万葉集 第8巻 1629番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第8巻1629番歌はこちらにまとめました。

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第8巻 1629番歌

第8巻
歌番号1629番歌
作者大伴家持
題詞大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首[并短歌]
原文叩々 物乎念者 将言為便 将為々便毛奈之 妹与吾 手携而 旦者 庭尓出立 夕者 床打拂 白細乃 袖指代而 佐寐之夜也 常尓有家類 足日木能 山鳥許曽婆 峯向尓 嬬問為云 打蝉乃 人有我哉 如何為跡可 一日一夜毛 離居而 嘆戀良武 許己念者 胸許曽痛 其故尓 情奈具夜登 高圓乃 山尓毛野尓母 打行而 遊徃杼 花耳 丹穂日手有者 毎見 益而所思 奈何為而 忘物曽 戀云物呼
訓読ねもころに 物を思へば 言はむすべ 為むすべもなし 妹と我れと 手携さはりて 朝には 庭に出で立ち 夕には 床うち掃ひ 白栲の 袖さし交へて さ寝し夜や 常にありける あしひきの 山鳥こそば 峰向ひに 妻問ひすといへ うつせみの 人なる我れや 何すとか 一日一夜も 離り居て 嘆き恋ふらむ ここ思へば 胸こそ痛き そこ故に 心なぐやと 高円の 山にも野にも うち行きて 遊び歩けど 花のみ にほひてあれば 見るごとに まして偲はゆ いかにして 忘れむものぞ 恋といふものを
かなねもころに ものをおもへば いはむすべ せむすべもなし いもとあれと てたづさはりて あしたには にはにいでたち ゆふへには とこうちはらひ しろたへの そでさしかへて さねしよや つねにありける あしひきの やまどりこそば をむかひに つまどひすといへ うつせみの ひとなるわれや なにすとか ひとひひとよも さかりゐて なげきこふらむ ここおもへば むねこそいたき そこゆゑに こころなぐやと たかまとの やまにものにも うちゆきて あそびあるけど はなのみ にほひてあれば みるごとに ましてしのはゆ いかにして わすれむものぞ こひといふものを
英語(ローマ字)NEMOKORONI MONOWOOMOHEBA IHAMUSUBE SEMUSUBEMONASHI IMOTOARETO TETADUSAHARITE ASHITANIHA NIHANIIDETACHI YUFUHENIHA TOKOUCHIHARAHI SHIROTAHENO SODESASHIKAHETE SANESHIYOYA TSUNENIARIKERU ASHIHIKINO YAMADORIKOSOBA WOMUKAHINI TSUMADOHISUTOIHE UTSUSEMINO HITONARUWAREYA NANISUTOKA HITOHIHITOYOMO SAKARIゐTE NAGEKIKOFURAMU KOKOOMOHEBA MUNEKOSOITAKI SOKOYUゑNI KOKORONAGUYATO TAKAMATONO YAMANIMONONIMO UCHIYUKITE ASOBIARUKEDO HANANOMI NIHOHITEAREBA MIRUGOTONI MASHITESHINOHAYU IKANISHITE WASUREMUMONOZO KOHITOIFUMONOWO
ねんごろに思いに耽っていると、何と言ったらいいのかどうしてよいのか分からないほどです。あなたと私と手を取り合って、朝方には庭に出て立ち、夕方には床を清めて、真っ白な袖をさしかわして共に寝た夜が普通だったのに。また、山鳥は谷を隔てた峰に向かって、妻問いするというのに。現実の人間たる私は(生活のために)離れて暮らさなくてはならない。一日一夜を過ごすのにどうしていいのやら。あなたを思って嘆くばかり。それが苦しさに、心を慰めようと、高円山や野に出かけて遊び歩いていますが、花だけが咲いている。その花を見るたびに、いっそう思いはつのる。どうしたら忘れることが出来よう。この恋の苦しみを。
左注
校異短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 婆 [類][紀] 波 / 呼 [類][細][温] 乎
用語秋相聞、作者:大伴家持、坂上大嬢、贈答、恋情、奈良、地名
第8巻
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