
1588 番歌 奈良山をにほはす黄葉手折り来て今夜かざし …
1589 番歌 露霜にあへる黄葉を手折り来て妹とかざしつ …
1590 番歌 十月時雨にあへる黄葉の吹かば散りなむ風の …
1591 番歌 黄葉の過ぎまく惜しみ思ふどち遊ぶ今夜は明 …
1592 番歌 しかとあらぬ五百代小田を刈り乱り田廬に居 …
1593 番歌 隠口の泊瀬の山は色づきぬ時雨の雨は降りに …
1594 番歌 時雨の雨間なくな降りそ紅ににほへる山の散 …
1595 番歌 秋萩の枝もとををに置く露の消なば消ぬとも …
1596 番歌 妹が家の門田を見むとうち出で来し心もしる …
1597 番歌 秋の野に咲ける秋萩秋風に靡ける上に秋の露 …
1598 番歌 さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置 …
1599 番歌 さを鹿の胸別けにかも秋萩の散り過ぎにける …
1600 番歌 妻恋ひに鹿鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過 …
1601 番歌 めづらしき君が家なる花すすき穂に出づる秋 …
1602 番歌 山彦の相響むまで妻恋ひに鹿鳴く山辺に独り …
1603 番歌 このころの朝明に聞けばあしひきの山呼び響 …
1604 番歌 秋されば春日の山の黄葉見る奈良の都の荒る …
1605 番歌 高円の野辺の秋萩このころの暁露に咲きにけ …

冬 19 首

歌番号本歌
1636 番歌 大口の真神の原に降る雪はいたくな降りそ家 …
1637 番歌 はだすすき尾花逆葺き黒木もち造れる室は万 …
1638 番歌 あをによし奈良の山なる黒木もち造れる室は …
1639 番歌 沫雪のほどろほどろに降りしけば奈良の都し …
1640 番歌 我が岡に盛りに咲ける梅の花残れる雪をまが …
1641 番歌 淡雪に降らえて咲ける梅の花君がり遣らばよ …
1642 番歌 たな霧らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬが代に …
1643 番歌 天霧らし雪も降らぬかいちしろくこのいつ柴 …
1644 番歌 引き攀ぢて折らば散るべみ梅の花袖に扱入れ …
1645 番歌 我が宿の冬木の上に降る雪を梅の花かとうち …
1646 番歌 ぬばたまの今夜の雪にいざ濡れな明けむ朝に …
1647 番歌 梅の花枝にか散ると見るまでに風に乱れて雪 …
1648 番歌 十二月には淡雪降ると知らねかも梅の花咲く …
1649 番歌 今日降りし雪に競ひて我が宿の冬木の梅は花 …
1650 番歌 池の辺の松の末葉に降る雪は五百重降りしけ …
1651 番歌 淡雪のこのころ継ぎてかく降らば梅の初花散 …
1652 番歌 梅の花折りも折らずも見つれども今夜の花に …
1653 番歌 今のごと心を常に思へらばまづ咲く花の地に …
1654 番歌 松蔭の浅茅の上の白雪を消たずて置かむこと …

第9巻 102 首

歌番号本歌
1664 番歌 夕されば小倉の山に伏す鹿の今夜は鳴かず寐 …
1665 番歌 妹がため我れ玉拾ふ沖辺なる玉寄せ持ち来沖 …
1666 番歌 朝霧に濡れにし衣干さずしてひとりか君が山 …
1667 番歌 妹がため我れ玉求む沖辺なる白玉寄せ来沖つ …
1668 番歌 白崎は幸くあり待て大船に真梶しじ貫きまた …
1669 番歌 南部の浦潮な満ちそね鹿島なる釣りする海人 …
1670 番歌 朝開き漕ぎ出て我れは由良の崎釣りする海人 …
1671 番歌 由良の崎潮干にけらし白神の礒の浦廻をあへ …
1672 番歌 黒牛潟潮干の浦を紅の玉裳裾引き行くは誰が …
1673 番歌 風莫の浜の白波いたづらにここに寄せ来る見 …
1674 番歌 我が背子が使来むかと出立のこの松原を今日 …
1675 番歌 藤白の御坂を越ゆと白栲の我が衣手は濡れに …
1676 番歌 背の山に黄葉常敷く神岳の山の黄葉は今日か …
1677 番歌 大和には聞こえも行くか大我野の竹葉刈り敷 …
1678 番歌 紀の国の昔弓雄の鳴り矢もち鹿取り靡けし坂 …
1679 番歌 紀の国にやまず通はむ妻の杜妻寄しこせに妻 …
1680 番歌 あさもよし紀へ行く君が真土山越ゆらむ今日 …
1681 番歌 後れ居て我が恋ひ居れば白雲のたなびく山を …
1682 番歌 とこしへに夏冬行けや裘扇放たぬ山に住む人 …
1683 番歌 妹が手を取りて引き攀ぢふさ手折り我がかざ …
1684 番歌 春山は散り過ぎぬとも三輪山はいまだふふめ …
1685 番歌 川の瀬のたぎつを見れば玉藻かも散り乱れた …
1686 番歌 彦星のかざしの玉は妻恋ひに乱れにけらしこ …
1687 番歌 白鳥の鷺坂山の松蔭に宿りて行かな夜も更け …
1688 番歌 あぶり干す人もあれやも濡れ衣を家には遣ら …
1689 番歌 あり衣辺につきて漕がさね杏人の浜を過ぐれ …
1690 番歌 高島の阿渡川波は騒けども我れは家思ふ宿り …
1691 番歌 旅なれば夜中をさして照る月の高島山に隠ら …
1692 番歌 我が恋ふる妹は逢はさず玉の浦に衣片敷き独 …
1693 番歌 玉櫛笥明けまく惜しきあたら夜を衣手離れて …
1694 番歌 栲領巾の鷺坂山の白つつじ我れににほはに妹 …
1695 番歌 妹が門入り泉川の常滑にみ雪残れりいまだ冬 …
1696 番歌 衣手の名木の川辺を春雨に我れ立ち濡ると家 …
1697 番歌 家人の使ひにあらし春雨の避くれど我れを濡 …
1698 番歌 あぶり干す人もあれやも家人の春雨すらを真 …
1699 番歌 巨椋の入江響むなり射目人の伏見が田居に雁 …
1700 番歌 秋風に山吹の瀬の鳴るなへに天雲翔る雁に逢 …
1701 番歌 さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の聞こゆる空 …
1702 番歌 妹があたり繁き雁が音夕霧に来鳴きて過ぎぬ …
1703 番歌 雲隠り雁鳴く時は秋山の黄葉片待つ時は過ぐ …
1704 番歌 ふさ手折り多武の山霧繁みかも細川の瀬に波 …
1705 番歌 冬こもり春へを恋ひて植ゑし木の実になる時 …
1706 番歌 ぬばたまの夜霧は立ちぬ衣手を高屋の上にた …
1707 番歌 山背の久世の鷺坂神代より春は張りつつ秋は …
1708 番歌 春草を馬咋山ゆ越え来なる雁の使は宿り過ぐ …
1709 番歌 御食向ふ南淵山の巌には降りしはだれか消え …
1710 番歌 我妹子が赤裳ひづちて植ゑし田を刈りて収め …
1711 番歌 百伝ふ八十の島廻を漕ぎ来れど粟の小島は見 …
1712 番歌 天の原雲なき宵にぬばたまの夜渡る月の入ら …
1713 番歌 滝の上の三船の山ゆ秋津辺に来鳴き渡るは誰 …
1714 番歌 落ちたぎち流るる水の岩に触れ淀める淀に月 …
1715 番歌 楽浪の比良山風の海吹けば釣りする海人の袖 …
1716 番歌 白波の浜松の木の手向けくさ幾代までにか年 …
1717 番歌 三川の淵瀬もおちず小網さすに衣手濡れぬ干 …
1718 番歌 率ひて漕ぎ去にし舟は高島の安曇の港に泊て …
1719 番歌 照る月を雲な隠しそ島蔭に我が舟泊てむ泊り …
1720 番歌 馬並めてうち群れ越え来今日見つる吉野の川 …
1721 番歌 苦しくも暮れゆく日かも吉野川清き川原を見 …
1722 番歌 吉野川川波高み滝の浦を見ずかなりなむ恋し …
1723 番歌 かわづ鳴く六田の川の川柳のねもころ見れど …
1724 番歌 見まく欲り来しくもしるく吉野川音のさやけ …
1725 番歌 いにしへの賢しき人の遊びけむ吉野の川原見 …
1726 番歌 難波潟潮干に出でて玉藻刈る海人娘子ども汝 …
1727 番歌 あさりする人とを見ませ草枕旅行く人に我が …
1728 番歌 慰めて今夜は寝なむ明日よりは恋ひかも行か …
1729 番歌 暁の夢に見えつつ梶島の礒越す波のしきてし …
1730 番歌 山科の石田の小野のははそ原見つつか君が山 …
1731 番歌 山科の石田の杜に幣置かばけだし我妹に直に …
1732 番歌 大葉山霞たなびきさ夜更けて我が舟泊てむ泊 …
1733 番歌 思ひつつ来れど来かねて三尾の崎真長の浦を …
1734 番歌 高島の安曇の港を漕ぎ過ぎて塩津菅浦今か漕 …
1735 番歌 我が畳三重の川原の礒の裏にかくしもがもと …
1736 番歌 山高み白木綿花に落ちたぎつ夏身の川門見れ …
1737 番歌 大滝を過ぎて夏身に近づきて清き川瀬を見る …
1738 番歌 しなが鳥 安房に継ぎたる 梓弓 周淮の珠 …
1739 番歌 金門にし人の来立てば夜中にも身はたな知ら …
1740 番歌 春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居 …
1741 番歌 常世辺に住むべきものを剣大刀汝が心からお …
1742 番歌 しな照る 片足羽川の さ丹塗りの 大橋の …
1743 番歌 大橋の頭に家あらばま悲しく独り行く子に宿 …
1744 番歌 埼玉の小埼の沼に鴨ぞ羽霧るおのが尾に降り …
1745 番歌 三栗の那賀に向へる曝井の絶えず通はむそこ …
1746 番歌 遠妻し多賀にありせば知らずとも手綱の浜の …
1747 番歌 白雲の 龍田の山の 瀧の上の 小椋の嶺に …
1748 番歌 我が行きは七日は過ぎじ龍田彦ゆめこの花を …
1749 番歌 白雲の 龍田の山を 夕暮れに うち越え行 …
1750 番歌 暇あらばなづさひ渡り向つ峰の桜の花も折ら …
1751 番歌 島山を い行き廻れる 川沿ひの 岡辺の道 …
1752 番歌 い行き逢ひの坂のふもとに咲きををる桜の花 …
1753 番歌 衣手 常陸の国の 二並ぶ 筑波の山を 見 …
1754 番歌 今日の日にいかにかしかむ筑波嶺に昔の人の …
1755 番歌 鴬の 卵の中に 霍公鳥 独り生れて 己が …
1756 番歌 かき霧らし雨の降る夜を霍公鳥鳴きて行くな …
1757 番歌 草枕 旅の憂へを 慰もる こともありやと …
1758 番歌 筑波嶺の裾廻の田居に秋田刈る妹がり遣らむ …
1759 番歌 鷲の住む 筑波の山の 裳羽服津の その津 …
1760 番歌 男神に雲立ち上りしぐれ降り濡れ通るとも我 …
1761 番歌 三諸の 神奈備山に たち向ふ 御垣の山に …
1762 番歌 明日の宵逢はざらめやもあしひきの山彦響め …
1763 番歌 倉橋の山を高みか夜隠りに出で来る月の片待 …
1764 番歌 久方の 天の川原に 上つ瀬に 玉橋渡し …
1765 番歌 天の川霧立ちわたる今日今日と我が待つ君し …

