万葉集 第15巻 3691番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第15巻3691番歌はこちらにまとめました。

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第15巻 3691番歌

第15巻
歌番号3691番歌
作者葛井子老
題詞
原文天地等 登毛尓母我毛等 於毛比都々 安里家牟毛能乎 波之家也思 伊敝乎波奈礼弖 奈美能宇倍由 奈豆佐比伎尓弖 安良多麻能 月日毛伎倍奴 可里我祢母 都藝弖伎奈氣婆 多良知祢能 波々母都末良母 安<佐>都由尓 毛能須蘇比都知 由布疑里尓 己呂毛弖奴礼弖 左伎久之毛 安流良牟其登久 伊R見都追 麻都良牟母能乎 世間能 比登<乃>奈氣伎<波> 安比於毛波奴 君尓安礼也母 安伎波疑能 知良敝流野邊乃 波都乎花 可里保尓布<伎>弖 久毛婆奈礼 等保伎久尓敝能 都由之毛能 佐武伎山邊尓 夜杼里世流良牟
訓読天地と ともにもがもと 思ひつつ ありけむものを はしけやし 家を離れて 波の上ゆ なづさひ来にて あらたまの 月日も来経ぬ 雁がねも 継ぎて来鳴けば たらちねの 母も妻らも 朝露に 裳の裾ひづち 夕霧に 衣手濡れて 幸くしも あるらむごとく 出で見つつ 待つらむものを 世間の 人の嘆きは 相思はぬ 君にあれやも 秋萩の 散らへる野辺の 初尾花 仮廬に葺きて 雲離れ 遠き国辺の 露霜の 寒き山辺に 宿りせるらむ
かなあめつちと ともにもがもと おもひつつ ありけむものを はしけやし いへをはなれて なみのうへゆ なづさひきにて あらたまの つきひもきへぬ かりがねも つぎてきなけば たらちねの ははもつまらも あさつゆに ものすそひづち ゆふぎりに ころもでぬれて さきくしも あるらむごとく いでみつつ まつらむものを よのなかの ひとのなげきは あひおもはぬ きみにあれやも あきはぎの ちらへるのへの はつをばな かりほにふきて くもばなれ とほきくにへの つゆしもの さむきやまへに やどりせるらむ
英語(ローマ字)AMETSUCHITO TOMONIMOGAMOTO OMOHITSUTSU ARIKEMUMONOWO HASHIKEYASHI IHEWOHANARETE NAMINOUHEYU NADUSAHIKINITE ARATAMANO TSUKIHIMOKIHENU KARIGANEMO TSUGITEKINAKEBA TARACHINENO HAHAMOTSUMARAMO ASATSUYUNI MONOSUSOHIDUCHI YUFUGIRINI KOROMODENURETE SAKIKUSHIMO ARURAMUGOTOKU IDEMITSUTSU MATSURAMUMONOWO YONONAKANO HITONONAGEKIHA AHIOMOHANU KIMINIAREYAMO AKIHAGINO CHIRAHERUNOHENO HATSUWOBANA KARIHONIFUKITE KUMOBANARE TOHOKIKUNIHENO TSUYUSHIMONO SAMUKIYAMAHENI YADORISERURAMU
天地のようにいつまでもこのままでいるだろうと思っていたのに、ああ、いたわしや。故郷の家を離れ、波の上を難渋しながらやってきて、月日も経ち、雁も次々にやってきては鳴いた。母上や妻も、朝露を受けて裳の裾を濡らし、夕霧に着物の袖を濡らしながら、無事であると信じてその帰りを門に出て待っているだろうに。こんな世間的な嘆きを知らぬ君ではあるまいに。秋萩が散る野辺にススキの初尾花を葺いて仮の宿をこさえ、故郷から遠く雲の彼方に離れ、国の辺境で露霜降りる、こんな寒い山辺に眠ってしまったのだなあ、君は。
左注(右三首葛井連子老作挽歌)
校異左 佐 [類][紀] / 能 乃 [類][紀][細] / 婆 波 [類][紀] / 疑 伎 [類][古][紀]
用語遣新羅使、天平8年、年紀、羈旅、挽歌、雪宅麻呂、作者:葛井子老、枕詞、哀悼、壱岐、長崎