万葉集 第19巻 4169番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第19巻4169番歌はこちらにまとめました。

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第19巻 4169番歌

第19巻
歌番号4169番歌
作者大伴家持
題詞為家婦贈在京尊母所誂作歌一首[并短歌]
原文霍公鳥 来喧五月尓 咲尓保布 花橘乃 香吉 於夜能御言 朝暮尓 不聞日麻祢久 安麻射可流 夷尓之居者 安之比奇乃 山乃多乎里尓 立雲乎 余曽能未見都追 嘆蘇良 夜須<家>奈久尓 念蘇良 苦伎毛能乎 奈呉乃海部之 潜取云 真珠乃 見我保之御面 多太向 将見時麻泥波 松栢乃 佐賀延伊麻佐祢 尊安我吉美 [御面謂之美於毛和]
訓読霍公鳥 来鳴く五月に 咲きにほふ 花橘の かぐはしき 親の御言 朝夕に 聞かぬ日まねく 天離る 鄙にし居れば あしひきの 山のたをりに 立つ雲を よそのみ見つつ 嘆くそら 安けなくに 思ふそら 苦しきものを 奈呉の海人の 潜き取るといふ 白玉の 見が欲し御面 直向ひ 見む時までは 松柏の 栄えいまさね 貴き我が君 [御面謂之美於毛和]
かなほととぎす きなくさつきに さきにほふ はなたちばなの かぐはしき おやのみこと あさよひに きかぬひまねく あまざかる ひなにしをれば あしひきの やまのたをりに たつくもを よそのみみつつ なげくそら やすけなくに おもふそら くるしきものを なごのあまの かづきとるといふ しらたまの みがほしみおもわ ただむかひ みむときまでは まつかへの さかえいまさね たふときあがきみ
英語(ローマ字)HOTOTOGISU KINAKUSATSUKINI SAKINIHOFU HANATACHIBANANO KAGUHASHIKI OYANOMIKOTO ASAYOHINI KIKANUHIMANEKU AMAZAKARU HINANISHIWOREBA ASHIHIKINO YAMANOTAWORINI TATSUKUMOWO YOSONOMIMITSUTSU NAGEKUSORA YASUKENAKUNI OMOFUSORA KURUSHIKIMONOWO NAGONOAMANO KADUKITORUTOIFU SHIRATAMANO MIGAHOSHIMIOMOWA TADAMUKAHI MIMUTOKIMADEHA MATSUKAHENO SAKAEIMASANE TAFUTOKIAGAKIMI
ホトトギスがやってきて鳴く五月。咲きにおう橘の花のように、かぐわしい母上のお言葉。朝夕に聞かない日が積み重なりました。遠く離れた田舎にいるものですから、都とは山々が隔たっています。その間に立つ雲を見ては心休まる時はなく、苦しゅう思いでおります。ここ、奈呉の海の海人(あま)が潜って採るという真珠のように、拝見したいと思う母上のお顔。直接お逢いできる日がくるまで、どうか松や柏のようにお元気でいて下さい。母上様。(歌注に「御面は(みおもあ)という」とある。)。
左注
校異家久 家 [元]
用語天平勝宝2年3月、年紀、作者:大伴家持、動物、植物、枕詞、贈答、代作、坂上郎女、坂上大嬢、寿歌、恋情、高岡、富山