第10巻 384 首

第10巻は春夏秋冬で区分けしています。

春 78 首

歌番号本歌
1812 番歌 ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立 …
1813 番歌 巻向の桧原に立てる春霞おほにし思はばなづ …
1814 番歌 いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に霞たなびく …
1815 番歌 子らが手を巻向山に春されば木の葉しのぎて …
1816 番歌 玉かぎる夕さり来ればさつ人の弓月が岳に霞 …
1817 番歌 今朝行きて明日には来なむと云子鹿丹朝妻山 …
1818 番歌 子らが名に懸けのよろしき朝妻の片山崖に霞 …
1819 番歌 うち靡く春立ちぬらし我が門の柳の末に鴬鳴 …
1820 番歌 梅の花咲ける岡辺に家居れば乏しくもあらず …
1821 番歌 春霞流るるなへに青柳の枝くひ持ちて鴬鳴く …
1822 番歌 我が背子を莫越の山の呼子鳥君呼び返せ夜の …
1823 番歌 朝ゐでに来鳴く貌鳥汝れだにも君に恋ふれや …
1824 番歌 冬こもり春さり来ればあしひきの山にも野に …
1825 番歌 紫草の根延ふ横野の春野には君を懸けつつ鴬 …
1826 番歌 春されば妻を求むと鴬の木末を伝ひ鳴きつつ …
1827 番歌 春日なる羽がひの山ゆ佐保の内へ鳴き行くな …
1828 番歌 答へぬにな呼び響めそ呼子鳥佐保の山辺を上 …
1829 番歌 梓弓春山近く家居れば継ぎて聞くらむ鴬の声 …
1830 番歌 うち靡く春さり来れば小竹の末に尾羽打ち触 …
1831 番歌 朝霧にしののに濡れて呼子鳥三船の山ゆ鳴き …
1832 番歌 うち靡く春さり来ればしかすがに天雲霧らひ …
1833 番歌 梅の花降り覆ふ雪を包み持ち君に見せむと取 …
1834 番歌 梅の花咲き散り過ぎぬしかすがに白雪庭に降 …
1835 番歌 今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へ …
1836 番歌 風交り雪は降りつつしかすがに霞たなびき春 …
1837 番歌 山の際に鴬鳴きてうち靡く春と思へど雪降り …
1838 番歌 峰の上に降り置ける雪し風の共ここに散るら …
1839 番歌 君がため山田の沢にゑぐ摘むと雪消の水に裳 …
1840 番歌 梅が枝に鳴きて移ろふ鴬の羽白妙に沫雪ぞ降 …
1841 番歌 山高み降り来る雪を梅の花散りかも来ると思 …
1842 番歌 雪をおきて梅をな恋ひそあしひきの山片付き …
1843 番歌 昨日こそ年は果てしか春霞春日の山に早立ち …
1844 番歌 冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞た …
1845 番歌 鴬の春になるらし春日山霞たなびく夜目に見 …
1846 番歌 霜枯れの冬の柳は見る人のかづらにすべく萌 …
1847 番歌 浅緑染め懸けたりと見るまでに春の柳は萌え …
1848 番歌 山の際に雪は降りつつしかすがにこの川楊は …
1849 番歌 山の際の雪は消ずあるをみなぎらふ川の沿ひ …
1850 番歌 朝な朝な我が見る柳鴬の来居て鳴くべく森に …
1851 番歌 青柳の糸のくはしさ春風に乱れぬい間に見せ …
1852 番歌 ももしきの大宮人のかづらけるしだり柳は見 …
1853 番歌 梅の花取り持ち見れば我が宿の柳の眉し思ほ …
1854 番歌 鴬の木伝ふ梅のうつろへば桜の花の時かたま …
1855 番歌 桜花時は過ぎねど見る人の恋ふる盛りと今し …
1856 番歌 我がかざす柳の糸を吹き乱る風にか妹が梅の …
1857 番歌 年のはに梅は咲けどもうつせみの世の人我れ …
1858 番歌 うつたへに鳥は食まねど縄延へて守らまく欲 …
1859 番歌 馬並めて多賀の山辺を白栲ににほはしたるは …
1860 番歌 花咲きて実はならねども長き日に思ほゆるか …
1861 番歌 能登川の水底さへに照るまでに御笠の山は咲 …
1862 番歌 雪見ればいまだ冬なりしかすがに春霞立ち梅 …
1863 番歌 去年咲きし久木今咲くいたづらに地にか落ち …
1864 番歌 あしひきの山の際照らす桜花この春雨に散り …
1865 番歌 うち靡く春さり来らし山の際の遠き木末の咲 …
1866 番歌 雉鳴く高円の辺に桜花散りて流らふ見む人も …
1867 番歌 阿保山の桜の花は今日もかも散り乱ふらむ見 …
1868 番歌 かはづ鳴く吉野の川の滝の上の馬酔木の花ぞ …
1869 番歌 春雨に争ひかねて我が宿の桜の花は咲きそめ …
1870 番歌 春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散 …
1871 番歌 春されば散らまく惜しき梅の花しましは咲か …
1872 番歌 見わたせば春日の野辺に霞立ち咲きにほへる …
1873 番歌 いつしかもこの夜の明けむ鴬の木伝ひ散らす …
1874 番歌 春霞たなびく今日の夕月夜清く照るらむ高松 …
1875 番歌 春されば木の暗多み夕月夜おほつかなしも山 …
1876 番歌 朝霞春日の暮は木の間より移ろふ月をいつと …
1877 番歌 春の雨にありけるものを立ち隠り妹が家道に …
1878 番歌 今行きて聞くものにもが明日香川春雨降りて …
1879 番歌 春日野に煙立つ見ゆ娘子らし春野のうはぎ摘 …
1880 番歌 春日野の浅茅が上に思ふどち遊ぶ今日の日忘 …
1881 番歌 春霞立つ春日野を行き返り我れは相見むいや …
1882 番歌 春の野に心延べむと思ふどち来し今日の日は …
1883 番歌 ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてこ …
1884 番歌 冬過ぎて春し来れば年月は新たなれども人は …
1885 番歌 物皆は新たしきよしただしくも人は古りにし …
1886 番歌 住吉の里行きしかば春花のいやめづらしき君 …
1887 番歌 春日なる御笠の山に月も出でぬかも佐紀山に …
1888 番歌 白雪の常敷く冬は過ぎにけらしも春霞たなび …
1889 番歌 我が宿の毛桃の下に月夜さし下心よしうたて …

