万葉集 第17巻 3985番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第17巻3985番歌はこちらにまとめました。

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第17巻 3985番歌

第17巻
歌番号3985番歌
作者大伴家持
題詞二上山賦一首 [此山者有射水郡也]
原文伊美都河泊 伊由伎米具礼流 多麻久之氣 布多我美山者 波流波奈乃 佐家流左加利尓 安吉<能>葉乃 尓保敝流等伎尓 出立C 布里佐氣見礼婆 可牟加良夜 曽許婆多敷刀伎 夜麻可良夜 見我保之加良武 須賣可未能 須蘇未乃夜麻能 之夫多尓能 佐吉乃安里蘇尓 阿佐奈藝尓 餘須流之良奈美 由敷奈藝尓 美知久流之保能 伊夜麻之尓 多由流許登奈久 伊尓之敝由 伊麻乃乎都豆尓 可久之許曽 見流比登其等尓 加氣C之努波米
訓読射水川 い行き廻れる 玉櫛笥 二上山は 春花の 咲ける盛りに 秋の葉の にほへる時に 出で立ちて 振り放け見れば 神からや そこば貴き 山からや 見が欲しからむ 統め神の 裾廻の山の 渋谿の 崎の荒礒に 朝なぎに 寄する白波 夕なぎに 満ち来る潮の いや増しに 絶ゆることなく いにしへゆ 今のをつつに かくしこそ 見る人ごとに 懸けて偲はめ
かないみづがは いゆきめぐれる たまくしげ ふたがみやまは はるはなの さけるさかりに あきのはの にほへるときに いでたちて ふりさけみれば かむからや そこばたふとき やまからや みがほしからむ すめかみの すそみのやまの しぶたにの さきのありそに あさなぎに よするしらなみ ゆふなぎに みちくるしほの いやましに たゆることなく いにしへゆ いまのをつつに かくしこそ みるひとごとに かけてしのはめ
英語(ローマ字)IMIDUGAHA IYUKIMEGURERU TAMAKUSHIGE FUTAGAMIYAMAHA HARUHANANO SAKERUSAKARINI AKINOHANO NIHOHERUTOKINI IDETACHITE FURISAKEMIREBA KAMUKARAYA SOKOBATAFUTOKI YAMAKARAYA MIGAHOSHIKARAMU SUMEKAMINO SUSOMINOYAMANO SHIBUTANINO SAKINOARISONI ASANAGINI YOSURUSHIRANAMI YUFUNAGINI MICHIKURUSHIHONO IYAMASHINI TAYURUKOTONAKU INISHIHEYU IMANOWOTSUTSUNI KAKUSHIKOSO MIRUHITOGOTONI KAKETESHINOHAME
射水川(いみづかは)が流れ下る二上山。春の花の盛りに、秋の葉が紅葉に染まる頃に、家を出て山を振り返ってみると、神の風格に満ちて尊く、山の立派な風格に見入らずにいられない。神が治めていらしゃる山(二子山)の麓から突き出した渋谿の崎の荒磯に朝なぎどきに寄せる白波。夕なぎどきに満ちてくる潮がずっと絶えることがない。古来から今現在に至るまでこんな風にして見る人誰もが心に懸けてきたことだろう。
左注(右三月卅日依興作之 大伴宿祢家持)
校異泊 [元] 伯 / 乃 能 [元][類]
用語天平19年3月30日、年紀、作者:大伴家持、地名、高岡、富山、山讃美、寿歌、枕詞、依興、儀礼歌、土地讃美
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解説

題詞は「二上山賦一首。此山は射水郡にある」とある。二上山は富山県高岡市に現存。賦は長歌のこと。

射水川は、富山県高岡市と射水市の間を流れる小矢部川のこと。「玉櫛笥」は枕詞。意味は化粧道具を入れる美しい箱のこと。箱に蓋(フタ)があるので二上山に掛かるという。「神からや」と「山からや」は「~の風格」。「渋谿の崎」は「二上山」の麓から東北の富山湾に突き出した所。「今のをつつに」は「今現在まで」という意味。

左注は3987番歌で終わり。