万葉集 第13巻 3302番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第13巻3302番歌はこちらにまとめました。

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第13巻 3302番歌

第13巻
歌番号3302番歌
作者作者不詳
題詞
原文紀伊國之 室之江邊尓 千<年>尓 障事無 万世尓 如是将<在>登 大舟之 思恃而 出立之 清瀲尓 朝名寸二 来依深海松 夕難岐尓 来依縄法 深海松之 深目思子等遠 縄法之 引者絶登夜 散度人之 行之屯尓 鳴兒成 行取左具利 梓弓 弓腹振起 志乃岐羽矣 二手<狭> 離兼 人斯悔 戀思者
訓読紀の国の 牟婁の江の辺に 千年に 障ることなく 万代に かくしもあらむと 大船の 思ひ頼みて 出立の 清き渚に 朝なぎに 来寄る深海松 夕なぎに 来寄る縄海苔 深海松の 深めし子らを 縄海苔の 引けば絶ゆとや 里人の 行きの集ひに 泣く子なす 行き取り探り 梓弓 弓腹振り起し しのぎ羽を 二つ手挟み 放ちけむ 人し悔しも 恋ふらく思へば
かなきのくにの むろのえのへに ちとせに さはることなく よろづよに かくしもあらむと おほぶねの おもひたのみて いでたちの きよきなぎさに あさなぎに きよるふかみる ゆふなぎに きよるなはのり ふかみるの ふかめしこらを なはのりの ひけばたゆとや さとびとの ゆきのつどひに なくこなす ゆきとりさぐり あづさゆみ ゆばらふりおこし しのぎはを ふたつたばさみ はなちけむ ひとしくやしも こふらくおもへば
英語(ローマ字)KINOKUNINO MURONOENOHENI CHITOSENI SAHARUKOTONAKU YORODUYONI KAKUSHIMOARAMUTO OHOBUNENO OMOHITANOMITE IDETACHINO KIYOKINAGISANI ASANAGINI KIYORUFUKAMIRU YUFUNAGINI KIYORUNAHANORI FUKAMIRUNO FUKAMESHIKORAWO NAHANORINO HIKEBATAYUTOYA SATOBITONO YUKINOTSUDOHINI NAKUKONASU YUKITORISAGURI ADUSAYUMI YUBARAFURIOKOSHI SHINOGIHAWO FUTATSUTABASAMI HANACHIKEMU HITOSHIKUYASHIMO KOFURAKUOMOHEBA
紀の国の牟婁(むろ)の江のあたりに千年にもわたって何の差し支えもなく、未来永劫にこうあらんと大船のような思いで(安心して)、出で立とうと清らかな渚に立っていた。朝なぎどきに寄ってくる深海松(ふかみる)、夕なぎどきに寄ってくる縄海苔(なはのり)。その深海松のように深く恋い焦がれていた子なのに、細い縄海苔を引けば切れるだろうと、ある里人の男が集まりに行った際に、泣く子がものを手探りするように、梓弓を取って矢をつがえ、矢の根元のしのぎ羽を手挟んで放った。その行為が悔しい。安心して私は恋心を寄せていただけに。
左注右一首
校異[元][天][類] / 有 在 [元][天][類] / 狭 挟 [元][天][類]
用語?、田辺、枕詞、植物、民謡、戯笑