夏 42 首

歌番号本歌
1937 番歌 大夫の 出で立ち向ふ 故郷の 神なび山に …
1938 番歌 旅にして妻恋すらし霍公鳥神なび山にさ夜更 …
1939 番歌 霍公鳥汝が初声は我れにもが五月の玉に交へ …
1940 番歌 朝霞たなびく野辺にあしひきの山霍公鳥いつ …
1941 番歌 朝霧の八重山越えて呼子鳥鳴きや汝が来る宿 …
1942 番歌 霍公鳥鳴く声聞くや卯の花の咲き散る岡に葛 …
1943 番歌 月夜よみ鳴く霍公鳥見まく欲り我れ草取れり …
1944 番歌 藤波の散らまく惜しみ霍公鳥今城の岡を鳴き …
1945 番歌 朝霧の八重山越えて霍公鳥卯の花辺から鳴き …
1946 番歌 木高くはかつて木植ゑじ霍公鳥来鳴き響めて …
1947 番歌 逢ひかたき君に逢へる夜霍公鳥他時よりは今 …
1948 番歌 木の暗の夕闇なるに [一云 なれば] 霍 …
1949 番歌 霍公鳥今朝の朝明に鳴きつるは君聞きけむか …
1950 番歌 霍公鳥花橘の枝に居て鳴き響もせば花は散り …
1951 番歌 うれたきや醜霍公鳥今こそば声の嗄るがに来 …
1952 番歌 今夜のおほつかなきに霍公鳥鳴くなる声の音 …
1953 番歌 五月山卯の花月夜霍公鳥聞けども飽かずまた …
1954 番歌 霍公鳥来居も鳴かぬか我がやどの花橘の地に …
1955 番歌 霍公鳥いとふ時なしあやめぐさかづらにせむ …
1956 番歌 大和には鳴きてか来らむ霍公鳥汝が鳴くごと …
1957 番歌 卯の花の散らまく惜しみ霍公鳥野に出で山に …
1958 番歌 橘の林を植ゑむ霍公鳥常に冬まで棲みわたる …
1959 番歌 雨晴れの雲にたぐひて霍公鳥春日をさしてこ …
1960 番歌 物思ふと寐ねぬ朝明に霍公鳥鳴きてさ渡るす …
1961 番歌 我が衣を君に着せよと霍公鳥我れをうながす …
1962 番歌 本つ人霍公鳥をやめづらしく今か汝が来る恋 …
1963 番歌 かくばかり雨の降らくに霍公鳥卯の花山にな …
1964 番歌 黙もあらむ時も鳴かなむひぐらしの物思ふ時 …
1965 番歌 思ふ子が衣摺らむににほひこそ島の榛原秋立 …
1966 番歌 風に散る花橘を袖に受けて君がみ跡と偲ひつ …
1967 番歌 かぐはしき花橘を玉に貫き贈らむ妹はみつれ …
1968 番歌 霍公鳥来鳴き響もす橘の花散る庭を見む人や …
1969 番歌 我が宿の花橘は散りにけり悔しき時に逢へる …
1970 番歌 見わたせば向ひの野辺のなでしこの散らまく …
1971 番歌 雨間明けて国見もせむを故郷の花橘は散りに …
1972 番歌 野辺見ればなでしこの花咲きにけり我が待つ …
1973 番歌 我妹子に楝の花は散り過ぎず今咲けるごとあ …
1974 番歌 春日野の藤は散りにて何をかもみ狩の人の折 …
1975 番歌 時ならず玉をぞ貫ける卯の花の五月を待たば …
1976 番歌 卯の花の咲き散る岡ゆ霍公鳥鳴きてさ渡る君 …
1977 番歌 聞きつやと君が問はせる霍公鳥しののに濡れ …
1978 番歌 橘の花散る里に通ひなば山霍公鳥響もさむか …

