万葉集 第20巻 4360番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第20巻4360番歌はこちらにまとめました。

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第20巻 4360番歌

第20巻
歌番号4360番歌
作者大伴家持
題詞(天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)陳私拙懐一首<[并短歌]>
原文天皇乃 等保伎美与尓毛 於之弖流 難波乃久尓々 阿米能之多 之良志賣之伎等 伊麻能乎尓 多要受伊比都々 可氣麻久毛 安夜尓可之古志 可武奈我良 和其大王乃 宇知奈妣久 春初波 夜知久佐尓 波奈佐伎尓保比 夜麻美礼婆 見能等母之久 可波美礼婆 見乃佐夜氣久 母能其等尓 佐可由流等伎登 賣之多麻比 安伎良米多麻比 之伎麻世流 難波宮者 伎己之乎須 四方乃久尓欲里 多弖麻都流 美都奇能船者 保理江欲里 美乎妣伎之都々 安佐奈藝尓 可治比伎能保理 由布之保尓 佐乎佐之久太理 安治牟良能 佐和伎々保比弖 波麻尓伊泥弖 海原見礼婆 之良奈美乃 夜敝乎流我宇倍尓 安麻乎夫祢 波良々尓宇伎弖 於保美氣尓 都加倍麻都流等 乎知許知尓 伊射里都利家理 曽伎太久毛 於藝呂奈伎可毛 己伎婆久母 由多氣伎可母 許己見礼婆 宇倍之神代由 波自米家良思母
訓読皇祖の 遠き御代にも 押し照る 難波の国に 天の下 知らしめしきと 今の緒に 絶えず言ひつつ かけまくも あやに畏し 神ながら 我ご大君の うち靡く 春の初めは 八千種に 花咲きにほひ 山見れば 見の羨しく 川見れば 見のさやけく ものごとに 栄ゆる時と 見したまひ 明らめたまひ 敷きませる 難波の宮は 聞こし食す 四方の国より 奉る 御調の船は 堀江より 水脈引きしつつ 朝なぎに 楫引き上り 夕潮に 棹さし下り あぢ群の 騒き競ひて 浜に出でて 海原見れば 白波の 八重をるが上に 海人小船 はららに浮きて 大御食に 仕へまつると をちこちに 漁り釣りけり そきだくも おぎろなきかも こきばくも ゆたけきかも ここ見れば うべし神代ゆ 始めけらしも
かなすめろきの とほきみよにも おしてる なにはのくにに あめのした しらしめしきと いまのをに たえずいひつつ かけまくも あやにかしこし かむながら わごおほきみの うちなびく はるのはじめは やちくさに はなさきにほひ やまみれば みのともしく かはみれば みのさやけく ものごとに さかゆるときと めしたまひ あきらめたまひ しきませる なにはのみやは きこしをす よものくにより たてまつる みつきのふねは ほりえより みをびきしつつ あさなぎに かぢひきのぼり ゆふしほに さをさしくだり あぢむらの さわききほひて はまにいでて うなはらみれば しらなみの やへをるがうへに あまをぶね はららにうきて おほみけに つかへまつると をちこちに いざりつりけり そきだくも おぎろなきかも こきばくも ゆたけきかも ここみれば うべしかむよゆ はじめけらしも
英語(ローマ字)SUMEROKINO TOHOKIMIYONIMO OSHITERU NANIHANOKUNINI AMENOSHITA SHIRASHIMESHIKITO IMANOWONI TAEZUIHITSUTSU KAKEMAKUMO AYANIKASHIKOSHI KAMUNAGARA WAGOOHOKIMINO UCHINABIKU HARUNOHAJIMEHA YACHIKUSANI HANASAKINIHOHI YAMAMIREBA MINOTOMOSHIKU KAHAMIREBA MINOSAYAKEKU MONOGOTONI SAKAYURUTOKITO MESHITAMAHI AKIRAMETAMAHI SHIKIMASERU NANIHANOMIYAHA KIKOSHIWOSU YOMONOKUNIYORI TATEMATSURU MITSUKINOFUNEHA HORIEYORI MIWOBIKISHITSUTSU ASANAGINI KADIHIKINOBORI YUFUSHIHONI SAWOSASHIKUDARI ADIMURANO SAWAKIKIHOHITE HAMANIIDETE UNAHARAMIREBA SHIRANAMINO YAHEWORUGAUHENI AMAWOBUNE HARARANIUKITE OHOMIKENI TSUKAHEMATSURUTO WOCHIKOCHINI IZARITSURIKERI SOKIDAKUMO OGIRONAKIKAMO KOKIBAKUMO YUTAKEKIKAMO KOKOMIREBA UBESHIKAMUYOYU HAJIMEKERASHIMO
皇祖の遠い時代にも、照り輝く難波の国にあっても、天下をお治めになってきたと今日に至るまで、ずっと言い伝えてきた。本当に恐れ多い神さながらの大君。草木がなびく春がやってくると、色とりどりの花々が咲き誇り、山は山で見るのに心惹かれ、川は川で見るからにすがすがしい。そういう風物が栄える頃になると、ご覧になり、御心をお晴らしになる。都としていらっしゃる難波の宮には、お治めになっていらっしゃる四方の国々からの貢ぎ物を運ぶ船が難波の堀江に水跡を引きながらやってくる。朝なぎどきには梶を操ってやってくる。夕潮どきには棹を海底にさして操つりつつ下ってくる。あたかもあじ鴨の群れのように騒ぎ競って・・・。浜に出て海原を見ると、白波が重なり合う海上に海人小舟がぽつりぽつりと浮いている。大君の御膳に供しようと、あちこちで釣りを行っている。何と甚大で広大なことか。なんと豊かな光景か。こんな光景を目にすると、なるほど神代の昔から今日までお治めになってこられたのももっともなことだ。
左注(右二月十三日兵部少輔大伴宿祢家持)
校異<> 并短歌 [元][細][紀]
用語天平勝宝7年2月13日、年紀、作者:大伴家持、地名、難波、大阪、枕詞、大君讃美、都讃美
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