第18巻4113番歌はこちらにまとめました。
第18巻 4113番歌
巻 | 第18巻 |
歌番号 | 4113番歌 |
作者 | 大伴家持 |
題詞 | 庭中花作歌一首[并短歌] |
原文 | 於保支見能 等保能美可等々 末支太末不 官乃末尓末 美由支布流 古之尓久多利来 安良多末能 等之<乃>五年 之吉多倍乃 手枕末可受 比毛等可須 末呂宿乎須礼波 移夫勢美等 情奈具左尓 奈泥之故乎 屋戸尓末<枳>於保之 夏能<々> 佐由利比伎宇恵天 開花乎 移<弖>見流其等尓 那泥之古我 曽乃波奈豆末尓 左由理花 由利母安波無等 奈具佐無流 許己呂之奈久波 安末射可流 比奈尓一日毛 安流部久母安礼也 |
訓読 | 大君の 遠の朝廷と 任きたまふ 官のまにま み雪降る 越に下り来 あらたまの 年の五年 敷栲の 手枕まかず 紐解かず 丸寝をすれば いぶせみと 心なぐさに なでしこを 宿に蒔き生ほし 夏の野の さ百合引き植ゑて 咲く花を 出で見るごとに なでしこが その花妻に さ百合花 ゆりも逢はむと 慰むる 心しなくは 天離る 鄙に一日も あるべくもあれや |
かな | おほきみの とほのみかどと まきたまふ つかさのまにま みゆきふる こしにくだりき あらたまの としのいつとせ しきたへの たまくらまかず ひもとかず まろねをすれば いぶせみと こころなぐさに なでしこを やどにまきおほし なつののの さゆりひきうゑて さくはなを いでみるごとに なでしこが そのはなづまに さゆりばな ゆりもあはむと なぐさむる こころしなくは あまざかる ひなにひとひも あるべくもあれや |
英語(ローマ字) | OHOKIMINO TOHONOMIKADOTO MAKITAMAFU TSUKASANOMANIMA MIYUKIFURU KOSHINIKUDARIKI ARATAMANO TOSHINOITSUTOSE SHIKITAHENO TAMAKURAMAKAZU HIMOTOKAZU MARONEWOSUREBA IBUSEMITO KOKORONAGUSANI NADESHIKOWO YADONIMAKIOHOSHI NATSUNONONO SAYURIHIKIUゑTE SAKUHANAWO IDEMIRUGOTONI NADESHIKOGA SONOHANADUMANI SAYURIBANA YURIMOAHAMUTO NAGUSAMURU KOKOROSHINAKUHA AMAZAKARU HINANIHITOHIMO ARUBEKUMOAREYA |
訳 | 大君の遠(とお)の朝廷(みかど)へと任命され、官職の役目のままに、雪深い越の国に下ってきた。以来五年もの間、手枕もせず、着物の紐も解かず、ごろ寝する日々は気が滅入る。その心の慰めに、ナデシコをわが庭に蒔いて育てる。夏には野外から百合を引いてきて植え、花が咲くのを庭に出て見る。ナデシコがその花妻にする百合を眺める。そのゆりのように後(ゆり)には逢おうと慰めることでもなければ、遠い遠い田舎の地に一日たりと暮らしていけようか。 |
左注 | (同閏五月廿六日大伴宿祢家持作) |
校異 | 短歌 [西] 短謌 / 能 乃 [元][類] / 波 [類] 婆 / <> 枳 [西(右書)][元][類][紀] / 々之 々 [元][類] / R 弖 [元][類] |
用語 | 天平感宝1年閏5月26日、作者:大伴家持、年紀、植物、枕詞、慰撫、高岡、富山 |