秋 243 首

歌番号本歌
1996 番歌 天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と …
1997 番歌 久方の天の川原にぬえ鳥のうら歎げましつす …
1998 番歌 我が恋を嬬は知れるを行く舟の過ぎて来べし …
1999 番歌 赤らひく色ぐはし子をしば見れば人妻ゆゑに …
2000 番歌 天の川安の渡りに舟浮けて秋立つ待つと妹に …
2001 番歌 大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をな …
2002 番歌 八千桙の神の御代よりともし妻人知りにけり …
2003 番歌 我が恋ふる丹のほの面わこよひもか天の川原 …
2004 番歌 己夫にともしき子らは泊てむ津の荒礒巻きて …
2005 番歌 天地と別れし時ゆ己が妻しかぞ年にある秋待 …
2006 番歌 彦星は嘆かす妻に言だにも告げにぞ来つる見 …
2007 番歌 ひさかたの天つしるしと水無し川隔てて置き …
2008 番歌 ぬばたまの夜霧に隠り遠くとも妹が伝へは早 …
2009 番歌 汝が恋ふる妹の命は飽き足らに袖振る見えつ …
2010 番歌 夕星も通ふ天道をいつまでか仰ぎて待たむ月 …
2011 番歌 天の川い向ひ立ちて恋しらに言だに告げむ妻 …
2012 番歌 白玉の五百つ集ひを解きもみず我は干しかて …
2013 番歌 天の川水蔭草の秋風に靡かふ見れば時は来に …
2014 番歌 我が待ちし秋萩咲きぬ今だにもにほひに行か …
2015 番歌 我が背子にうら恋ひ居れば天の川夜舟漕ぐな …
2016 番歌 ま日長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音聞こゆ紐解 …
2017 番歌 恋ひしくは日長きものを今だにもともしむべ …
2018 番歌 天の川去年の渡りで移ろへば川瀬を踏むに夜 …
2019 番歌 いにしへゆあげてし服も顧みず天の川津に年 …
2020 番歌 天の川夜船を漕ぎて明けぬとも逢はむと思ふ …
2021 番歌 遠妻と手枕交へて寝たる夜は鶏がねな鳴き明 …
2022 番歌 相見らく飽き足らねどもいなのめの明けさり …
2023 番歌 さ寝そめていくだもあらねば白栲の帯乞ふべ …
2024 番歌 万代にたづさはり居て相見とも思ひ過ぐべき …
2025 番歌 万代に照るべき月も雲隠り苦しきものぞ逢は …
2026 番歌 白雲の五百重に隠り遠くとも宵さらず見む妹 …
2027 番歌 我がためと織女のそのやどに織る白栲は織り …
2028 番歌 君に逢はず久しき時ゆ織る服の白栲衣垢付く …
2029 番歌 天の川楫の音聞こゆ彦星と織女と今夜逢ふら …
2030 番歌 秋されば川霧立てる天の川川に向き居て恋ふ …
2031 番歌 よしゑやし直ならずともぬえ鳥のうら嘆げ居 …
2032 番歌 一年に七日の夜のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜 …
2033 番歌 天の川安の川原定而神競者磨待無 …
2034 番歌 織女の五百機立てて織る布の秋さり衣誰れか …
2035 番歌 年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠れ …
2036 番歌 我が待ちし秋は来りぬ妹と我れと何事あれぞ …
2037 番歌 年の恋今夜尽して明日よりは常のごとくや我 …
2038 番歌 逢はなくは日長きものを天の川隔ててまたや …
2039 番歌 恋しけく日長きものを逢ふべくある宵だに君 …
2040 番歌 彦星と織女と今夜逢ふ天の川門に波立つなゆ …
2041 番歌 秋風の吹きただよはす白雲は織女の天つ領巾 …
2042 番歌 しばしばも相見ぬ君を天の川舟出早せよ夜の …
2043 番歌 秋風の清き夕に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士 …
2044 番歌 天の川霧立ちわたり彦星の楫の音聞こゆ夜の …
2045 番歌 君が舟今漕ぎ来らし天の川霧立ちわたるこの …
2046 番歌 秋風に川波立ちぬしましくは八十の舟津にみ …
2047 番歌 天の川川の音清し彦星の秋漕ぐ舟の波のさわ …
2048 番歌 天の川川門に立ちて我が恋ひし君来ますなり …
2049 番歌 天の川川門に居りて年月を恋ひ来し君に今夜 …
2050 番歌 明日よりは我が玉床をうち掃ひ君と寐ねずて …
2051 番歌 天の原行きて射てむと白真弓引きて隠れる月 …
2052 番歌 この夕降りくる雨は彦星の早漕ぐ舟の櫂の散 …
2053 番歌 天の川八十瀬霧らへり彦星の時待つ舟は今し …
2054 番歌 風吹きて川波立ちぬ引き船に渡りも来ませ夜 …
2055 番歌 天の川遠き渡りはなけれども君が舟出は年に …
2056 番歌 天の川打橋渡せ妹が家道やまず通はむ時待た …
2057 番歌 月重ね我が思ふ妹に逢へる夜は今し七夜を継 …
2058 番歌 年に装る我が舟漕がむ天の川風は吹くとも波 …
2059 番歌 天の川波は立つとも我が舟はいざ漕ぎ出でむ …
2060 番歌 ただ今夜逢ひたる子らに言どひもいまだせず …
2061 番歌 天の川白波高し我が恋ふる君が舟出は今しす …
2062 番歌 機物のまね木持ち行きて天の川打橋渡す君が …
2063 番歌 天の川霧立ち上る織女の雲の衣のかへる袖か …
2064 番歌 いにしへゆ織りてし服をこの夕衣に縫ひて君 …
2065 番歌 足玉も手玉もゆらに織る服を君が御衣に縫ひ …
2066 番歌 月日おき逢ひてしあれば別れまく惜しくある …
2067 番歌 天の川渡り瀬深み舟浮けて漕ぎ来る君が楫の …
2068 番歌 天の原降り放け見れば天の川霧立ちわたる君 …
2069 番歌 天の川瀬ごとに幣をたてまつる心は君を幸く …
2070 番歌 久方の天の川津に舟浮けて君待つ夜らは明け …
2071 番歌 天の川なづさひ渡る君が手もいまだまかねば …
2072 番歌 渡り守舟渡せをと呼ぶ声の至らねばかも楫の …
2073 番歌 ま日長く川に向き立ちありし袖今夜巻かむと …
2074 番歌 天の川渡り瀬ごとに思ひつつ来しくもしるし …
2075 番歌 人さへや見継がずあらむ彦星の妻呼ぶ舟の近 …
2076 番歌 天の川瀬を早みかもぬばたまの夜は更けにつ …
2077 番歌 渡り守舟早渡せ一年にふたたび通ふ君にあら …
2078 番歌 玉葛絶えぬものからさ寝らくは年の渡りにた …
2079 番歌 恋ふる日は日長きものを今夜だにともしむべ …
2080 番歌 織女の今夜逢ひなば常のごと明日を隔てて年 …
2081 番歌 天の川棚橋渡せ織女のい渡らさむに棚橋渡せ …
2082 番歌 天の川川門八十ありいづくにか君がみ舟を我 …
2083 番歌 秋風の吹きにし日より天の川瀬に出で立ちて …
2084 番歌 天の川去年の渡り瀬荒れにけり君が来まさむ …
2085 番歌 天の川瀬々に白波高けども直渡り来ぬ待たば …
2086 番歌 彦星の妻呼ぶ舟の引き綱の絶えむと君を我が …
2087 番歌 渡り守舟出し出でむ今夜のみ相見て後は逢は …
2088 番歌 我が隠せる楫棹なくて渡り守舟貸さめやもし …
2089 番歌 天地の 初めの時ゆ 天の川 い向ひ居りて …
2090 番歌 高麗錦紐解きかはし天人の妻問ふ宵ぞ我れも …
2091 番歌 彦星の川瀬を渡るさ小舟のい行きて泊てむ川 …
2092 番歌 天地と 別れし時ゆ 久方の 天つしるしと …
2093 番歌 妹に逢ふ時片待つとひさかたの天の川原に月 …
2094 番歌 さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散ら …
2095 番歌 夕されば野辺の秋萩うら若み露にぞ枯るる秋 …
2096 番歌 真葛原靡く秋風吹くごとに阿太の大野の萩の …
2097 番歌 雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむこの萩 …
2098 番歌 奥山に棲むといふ鹿の夕さらず妻どふ萩の散 …
2099 番歌 白露の置かまく惜しみ秋萩を折りのみ折りて …
2100 番歌 秋田刈る刈廬の宿りにほふまで咲ける秋萩見 …
2101 番歌 我が衣摺れるにはあらず高松の野辺行きしか …
2102 番歌 この夕秋風吹きぬ白露に争ふ萩の明日咲かむ …
2103 番歌 秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな …
2104 番歌 朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲 …
2105 番歌 春されば霞隠りて見えずありし秋萩咲きぬ折 …
2106 番歌 沙額田の野辺の秋萩時なれば今盛りなり折り …
2107 番歌 ことさらに衣は摺らじをみなへし佐紀野の萩 …
2108 番歌 秋風は疾く疾く吹き来萩の花散らまく惜しみ …
2109 番歌 我が宿の萩の末長し秋風の吹きなむ時に咲か …
2110 番歌 人皆は萩を秋と言ふよし我れは尾花が末を秋 …
2111 番歌 玉梓の君が使の手折り来るこの秋萩は見れど …
2112 番歌 我がやどに咲ける秋萩常ならば我が待つ人に …
2113 番歌 手寸十名相植ゑしなしるく出で見れば宿の初 …
