第1巻3番歌はこちらにまとめました。
第1巻 3番歌
巻 | 第1巻 |
歌番号 | 3番歌 |
作者 | 中皇命 |
題詞 | 天皇遊猟内野之時中皇命使間人連老獻歌 |
原文 | 八隅知之 我大王乃 朝庭 取撫賜 夕庭 伊縁立之 御執乃 梓弓之 奈加弭乃 音為奈利 朝猟尓 今立須良思 暮猟尓 今他田渚良之 御執<能> <梓>弓之 奈加弭乃 音為奈里 |
訓読 | やすみしし 我が大君の 朝には 取り撫でたまひ 夕には い寄り立たしし み執らしの 梓の弓の 中弭の 音すなり 朝猟に 今立たすらし 夕猟に 今立たすらし み執らしの 梓の弓の 中弭の 音すなり |
かな | やすみしし わがおほきみの あしたには とりなでたまひ ゆふへには いよりたたしし みとらしの あづさのゆみの なかはずの おとすなり あさがりに いまたたすらし ゆふがりに いまたたすらし みとらしの あづさのゆみの なかはずの おとすなり |
英語(ローマ字) | YASUMISHISHI WAGAOHOKIMINO ASHITANIHA TORINADETAMAHI YUFUHENIHA IYORITATASHISHI MITORASHINO ADUSANOYUMINO NAKAHAZUNO OTOSUNARI ASAGARINI IMATATASURASHI YUFUGARINI IMATATASURASHI MITORASHINO ADUSANOYUMINO NAKAHAZUNO OTOSUNARI |
訳 | 八方隅々まで支配なさる大君。朝方には手に取って撫でられ、夕方には寄り添ってお立ちになるご愛用の梓弓。中弭(なかはず)の音が鳴り響いて朝の狩りに今お立ちになったようだ。夕方は夕方で夕方の狩りに今出かけられたようだ。ご愛用の梓弓の中弭の音が鳴り響いている。 |
左注 | – |
校異 | 梓能 能梓 [元] |
用語 | 雑歌、作者:中皇命:間人老、五条市、代作、弓讃め、狩猟、宴席、地名、枕詞、寿歌 |
解説
題詞は「天皇、宇智の野に遊猟(みかり)したまふ時に、中皇命(なかつすめらもこと)の間人連老(はしひとのむらじおゆ)が献(たてまつ)らしめたまふ歌」とある。
「連(むらじ)」とは八色の姓で地方の豪族の位を指す。
「やすみしし」とは「四方八方を知る物」という意味で、天皇に掛かる枕詞。万葉集では29首がこの枕詞が使われており、ほとんどが長歌になる。そのことからも儀式用に使われていたのだろうか。「梓弓」は梓の木で造った弓のこと。「中弭(なかはず)」とは弓の弦の内側という意味。