第1巻38番歌はこちらにまとめました。
第1巻 38番歌
巻 | 第1巻 |
歌番号 | 38番歌 |
作者 | 柿本人麻呂 |
題詞 | (幸于吉野宮之時柿本朝臣人麻呂作歌) |
原文 | 安見知之 吾大王 神長柄 神佐備世須登 <芳>野川 多藝津河内尓 高殿乎 高知座而 上立 國見乎為<勢><婆> 疊有 青垣山 々神乃 奉御調等 春部者 花挿頭持 秋立者 黄葉頭<刺>理 [一云 黄葉加射之] <逝>副 川之神母 大御食尓 仕奉等 上瀬尓 鵜川乎立 下瀬尓 小網刺渡 山川母 依弖奉流 神乃御代鴨 |
訓読 | やすみしし 我が大君 神ながら 神さびせすと 吉野川 たぎつ河内に 高殿を 高知りまして 登り立ち 国見をせせば たたなはる 青垣山 山神の 奉る御調と 春へは 花かざし持ち 秋立てば 黄葉かざせり [一云 黄葉かざし] 行き沿ふ 川の神も 大御食に 仕へ奉ると 上つ瀬に 鵜川を立ち 下つ瀬に 小網さし渡す 山川も 依りて仕ふる 神の御代かも |
かな | やすみしし わがおほきみ かむながら かむさびせすと よしのかは たぎつかふちに たかとのを たかしりまして のぼりたち くにみをせせば たたなはる あをかきやま やまつみの まつるみつきと はるへは はなかざしもち あきたてば もみちかざせり [もみちばかざし] ゆきそふ かはのかみも おほみけに つかへまつると かみつせに うかはをたち しもつせに さでさしわたす やまかはも よりてつかふる かみのみよかも |
英語(ローマ字) | YASUMISHISHI WAGAOHOKIMI KAMUNAGARA KAMUSABISESUTO YOSHINOKAHA TAGITSUKAFUCHINI TAKATONOWO TAKASHIRIMASHITE NOBORITACHI KUNIMIWOSESEBA TATANAHARU AWOKAKIYAMA YAMATSUMINO MATSURUMITSUKITO HARUHEHA HANAKAZASHIMOCHI AKITATEBA MOMICHIKAZASERI [MOMICHIBAKAZASHI] YUKISOFU KAHANOKAMIMO OHOMIKENI TSUKAHEMATSURUTO KAMITSUSENI UKAHAWOTACHI SHIMOTSUSENI SADESASHIWATASU YAMAKAHAMO YORITETSUKAFURU KAMINOMIYOKAMO |
訳 | 我が大君は、神であるまま神らしくなさっている。水流がたぎりたつ吉野川の中に高殿を高く高く建てられて、お登りになり、国見をなさると、幾重にも重なる青い垣根のような山々の神が貢ぎ物を捧げる。春の頃は花々をかざし、秋がやってくると色づいたモミジをかかげ、御目にとまる。高殿のそばを流れ下る川の神も、大君のお食事に捧げようと、上流では鵜飼いを設け、下流ではすくい網を設けている。山も川も、こうして大君に仕える、そんな御代であることよ。 |
左注 | (右日本紀曰 三年己丑正月天皇幸吉野宮 八月幸吉野宮 四年庚寅二月幸吉野宮 五月幸吉野宮 五年辛卯正月幸吉野宮 四月幸吉野宮者 未詳知何月従駕作歌) |
校異 | 吉 芳 [元][類][紀] / <> 勢 [冷] / 波 婆 [元] / 判 刺 [元][類][紀] / 遊 逝[元] |
用語 | 雑歌、作者:柿本人麻呂、吉野、離宮、行幸、従駕、宮廷讃美、国見、地名 |
解説
題詞は36番歌から。
「神ながら神さびせすと」は「神であるまま神らしくなさる」という意味である。「たたなはる」は「幾重にも重なる」、「大御食(おほみけ)に」は「お食事に」という意味。
左注は39番歌の最後にかかれている。