2114 番歌 我が宿に植ゑ生ほしたる秋萩を誰れか標刺す …
2115 番歌 手に取れば袖さへにほふをみなへしこの白露 …
2116 番歌 白露に争ひかねて咲ける萩散らば惜しけむ雨 …
2117 番歌 娘女らに行相の早稲を刈る時になりにけらし …
2118 番歌 朝霧のたなびく小野の萩の花今か散るらむい …
2119 番歌 恋しくは形見にせよと我が背子が植ゑし秋萩 …
2120 番歌 秋萩に恋尽さじと思へどもしゑやあたらしま …
2121 番歌 秋風は日に異に吹きぬ高円の野辺の秋萩散ら …
2122 番歌 大夫の心はなしに秋萩の恋のみにやもなづみ …
2123 番歌 我が待ちし秋は来たりぬしかれども萩の花ぞ …
2124 番歌 見まく欲り我が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみ …
2125 番歌 春日野の萩し散りなば朝東風の風にたぐひて …
2126 番歌 秋萩は雁に逢はじと言へればか [一云 言 …
2127 番歌 秋さらば妹に見せむと植ゑし萩露霜負ひて散 …
2128 番歌 秋風に大和へ越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲 …
2129 番歌 明け暮れの朝霧隠り鳴きて行く雁は我が恋妹 …
2130 番歌 我が宿に鳴きし雁がね雲の上に今夜鳴くなり …
2131 番歌 さを鹿の妻どふ時に月をよみ雁が音聞こゆ今 …
2132 番歌 天雲の外に雁が音聞きしよりはだれ霜降り寒 …
2133 番歌 秋の田の我が刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞 …
2134 番歌 葦辺なる荻の葉さやぎ秋風の吹き来るなへに …
2135 番歌 おしてる難波堀江の葦辺には雁寝たるかも霜 …
2136 番歌 秋風に山飛び越ゆる雁がねの声遠ざかる雲隠 …
2137 番歌 朝に行く雁の鳴く音は我がごとく物思へれか …
2138 番歌 鶴がねの今朝鳴くなへに雁がねはいづくさし …
2139 番歌 ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく幾夜を経て …
2140 番歌 あらたまの年の経ゆけばあどもふと夜渡る我 …
2141 番歌 このころの秋の朝明に霧隠り妻呼ぶ鹿の声の …
2142 番歌 さを鹿の妻ととのふと鳴く声の至らむ極み靡 …
2143 番歌 君に恋ひうらぶれ居れば敷の野の秋萩しのぎ …
2144 番歌 雁は来ぬ萩は散りぬとさを鹿の鳴くなる声も …
2145 番歌 秋萩の恋も尽きねばさを鹿の声い継ぎい継ぎ …
2146 番歌 山近く家や居るべきさを鹿の声を聞きつつ寐 …
2147 番歌 山の辺にい行くさつ男は多かれど山にも野に …
2148 番歌 あしひきの山より来せばさを鹿の妻呼ぶ声を …
2149 番歌 山辺にはさつ男のねらひ畏けどを鹿鳴くなり …
2150 番歌 秋萩の散りゆく見ればおほほしみ妻恋すらし …
2151 番歌 山遠き都にしあればさを鹿の妻呼ぶ声は乏し …
2152 番歌 秋萩の散り過ぎゆかばさを鹿はわび鳴きせむ …
2153 番歌 秋萩の咲きたる野辺はさを鹿ぞ露を別けつつ …
2154 番歌 なぞ鹿のわび鳴きすなるけだしくも秋野の萩 …
2155 番歌 秋萩の咲たる野辺にさを鹿は散らまく惜しみ …
2156 番歌 あしひきの山の常蔭に鳴く鹿の声聞かすやも …
2157 番歌 夕影に来鳴くひぐらしここだくも日ごとに聞 …
2158 番歌 秋風の寒く吹くなへ我が宿の浅茅が本にこほ …
2159 番歌 蔭草の生ひたる宿の夕影に鳴くこほろぎは聞 …
2160 番歌 庭草に村雨降りてこほろぎの鳴く声聞けば秋 …
2161 番歌 み吉野の岩もとさらず鳴くかはづうべも鳴き …
2162 番歌 神なびの山下響み行く水にかはづ鳴くなり秋 …
2163 番歌 草枕旅に物思ひ我が聞けば夕かたまけて鳴く …
2164 番歌 背を早み落ちたぎちたる白波にかはづ鳴くな …
2165 番歌 上つ瀬にかはづ妻呼ぶ夕されば衣手寒み妻ま …
2166 番歌 妹が手を取石の池の波の間ゆ鳥が音異に鳴く …
2167 番歌 秋の野の尾花が末に鳴くもずの声聞きけむか …
2168 番歌 秋萩に置ける白露朝な朝な玉としぞ見る置け …
2169 番歌 夕立ちの雨降るごとに [一云 うち降れば …
2170 番歌 秋萩の枝もとををに露霜置き寒くも時はなり …
2171 番歌 白露と秋萩とには恋ひ乱れ別くことかたき我 …
2172 番歌 我が宿の尾花押しなべ置く露に手触れ我妹子 …
2173 番歌 白露を取らば消ぬべしいざ子ども露に競ひて …
2174 番歌 秋田刈る刈廬を作り我が居れば衣手寒く露ぞ …
2175 番歌 このころの秋風寒し萩の花散らす白露置きに …
2176 番歌 秋田刈る苫手動くなり白露し置く穂田なしと …
2177 番歌 春は萌え夏は緑に紅のまだらに見ゆる秋の山 …
2178 番歌 妻ごもる矢野の神山露霜ににほひそめたり散 …
2179 番歌 朝露ににほひそめたる秋山にしぐれな降りそ …
2180 番歌 九月のしぐれの雨に濡れ通り春日の山は色づ …
2181 番歌 雁が音の寒き朝明の露ならし春日の山をもみ …
2182 番歌 このころの暁露に我がやどの萩の下葉は色づ …
2183 番歌 雁がねは今は来鳴きぬ我が待ちし黄葉早継げ …
2184 番歌 秋山をゆめ人懸くな忘れにしその黄葉の思ほ …
2185 番歌 大坂を我が越え来れば二上に黄葉流るしぐれ …
2186 番歌 秋されば置く白露に我が門の浅茅が末葉色づ …
2187 番歌 妹が袖巻来の山の朝露ににほふ黄葉の散らま …
2188 番歌 黄葉のにほひは繁ししかれども妻梨の木を手 …
2189 番歌 露霜の寒き夕の秋風にもみちにけらし妻梨の …
2190 番歌 我が門の浅茅色づく吉隠の浪柴の野の黄葉散 …
2191 番歌 雁が音を聞きつるなへに高松の野の上の草ぞ …
2192 番歌 我が背子が白栲衣行き触ればにほひぬべくも …
2193 番歌 秋風の日に異に吹けば水茎の岡の木の葉も色 …
2194 番歌 雁がねの来鳴きしなへに韓衣龍田の山はもみ …
2195 番歌 雁がねの声聞くなへに明日よりは春日の山は …
2196 番歌 しぐれの雨間なくし降れば真木の葉も争ひか …
2197 番歌 いちしろくしぐれの雨は降らなくに大城の山 …
2198 番歌 風吹けば黄葉散りつつすくなくも吾の松原清 …
2199 番歌 物思ふと隠らひ居りて今日見れば春日の山は …
2200 番歌 九月の白露負ひてあしひきの山のもみたむ見 …
2201 番歌 妹がりと馬に鞍置きて生駒山うち越え来れば …
2202 番歌 黄葉する時になるらし月人の桂の枝の色づく …
2203 番歌 里ゆ異に霜は置くらし高松の野山づかさの色 …
2204 番歌 秋風の日に異に吹けば露を重み萩の下葉は色 …
2205 番歌 秋萩の下葉もみちぬあらたまの月の経ぬれば …
2206 番歌 まそ鏡南淵山は今日もかも白露置きて黄葉散 …
2207 番歌 我がやどの浅茅色づく吉隠の夏身の上にしぐ …
2208 番歌 雁がねの寒く鳴きしゆ水茎の岡の葛葉は色づ …
2209 番歌 秋萩の下葉の黄葉花に継ぎ時過ぎゆかば後恋 …
2210 番歌 明日香川黄葉流る葛城の山の木の葉は今し散 …
2211 番歌 妹が紐解くと結びて龍田山今こそもみちそめ …
2212 番歌 雁がねの寒く鳴きしゆ春日なる御笠の山は色 …
2213 番歌 このころの暁露に我が宿の秋の萩原色づきに …
2214 番歌 夕されば雁の越え行く龍田山しぐれに競ひ色 …
2215 番歌 さ夜更けてしぐれな降りそ秋萩の本葉の黄葉 …
2216 番歌 故郷の初黄葉を手折り持ち今日ぞ我が来し見 …
2217 番歌 君が家の黄葉は早く散りにけりしぐれの雨に …
2218 番歌 一年にふたたび行かぬ秋山を心に飽かず過ぐ …
2219 番歌 あしひきの山田作る子秀でずとも縄だに延へ …
2220 番歌 さを鹿の妻呼ぶ山の岡辺なる早稲田は刈らじ …
2221 番歌 我が門に守る田を見れば佐保の内の秋萩すす …
2222 番歌 夕さらずかはづ鳴くなる三輪川の清き瀬の音 …
2223 番歌 天の海に月の舟浮け桂楫懸けて漕ぐ見ゆ月人 …
2224 番歌 この夜らはさ夜更けぬらし雁が音の聞こゆる …
2225 番歌 我が背子がかざしの萩に置く露をさやかに見 …
2226 番歌 心なき秋の月夜の物思ふと寐の寝らえぬに照 …
2227 番歌 思はぬにしぐれの雨は降りたれど天雲晴れて …
2228 番歌 萩の花咲きのををりを見よとかも月夜の清き …
2229 番歌 白露を玉になしたる九月の有明の月夜見れど …
2230 番歌 恋ひつつも稲葉かき別け家居れば乏しくもあ …
2231 番歌 萩の花咲きたる野辺にひぐらしの鳴くなるな …
2232 番歌 秋山の木の葉もいまだもみたねば今朝吹く風 …
2233 番歌 高松のこの峰も狭に笠立てて満ち盛りたる秋 …
2234 番歌 一日には千重しくしくに我が恋ふる妹があた …
2235 番歌 秋田刈る旅の廬りにしぐれ降り我が袖濡れぬ …
2236 番歌 玉たすき懸けぬ時なし我が恋はしぐれし降ら …
2237 番歌 黄葉を散らすしぐれの降るなへに夜さへぞ寒 …
2238 番歌 天飛ぶや雁の翼の覆ひ羽のいづく漏りてか霜 …

