万葉集 第19巻 4189番歌/作者・原文・時代・歌・訳

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第19巻 4189番歌

第19巻
歌番号4189番歌
作者大伴家持
題詞贈水烏越前判官大伴宿祢池主歌一首[并短歌]
原文天離 夷等之在者 彼所此間毛 同許己呂曽 離家 等之乃經去者 宇都勢美波 物念之氣思 曽許由恵尓 情奈具左尓 霍公鳥 喧始音乎 橘 珠尓安倍貫 可頭良伎C 遊波之母 麻須良乎々 等毛奈倍立而 叔羅河 奈頭左比泝 平瀬尓波 左泥刺渡 早湍尓 水烏乎潜都追 月尓日尓 之可志安蘇婆祢 波之伎和我勢故
訓読天離る 鄙としあれば そこここも 同じ心ぞ 家離り 年の経ゆけば うつせみは 物思ひ繁し そこゆゑに 心なぐさに 霍公鳥 鳴く初声を 橘の 玉にあへ貫き かづらきて 遊ばむはしも 大夫を 伴なへ立てて 叔羅川 なづさひ上り 平瀬には 小網さし渡し 早き瀬に 鵜を潜けつつ 月に日に しかし遊ばね 愛しき我が背子
かなあまざかる ひなとしあれば そこここも おやじこころぞ いへざかり としのへゆけば うつせみは ものもひしげし そこゆゑに こころなぐさに ほととぎす なくはつこゑを たちばなの たまにあへぬき かづらきて あそばむはしも ますらをを ともなへたてて しくらがは なづさひのぼり ひらせには さでさしわたし はやきせに うをかづけつつ つきにひに しかしあそばね はしきわがせこ
英語(ローマ字)AMAZAKARU HINATOSHIAREBA SOKOKOKOMO OYAJIKOKOROZO IHEZAKARI TOSHINOHEYUKEBA UTSUSEMIHA MONOMOHISHIGESHI SOKOYUゑNI KOKORONAGUSANI HOTOTOGISU NAKUHATSUKOゑWO TACHIBANANO TAMANIAHENUKI KADURAKITE ASOBAMUHASHIMO MASURAWOWO TOMONAHETATETE SHIKURAGAHA NADUSAHINOBORI HIRASENIHA SADESASHIWATASHI HAYAKISENI UWOKADUKETSUTSU TSUKINIHINI SHIKASHIASOBANE HASHIKIWAGASEKO
都から遠く離れた田舎の地、そちらもこちらも同じだよ。都の家から遠ざかり、年が過ぎていく。この世に生きる身とて物思いにふけることしきり。それゆえに、心の慰めにせんとホトトギスの初鳴きに耳を傾け、橘の実を貫いて髪飾りにして心を紛らせています。貴君もきっとそうであろうと思う。その合間に、官吏仲間と連れだって、そちらを流れる叔羅(しくら)川を難渋しながら遡ってみて下さいな。流れの緩やかな平瀬では小網を張り、急流では鵜をもぐらせて、いつの月とも日ともいわず、随時、遊んで下され、わがいとしい貴君。
左注(右九日附使贈之)
校異
用語天平勝宝2年4月9日、年紀、作者:大伴家持、動物、贈答、大伴池主、恋情、地名、高岡、富山、福井、武生