第3巻466番歌はこちらにまとめました。
第3巻 466番歌
巻 | 第3巻 |
歌番号 | 466番歌 |
作者 | 大伴家持 |
題詞 | 又家持作歌一首[并短歌] |
原文 | 吾屋前尓 花曽咲有 其乎見杼 情毛不行 愛八師 妹之有世婆 水鴨成 二人雙居 手折而毛 令見麻思物乎 打蝉乃 借有身在者 <露>霜乃 消去之如久 足日木乃 山道乎指而 入日成 隠去可婆 曽許念尓 胸己所痛 言毛不得 名付毛不知 跡無 世間尓有者 将為須辨毛奈思 |
訓読 | 我がやどに 花ぞ咲きたる そを見れど 心もゆかず はしきやし 妹がありせば 水鴨なす ふたり並び居 手折りても 見せましものを うつせみの 借れる身なれば 露霜の 消ぬるがごとく あしひきの 山道をさして 入日なす 隠りにしかば そこ思ふに 胸こそ痛き 言ひもえず 名づけも知らず 跡もなき 世間にあれば 為むすべもなし |
かな | わがやどに はなぞさきたる そをみれど こころもゆかず はしきやし いもがありせば みかもなす ふたりならびゐ たをりても みせましものを うつせみの かれるみなれば つゆしもの けぬるがごとく あしひきの やまぢをさして いりひなす かくりにしかば そこもふに むねこそいたき いひもえず なづけもしらず あともなき よのなかにあれば せむすべもなし |
英語(ローマ字) | WAGAYADONI HANAZOSAKITARU SOWOMIREDO KOKOROMOYUKAZU HASHIKIYASHI IMOGAARISEBA MIKAMONASU FUTARINARABIゐ TAWORITEMO MISEMASHIMONOWO UTSUSEMINO KARERUMINAREBA TSUYUSHIMONO KENURUGAGOTOKU ASHIHIKINO YAMADIWOSASHITE IRIHINASU KAKURINISHIKABA SOKOMOFUNI MUNEKOSOITAKI IHIMOEZU NADUKEMOSHIRAZU ATOMONAKI YONONAKANIAREBA SEMUSUBEMONASHI |
訳 | 庭先にナデシコの花が咲いた。それを見ても心なごまず。あの愛してやまなかったあの子が生きていてくれたら、水に浮かぶ鴨のようにふたりで並んで立ち、ナデシコの花を手折って見せられたのに。われわれはこの世の仮の身。露や霜のように消えて行く。山路の向こうに消えて行く夕日のように隠れていく。それを思うと、胸が痛み、言いようもなく、名付けようのない気持になる。消えて跡形もないこの世であれば為す術がない。 |
左注 | – |
校異 | 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 / 霑 露 [類] |
用語 | 挽歌、作者:大伴家持、亡妻挽歌、植物、枕詞、無常、天平11年6月、年紀 |