冬 21 首

歌番号本歌
2312 番歌 我が袖に霰た走る巻き隠し消たずてあらむ妹 …
2313 番歌 あしひきの山かも高き巻向の崖の小松にみ雪 …
2314 番歌 巻向の桧原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪 …
2315 番歌 あしひきの山道も知らず白橿の枝もとををに …
2316 番歌 奈良山の嶺なほ霧らふうべしこそ籬が下の雪 …
2317 番歌 こと降らば袖さへ濡れて通るべく降りなむ雪 …
2318 番歌 夜を寒み朝門を開き出で見れば庭もはだらに …
2319 番歌 夕されば衣手寒し高松の山の木ごとに雪ぞ降 …
2320 番歌 我が袖に降りつる雪も流れ行きて妹が手本に …
2321 番歌 淡雪は今日はな降りそ白栲の袖まき干さむ人 …
2322 番歌 はなはだも降らぬ雪ゆゑこちたくも天つみ空 …
2323 番歌 我が背子を今か今かと出で見れば淡雪降れり …
2324 番歌 あしひきの山に白きは我が宿に昨日の夕降り …
2325 番歌 誰が園の梅の花ぞもひさかたの清き月夜にこ …
2326 番歌 梅の花まづ咲く枝を手折りてばつとと名付け …
2327 番歌 誰が園の梅にかありけむここだくも咲きてあ …
2328 番歌 来て見べき人もあらなくに我家なる梅の初花 …
2329 番歌 雪寒み咲きには咲かぬ梅の花よしこのころは …
2330 番歌 妹がためほつ枝の梅を手折るとは下枝の露に …
2331 番歌 八田の野の浅茅色づく有乳山嶺の淡雪寒く散 …
2332 番歌 さ夜更けば出で来む月を高山の嶺の白雲隠す …

