万葉集 第10巻 2089番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第10巻2089番歌はこちらにまとめました。

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第10巻 2089番歌

第10巻
歌番号2089番歌
作者作者不詳
題詞(七夕)
原文乾坤之 初時従 天漢 射向居而 一年丹 兩遍不遭 妻戀尓 物念人 天漢 安乃川原乃 有通 出々乃渡丹 具穂船乃 艫丹裳舳丹裳 船装 真梶繁<抜> 旗<芒> 本葉裳具世丹 秋風乃 吹<来>夕丹 天<河> 白浪凌 落沸 速湍渉 稚草乃 妻手枕迹 大<舟>乃 思憑而 滂来等六 其夫乃子我 荒珠乃 年緒長 思来之 戀将盡 七月 七日之夕者 吾毛悲焉
訓読天地の 初めの時ゆ 天の川 い向ひ居りて 一年に ふたたび逢はぬ 妻恋ひに 物思ふ人 天の川 安の川原の あり通ふ 出の渡りに そほ舟の 艫にも舳にも 舟装ひ ま楫しじ貫き 旗すすき 本葉もそよに 秋風の 吹きくる宵に 天の川 白波しのぎ 落ちたぎつ 早瀬渡りて 若草の 妻を巻かむと 大船の 思ひ頼みて 漕ぎ来らむ その夫の子が あらたまの 年の緒長く 思ひ来し 恋尽すらむ 七月の 七日の宵は 我れも悲しも
かなあめつちの はじめのときゆ あまのがは いむかひをりて ひととせに ふたたびあはぬ つまごひに ものもふひと あまのがは やすのかはらの ありがよふ いでのわたりに そほぶねの ともにもへにも ふなよそひ まかぢしじぬき はたすすき もとはもそよに あきかぜの ふきくるよひに あまのがは しらなみしのぎ おちたぎつ はやせわたりて わかくさの つまをまかむと おほぶねの おもひたのみて こぎくらむ そのつまのこが あらたまの としのをながく おもひこし こひつくすらむ ふみつきの なぬかのよひは われもかなしも
英語(ローマ字)AMETSUCHINO HAJIMENOTOKIYU AMANOGAHA IMUKAHIWORITE HITOTOSENI FUTATABIAHANU TSUMAGOHINI MONOMOFUHITO AMANOGAHA YASUNOKAHARANO ARIGAYOFU IDENOWATARINI SOHOBUNENO TOMONIMOHENIMO FUNAYOSOHI MAKADISHIJINUKI HATASUSUKI MOTOHAMOSOYONI AKIKAZENO FUKIKURUYOHINI AMANOGAHA SHIRANAMISHINOGI OCHITAGITSU HAYASEWATARITE WAKAKUSANO TSUMAWOMAKAMUTO OHOBUNENO OMOHITANOMITE KOGIKURAMU SONOTSUMANOKOGA ARATAMANO TOSHINOWONAGAKU OMOHIKOSHI KOHITSUKUSURAMU FUMITSUKINO NANUKANOYOHIHA WAREMOKANASHIMO
天地が分かれた原初の時から天の川をはさんで向き合って住み、一年に二度と逢えない妻恋しさに物思う牽牛(彦星)。七夕の日になると、天の川の安の川原にやってきて、出発の時を待つ。艫(船尾)から舳(船首)まで真っ赤に染めて飾り立てた船に、梶をいっぱい取り付ける。ススキが根元から穂先まで旗のようになびく秋の風が吹き立てる宵になると 天の川の白波を押し分け、落ちかかる波にめげず、早瀬を渡って、若草のような妻に手枕しよう(共寝しようと)、大船の力を頼みにして、こちらに漕ぎ進んでくる。その夫が一年の長い月日を恋暮らしてきたことを思うと、七月七日の今宵は私も切なくてございません。
左注
校異出々 (塙)(楓) 出 / <> 抜 [西(右書)][元][類][紀] / 荒 芒 [万葉考] /<> 来 [元][類][紀] / 川 河 [元][類][紀] / 船 舟 [元][紀]
用語秋雑歌、七夕