第8巻1520番歌はこちらにまとめました。
第8巻 1520番歌
巻 | 第8巻 |
歌番号 | 1520番歌 |
作者 | 山上憶良 |
題詞 | (山上<臣>憶良七夕歌十二首) |
原文 | 牽牛者 織女等 天地之 別時<由> 伊奈宇之呂 河向立 <思>空 不安久尓 嘆空 不安久尓 青浪尓 望者多要奴 白雲尓 な者盡奴 如是耳也 伊伎都枳乎良牟 如是耳也 戀都追安良牟 佐丹塗之 小船毛賀茂 玉纒之 真可伊毛我母 [一云 小棹毛何毛] 朝奈藝尓 伊可伎渡 夕塩尓 [一云 夕倍尓毛] 伊許藝渡 久方之 天河原尓 天飛也 領巾可多思吉 真玉手乃 玉手指更 餘宿毛 寐而師可聞 [一云 伊毛左祢而師加] 秋尓安良受登母 [一云 秋不待登毛] |
訓読 | 彦星は 織女と 天地の 別れし時ゆ いなうしろ 川に向き立ち 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに 青波に 望みは絶えぬ 白雲に 涙は尽きぬ かくのみや 息づき居らむ かくのみや 恋ひつつあらむ さ丹塗りの 小舟もがも 玉巻きの 真櫂もがも [一云 小棹もがも] 朝なぎに い掻き渡り 夕潮に [一云 夕にも] い漕ぎ渡り 久方の 天の川原に 天飛ぶや 領巾片敷き 真玉手の 玉手さし交へ あまた夜も 寐ねてしかも [一云 寐もさ寝てしか] 秋にあらずとも [一云 秋待たずとも] |
かな | ひこほしは たなばたつめと あめつちの わかれしときゆ いなうしろ かはにむきたち おもふそら やすけなくに なげくそら やすけなくに あをなみに のぞみはたえぬ しらくもに なみたはつきぬ かくのみや いきづきをらむ かくのみや こひつつあらむ さにぬりの をぶねもがも たままきの まかいもがも [をさをもがも] あさなぎに いかきわたり ゆふしほに [ゆふべにも] いこぎわたり ひさかたの あまのかはらに あまとぶや ひれかたしき またまでの たまでさしかへ あまたよも いねてしかも [いもさねてしか] あきにあらずとも [あきまたずとも] |
英語(ローマ字) | HIKOHOSHIHA TANABATATSUMETO AMETSUCHINO WAKARESHITOKIYU INAUSHIRO KAHANIMUKITACHI OMOFUSORA YASUKENAKUNI NAGEKUSORA YASUKENAKUNI AWONAMINI NOZOMIHATAENU SHIRAKUMONI NAMITAHATSUKINU KAKUNOMIYA IKIDUKIWORAMU KAKUNOMIYA KOHITSUTSUARAMU SANINURINO WOBUNEMOGAMO TAMAMAKINO MAKAIMOGAMO [WOSAWOMOGAMO] ASANAGINI IKAKIWATARI YUFUSHIHONI [YUFUBENIMO] IKOGIWATARI HISAKATANO AMANOKAHARANI AMATOBUYA HIREKATASHIKI MATAMADENO TAMADESASHIKAHE AMATAYOMO INETESHIKAMO [IMOSANETESHIKA] AKINIARAZUTOMO [AKIMATAZUTOMO] |
訳 | 彦星は織女と天地が別れたいにしえより、背中を向けて天の川に向かって立ち、思う、心は安からず、嘆いてきた。心安からず川の青波に逢う望みを絶たれてしまった。白雲に遮られ、涙も涸れてしまった。こうしてため息ばかりつき、こうして恋い焦がれておられようか。赤く塗った小舟でもあったら、玉で飾った櫂があればなあ(一に云う小櫂でもあればなあ」)。朝の凪ぎ時に漕ぎわたり、夕潮時に(一に云う夕べにも」)漕ぎわたり、天の川原に領巾(ひれ)を床代わりに敷いて、互いの手を差し交わし、幾夜も幾夜も寝たいものだ。(一に云う心ゆくまで寝たいものだ」)。(七夕の)秋でなくとも(一に云う(七夕の)秋を待つことなく。 |
左注 | (右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云帥家作]) |
校異 | 雨 由 [西(訂正右書)][類][紀][細] / 宇 [童蒙抄](塙) 牟 / 意 思 [類][紀][温] |
用語 | 秋雑歌、作者:山上憶良、七夕 |