第13巻 127 首

歌番号本歌
3221 番歌 冬こもり 春さり来れば 朝には 白露置き …
3222 番歌 みもろは 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲 …
3223 番歌 かむとけの 日香空の 九月の しぐれの降 …
3224 番歌 ひとりのみ見れば恋しみ神なびの山の黄葉手 …
3225 番歌 天雲の 影さへ見ゆる こもりくの 泊瀬の …
3226 番歌 さざれ波浮きて流るる泊瀬川寄るべき礒のな …
3227 番歌 葦原の 瑞穂の国に 手向けすと 天降りま …
3228 番歌 神なびの三諸の山に斎ふ杉思ひ過ぎめや苔生 …
3229 番歌 斎串立てみわ据ゑ奉る祝部がうずの玉かげ見 …
3230 番歌 みてぐらを 奈良より出でて 水蓼 穂積に …
3231 番歌 月は日は変らひぬとも久に経る三諸の山の離 …
3232 番歌 斧取りて 丹生の桧山の 木伐り来て 筏に …
3233 番歌 み吉野の瀧もとどろに落つる白波留まりにし …
3234 番歌 やすみしし 我ご大君 高照らす 日の御子 …
3235 番歌 山辺の五十師の御井はおのづから成れる錦を …
3236 番歌 そらみつ 大和の国 あをによし 奈良山越 …
3237 番歌 あをによし 奈良山過ぎて もののふの 宇 …
3238 番歌 逢坂をうち出でて見れば近江の海白木綿花に …
3239 番歌 近江の海 泊り八十あり 八十島の 島の崎 …
3240 番歌 大君の 命畏み 見れど飽かぬ 奈良山越え …
3241 番歌 天地を嘆き祈ひ祷み幸くあらばまたかへり見 …
3242 番歌 ももきね 美濃の国の 高北の くくりの宮 …
3243 番歌 娘子らが 麻笥に垂れたる 続麻なす 長門 …
3244 番歌 阿胡の海の荒礒の上のさざれ波我が恋ふらく …
3245 番歌 天橋も 長くもがも 高山も 高くもがも …
3246 番歌 天なるや月日のごとく我が思へる君が日に異 …
3247 番歌 沼名川の 底なる玉 求めて 得し玉かも …
3248 番歌 磯城島の 大和の国に 人さはに 満ちてあ …
3249 番歌 磯城島の大和の国に人ふたりありとし思はば …
3250 番歌 蜻蛉島 大和の国は 神からと 言挙げせぬ …
3251 番歌 大船の思ひ頼める君ゆゑに尽す心は惜しけく …
3252 番歌 ひさかたの都を置きて草枕旅行く君をいつと …
3253 番歌 葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ …
3254 番歌 磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸く …
3255 番歌 古ゆ 言ひ継ぎけらく 恋すれば 苦しきも …
3256 番歌 しくしくに思はず人はあるらめどしましくも …
3257 番歌 直に来ずこゆ巨勢道から岩せ踏みなづみぞ我 …
3258 番歌 あらたまの 年は来ゆきて 玉梓の 使の来 …
3259 番歌 かくのみし相思はずあらば天雲の外にぞ君は …
3260 番歌 小治田の 年魚道の水を 間なくぞ 人は汲 …
3261 番歌 思ひ遣るすべのたづきも今はなし君に逢はず …
3262 番歌 瑞垣の久しき時ゆ恋すれば我が帯緩ふ朝宵ご …
3263 番歌 こもりくの 泊瀬の川の 上つ瀬に 斎杭を …
3264 番歌 年渡るまでにも人はありといふをいつの間に …
3265 番歌 世の中を憂しと思ひて家出せし我れや何にか …
3266 番歌 春されば 花咲ををり 秋づけば 丹のほに …
3267 番歌 明日香川瀬々の玉藻のうち靡き心は妹に寄り …
3268 番歌 みもろの 神奈備山ゆ との曇り 雨は降り …
3269 番歌 帰りにし人を思ふとぬばたまのその夜は我れ …
3270 番歌 さし焼かむ 小屋の醜屋に かき棄てむ 破 …
3271 番歌 我が心焼くも我れなりはしきやし君に恋ふる …
3272 番歌 うちはへて 思ひし小野は 遠からぬ その …
3273 番歌 二つなき恋をしすれば常の帯を三重結ぶべく …
3274 番歌 為むすべの たづきを知らに 岩が根の こ …
3275 番歌 ひとり寝る夜を数へむと思へども恋の繁きに …
3276 番歌 百足らず 山田の道を 波雲の 愛し妻と …
3277 番歌 寐も寝ずに我が思ふ君はいづくへに今夜誰れ …
3278 番歌 赤駒を 馬屋に立て 黒駒を 馬屋に立てて …
3279 番歌 葦垣の末かき分けて君越ゆと人にな告げそ事 …
3280 番歌 我が背子は 待てど来まさず 天の原 振り …
3281 番歌 我が背子は 待てど来まさず 雁が音も 響 …
3282 番歌 衣手にあらしの吹きて寒き夜を君来まさずは …
3283 番歌 今さらに恋ふとも君に逢はめやも寝る夜をお …
3284 番歌 菅の根の ねもころごろに 我が思へる 妹 …
3285 番歌 たらちねの母にも言はずつつめりし心はよし …
3286 番歌 玉たすき 懸けぬ時なく 我が思へる 君に …
3287 番歌 天地の神を祈りて我が恋ふる君いかならず逢 …
3288 番歌 大船の 思ひ頼みて さな葛 いや遠長く …
3289 番歌 み佩かしを 剣の池の 蓮葉に 溜まれる水 …
3290 番歌 いにしへの神の時より逢ひけらし今の心も常 …
3291 番歌 み吉野の 真木立つ山に 青く生ふる 山菅 …
3292 番歌 うつせみの命を長くありこそと留まれる我れ …
3293 番歌 み吉野の 御金が岳に 間なくぞ 雨は降る …
3294 番歌 み雪降る吉野の岳に居る雲の外に見し子に恋 …
3295 番歌 うちひさつ 三宅の原ゆ 直土に 足踏み貫 …
3296 番歌 父母に知らせぬ子ゆゑ三宅道の夏野の草をな …
3297 番歌 玉たすき 懸けぬ時なく 我が思ふ 妹にし …
3298 番歌 よしゑやし死なむよ我妹生けりともかくのみ …
3299 番歌 見わたしに 妹らは立たし この方に 我れ …
3300 番歌 おしてる 難波の崎に 引き泝る 赤のそほ …
3301 番歌 神風の 伊勢の海の 朝なぎに 来寄る深海 …
3302 番歌 紀の国の 牟婁の江の辺に 千年に 障るこ …
3303 番歌 里人の 我れに告ぐらく 汝が恋ふる うつ …
3304 番歌 聞かずして黙もあらましを何しかも君が直香 …
3305 番歌 物思はず 道行く行くも 青山を 振り放け …
3306 番歌 いかにして恋やむものぞ天地の神を祈れど我 …
3307 番歌 しかれこそ 年の八年を 切り髪の よち子 …
3308 番歌 天地の神をも我れは祈りてき恋といふものは …
3309 番歌 物思はず 道行く行くも 青山を 振り放け …
3310 番歌 隠口の 泊瀬の国に さよばひに 我が来れ …
3311 番歌 隠口の泊瀬小国に妻しあれば石は踏めどもな …
3312 番歌 隠口の 泊瀬小国に よばひせす 我が天皇 …
3313 番歌 川の瀬の石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は …
3314 番歌 つぎねふ 山背道を 人夫の 馬より行くに …
3315 番歌 泉川渡り瀬深み我が背子が旅行き衣ひづちな …
3316 番歌 まそ鏡持てれど我れは験なし君が徒歩よりな …
3317 番歌 馬買はば妹徒歩ならむよしゑやし石は踏むと …
3318 番歌 紀の国の 浜に寄るといふ 鰒玉 拾はむと …
3319 番歌 杖つきもつかずも我れは行かめども君が来ま …
3320 番歌 直に行かずこゆ巨勢道から石瀬踏み求めぞ我 …
3321 番歌 さ夜更けて今は明けぬと戸を開けて紀へ行く …
3322 番歌 門に居る我が背は宇智に至るともいたくし恋 …
3323 番歌 しなたつ 筑摩さのかた 息長の 越智の小 …
3324 番歌 かけまくも あやに畏し 藤原の 都しみみ …
3325 番歌 つのさはふ磐余の山に白栲にかかれる雲は大 …
3326 番歌 礒城島の 大和の国に いかさまに 思ほし …
3327 番歌 百小竹の 三野の王 西の馬屋に 立てて飼 …
3328 番歌 衣手葦毛の馬のいなく声心あれかも常ゆ異に …
3329 番歌 白雲の たなびく国の 青雲の 向伏す国の …
3330 番歌 隠口の 泊瀬の川の 上つ瀬に 鵜を八つ潜 …
3331 番歌 隠口の 泊瀬の山 青旗の 忍坂の山は 走 …
3332 番歌 高山と 海とこそば 山ながら かくもうつ …
3333 番歌 大君の 命畏み 蜻蛉島 大和を過ぎて 大 …
3334 番歌 たはことか人の言ひつる玉の緒の長くと君は …
3335 番歌 玉桙の 道行く人は あしひきの 山行き野 …
3336 番歌 鳥が音の 聞こゆる海に 高山を 隔てにな …
3337 番歌 母父も妻も子どもも高々に来むと待ちけむ人 …
3338 番歌 あしひきの山道は行かむ風吹けば波の塞ふる …
3339 番歌 玉桙の 道に出で立ち あしひきの 野行き …
3340 番歌 母父も妻も子どもも高々に来むと待つらむ人 …
3341 番歌 家人の待つらむものをつれもなき荒礒を巻き …
3342 番歌 浦ぶちにこやせる君を今日今日と来むと待つ …
3343 番歌 浦波の来寄する浜につれもなくこやせる君が …
3344 番歌 この月は 君来まさむと 大船の 思ひ頼み …
3345 番歌 葦辺行く雁の翼を見るごとに君が帯ばしし投 …
3346 番歌 見欲しきは 雲居に見ゆる うるはしき 鳥 …
3347 番歌 草枕この旅の日に妻離り家道思ふに生けるす …

第14巻 16 首

歌番号本歌
3438 番歌 都武賀野に鈴が音聞こゆ可牟思太の殿のなか …
3439 番歌 鈴が音の早馬駅家の堤井の水を給へな妹が直 …
3441 番歌 ま遠くの雲居に見ゆる妹が家にいつか至らむ …
3442 番歌 東道の手児の呼坂越えがねて山にか寝むも宿 …
3443 番歌 うらもなく我が行く道に青柳の張りて立てれ …
3444 番歌 伎波都久の岡のくくみら我れ摘めど籠にも満 …
3445 番歌 港の葦が中なる玉小菅刈り来我が背子床の隔 …
3446 番歌 妹なろが使ふ川津のささら荻葦と人言語りよ …
3447 番歌 草蔭の安努な行かむと墾りし道安努は行かず …
3448 番歌 花散らふこの向つ峰の乎那の峰のひじにつく …
3449 番歌 白栲の衣の袖を麻久良我よ海人漕ぎ来見ゆ波 …
3450 番歌 乎久佐男と乎具佐受家男と潮舟の並べて見れ …
3451 番歌 左奈都良の岡に粟蒔き愛しきが駒は食ぐとも …
3452 番歌 おもしろき野をばな焼きそ古草に新草交り生 …
3453 番歌 風の音の遠き我妹が着せし衣手本のくだりま …
3454 番歌 庭に立つ麻手小衾今夜だに夫寄しこせね麻手 …

第16巻 104 首

歌番号本歌
3786 番歌 春さらばかざしにせむと我が思ひし桜の花は …
3787 番歌 妹が名に懸けたる桜花咲かば常にや恋ひむい …
3788 番歌 耳成の池し恨めし我妹子が来つつ潜かば水は …
3789 番歌 あしひきの山縵の子今日行くと我れに告げせ …
3790 番歌 あしひきの玉縵の子今日のごといづれの隈を …
3791 番歌 みどり子の 若子髪には たらちし 母に抱 …
3792 番歌 死なばこそ相見ずあらめ生きてあらば白髪子 …
3793 番歌 白髪し子らに生ひなばかくのごと若けむ子ら …
3794 番歌 はしきやし翁の歌におほほしき九の子らや感 …
3795 番歌 恥を忍び恥を黙して事もなく物言はぬさきに …
3796 番歌 否も諾も欲しきまにまに許すべき顔見ゆるか …
3797 番歌 死にも生きも同じ心と結びてし友や違はむ我 …
3798 番歌 何すと違ひは居らむ否も諾も友のなみなみ我 …
3799 番歌 あにもあらじおのが身のから人の子の言も尽 …
3800 番歌 はだすすき穂にはな出でそ思ひたる心は知ら …
3801 番歌 住吉の岸野の榛ににほふれどにほはぬ我れや …
3802 番歌 春の野の下草靡き我れも寄りにほひ寄りなむ …
3803 番歌 隠りのみ恋ふれば苦し山の端ゆ出でくる月の …
3804 番歌 かくのみにありけるものを猪名川の沖を深め …
3805 番歌 ぬばたまの黒髪濡れて沫雪の降るにや来ます …
3806 番歌 事しあらば小泊瀬山の石城にも隠らばともに …
3807 番歌 安積山影さへ見ゆる山の井の浅き心を我が思 …
3808 番歌 住吉の小集楽に出でてうつつにもおの妻すら …
3809 番歌 商返しめすとの御法あらばこそ我が下衣返し …
3810 番歌 味飯を水に醸みなし我が待ちしかひはかつて …
3811 番歌 さ丹つらふ 君がみ言と 玉梓の 使も来ね …
3812 番歌 占部をも八十の衢も占問へど君を相見むたど …
3813 番歌 我が命は惜しくもあらずさ丹つらふ君により …
3814 番歌 白玉は緒絶えしにきと聞きしゆゑにその緒ま …
3815 番歌 白玉の緒絶えはまことしかれどもその緒また …
3816 番歌 家にありし櫃にかぎさし蔵めてし恋の奴のつ …
3817 番歌 かるうすは田ぶせの本に我が背子はにふぶに …
3818 番歌 朝霞鹿火屋が下の鳴くかはづ偲ひつつありと …
3819 番歌 夕立の雨うち降れば春日野の尾花が末の白露 …
3820 番歌 夕づく日さすや川辺に作る屋の形をよろしみ …
3821 番歌 うましものいづく飽かじをさかとらが角のふ …
3822 番歌 橘の寺の長屋に我が率寝し童女放髪は髪上げ …
3823 番歌 橘の照れる長屋に我が率ねし童女放髪に髪上 …
3824 番歌 さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の桧橋より来む …
3825 番歌 食薦敷き青菜煮て来む梁にむかばき懸けて休 …
3826 番歌 蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が家なるも …
3827 番歌 一二の目のみにはあらず五六三四さへありけ …
3828 番歌 香塗れる塔にな寄りそ川隈の屎鮒食めるいた …
3829 番歌 醤酢に蒜搗きかてて鯛願ふ我れにな見えそ水 …
3830 番歌 玉掃刈り来鎌麻呂むろの木と棗が本とかき掃 …
3831 番歌 池神の力士舞かも白鷺の桙啄ひ持ちて飛び渡 …
3832 番歌 からたちと茨刈り除け倉建てむ屎遠くまれ櫛 …
3833 番歌 虎に乗り古屋を越えて青淵に蛟龍捕り来む剣 …
3834 番歌 梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲 …
3835 番歌 勝間田の池は我れ知る蓮なししか言ふ君が鬚 …
3836 番歌 奈良山の児手柏の両面にかにもかくにも侫人 …
3837 番歌 ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の …
3838 番歌 我妹子が額に生ふる双六のこと負の牛の鞍の …
3839 番歌 我が背子が犢鼻にするつぶれ石の吉野の山に …
3840 番歌 寺々の女餓鬼申さく大神の男餓鬼賜りてその …
3841 番歌 仏造るま朱足らずは水溜まる池田の朝臣が鼻 …
3842 番歌 童ども草はな刈りそ八穂蓼を穂積の朝臣が腋 …
3843 番歌 いづくにぞま朱掘る岡薦畳平群の朝臣が鼻の …
3844 番歌 ぬばたまの斐太の大黒見るごとに巨勢の小黒 …
3845 番歌 駒造る土師の志婢麻呂白くあればうべ欲しか …
3846 番歌 法師らが鬚の剃り杭馬繋いたくな引きそ法師 …
3847 番歌 壇越やしかもな言ひそ里長が課役徴らば汝も …
3848 番歌 あらき田の鹿猪田の稲を倉に上げてあなひね …
3849 番歌 生き死にの二つの海を厭はしみ潮干の山を偲 …
3850 番歌 世間の繁き刈廬に住み住みて至らむ国のたづ …
3851 番歌 心をし無何有の郷に置きてあらば藐孤射の山 …
3852 番歌 鯨魚取り海や死にする山や死にする死ぬれこ …
3853 番歌 石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふもの …
3854 番歌 痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻を …
3855 番歌 さう莢に延ひおほとれる屎葛絶ゆることなく …
3856 番歌 波羅門の作れる小田を食む烏瞼腫れて幡桙に …
3857 番歌 飯食めど うまくもあらず 行き行けど 安 …
3858 番歌 このころの我が恋力記し集め功に申さば五位 …
3859 番歌 このころの我が恋力賜らずはみさとづかさに …
3860 番歌 大君の遣はさなくにさかしらに行きし荒雄ら …
3861 番歌 荒雄らを来むか来じかと飯盛りて門に出で立 …
3862 番歌 志賀の山いたくな伐りそ荒雄らがよすかの山 …
3863 番歌 荒雄らが行きにし日より志賀の海人の大浦田 …
3864 番歌 官こそさしても遣らめさかしらに行きし荒雄 …
3865 番歌 荒雄らは妻子の業をば思はずろ年の八年を待 …
3866 番歌 沖つ鳥鴨とふ船の帰り来ば也良の崎守早く告 …
3867 番歌 沖つ鳥鴨とふ船は也良の崎廻みて漕ぎ来と聞 …
3868 番歌 沖行くや赤ら小舟につと遣らばけだし人見て …
3869 番歌 大船に小舟引き添へ潜くとも志賀の荒雄に潜 …
3870 番歌 紫の粉潟の海に潜く鳥玉潜き出ば我が玉にせ …
3871 番歌 角島の瀬戸のわかめは人の共荒かりしかど我 …
3872 番歌 我が門の榎の実もり食む百千鳥千鳥は来れど …
3873 番歌 我が門に千鳥しば鳴く起きよ起きよ我が一夜 …
3874 番歌 射ゆ鹿を認ぐ川辺のにこ草の身の若かへにさ …
3875 番歌 琴酒を 押垂小野ゆ 出づる水 ぬるくは出 …
3876 番歌 豊国の企救の池なる菱の末を摘むとや妹がみ …
3877 番歌 紅に染めてし衣雨降りてにほひはすともうつ …
3878 番歌 はしたての 熊来のやらに 新羅斧 落し入 …
3879 番歌 はしたての 熊来酒屋に まぬらる奴 わし …
3880 番歌 鹿島嶺の 机の島の しただみを い拾ひ持 …
3881 番歌 大野道は茂道茂路茂くとも君し通はば道は広 …
3882 番歌 渋谿の二上山に鷲ぞ子産むといふ翳にも君の …
3883 番歌 弥彦おのれ神さび青雲のたなびく日すら小雨 …
3884 番歌 弥彦神の麓に今日らもか鹿の伏すらむ皮衣着 …
3885 番歌 いとこ 汝背の君 居り居りて 物にい行く …
3886 番歌 おしてるや 難波の小江に 廬作り 隠りて …
3887 番歌 天にあるやささらの小野に茅草刈り草刈りば …
3888 番歌 沖つ国うしはく君の塗り屋形丹塗りの屋形神 …
3889 番歌 人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜 …
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雑歌とは?

雑歌は相聞(恋の歌が中心)と挽歌(人の死に関する歌が中心)に分類されない歌を指す。そのため、「その他の歌」と考えた方が分かりやすいかと思われる。また宴会や宮廷行事などの歌も雑歌に含まれることから、元は雑歌から全ての歌が派生して生まれたものと考えた方が自然である。

万葉集は大きく分けて、雑歌、相聞、挽歌の三つの種類に区分けされる。有名なジャンルで「東歌」(関東と東北の京都から離れた地方で詠まれた歌)、「防人歌」(古来日本の徴兵制により、「今生の別れ」を詠んだ歌)というものがある。これらは場所や人を指す。つまり「東歌の相聞」とか「防人の雑歌」というような言い方をする。

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