万葉集 第3巻 460番歌/作者・原文・時代・歌・訳

第3巻460番歌はこちらにまとめました。

スポンサーリンク

第3巻 460番歌

第3巻
歌番号460番歌
作者坂上郎女
題詞七年乙亥大伴坂上郎女悲嘆尼理願死去作歌一首[并短歌]
原文栲角乃 新羅國従 人事乎 吉跡所聞而 問放流 親族兄弟 無國尓 渡来座而 大皇之 敷座國尓 内日指 京思美弥尓 里家者 左波尓雖在 何方尓 念鷄目鴨 都礼毛奈吉 佐保乃山邊<尓> 哭兒成 慕来座而 布細乃 宅乎毛造 荒玉乃 年緒長久 住乍 座之物乎 生者 死云事尓 不免 物尓之有者 憑有之 人乃盡 草<枕> 客有間尓 佐保河乎 朝河渡 春日野乎 背向尓見乍 足氷木乃 山邊乎指而 晩闇跡 隠益去礼 将言為便 将為須敝不知尓 徘徊 直獨而 白細之 衣袖不干 嘆乍 吾泣涙 有間山 雲居軽引 雨尓零寸八
訓読栲づのの 新羅の国ゆ 人言を よしと聞かして 問ひ放くる 親族兄弟 なき国に 渡り来まして 大君の 敷きます国に うち日さす 都しみみに 里家は さはにあれども いかさまに 思ひけめかも つれもなき 佐保の山辺に 泣く子なす 慕ひ来まして 敷栲の 家をも作り あらたまの 年の緒長く 住まひつつ いまししものを 生ける者 死ぬといふことに 免れぬ ものにしあれば 頼めりし 人のことごと 草枕 旅なる間に 佐保川を 朝川渡り 春日野を そがひに見つつ あしひきの 山辺をさして 夕闇と 隠りましぬれ 言はむすべ 為むすべ知らに たもとほり ただひとりして 白栲の 衣袖干さず 嘆きつつ 我が泣く涙 有間山 雲居たなびき 雨に降りきや
かなたくづのの しらきのくにゆ ひとごとを よしときかして とひさくる うがらはらから なきくにに わたりきまして おほきみの しきますくにに うちひさす みやこしみみに さといへは さはにあれども いかさまに おもひけめかも つれもなき さほのやまへに なくこなす したひきまして しきたへの いへをもつくり あらたまの としのをながく すまひつつ いまししものを いけるもの しぬといふことに まぬかれぬ ものにしあれば たのめりし ひとのことごと くさまくら たびなるほとに さほがはを あさかはわたり かすがのを そがひにみつつ あしひきの やまへをさして ゆふやみと かくりましぬれ いはむすべ せむすべしらに たもとほり ただひとりして しろたへの ころもでほさず なげきつつ わがなくなみた ありまやま くもゐたなびき あめにふりきや
英語(ローマ字)TAKUDUNONO SHIRAKINOKUNIYU HITOGOTOWO YOSHITOKIKASHITE TOHISAKURU UGARAHARAKARA NAKIKUNINI WATARIKIMASHITE OHOKIMINO SHIKIMASUKUNINI UCHIHISASU MIYAKOSHIMIMINI SATOIHEHA SAHANIAREDOMO IKASAMANI OMOHIKEMEKAMO TSUREMONAKI SAHONOYAMAHENI NAKUKONASU SHITAHIKIMASHITE SHIKITAHENO IHEWOMOTSUKURI ARATAMANO TOSHINOWONAGAKU SUMAHITSUTSU IMASHISHIMONOWO IKERUMONO SHINUTOIFUKOTONI MANUKARENU MONONISHIAREBA TANOMERISHI HITONOKOTOGOTO KUSAMAKURA TABINARUHOTONI SAHOGAHAWO ASAKAHAWATARI KASUGANOWO SOGAHINIMITSUTSU ASHIHIKINO YAMAHEWOSASHITE YUFUYAMITO KAKURIMASHINURE IHAMUSUBE SEMUSUBESHIRANI TAMOTOHORI TADAHITORISHITE SHIROTAHENO KOROMODEHOSAZU NAGEKITSUTSU WAGANAKUNAMITA ARIMAYAMA KUMOゐTANABIKI AMENIFURIKIYA
新羅の国から人づてによい所と聞いて、はるばると親族や兄弟もない国に渡って来られた。大君が治めておられる国の都にはぎっしりと里も家も多くあるのにどう思われたか、何のゆかりも知り合いもない佐保の山辺に泣く子が親を慕うようにやってこられた。家も佐保に構えられ、長年月住まわれていたのに。生ける人はいつかは死ぬのを免れない定め。頼りに思っていた人たちがことごとく旅に出ていた間に、春日野を背後にして、朝佐保川を渡り、山辺の向こうに夕闇に隠れるように、お亡くなりになってしまった。何とも言いようがなく、為す術もわからず、ただひとりあちこちさまよい、真っ白な着物が涙で乾くひまがないほど、私は嘆き、悲しんだ。有間山には雲がたなびき、雨となって降ったことでしょうか。
左注(右新羅國尼名曰理願也 遠感王徳歸化聖朝 於時寄住大納言大将軍大伴卿家 既逕數紀焉 惟以天平七年乙亥忽沈運病既<趣>泉界 於是大家石川命婦 依餌藥事 徃有間温泉而不會此喪 但郎女獨留葬送屍柩既訖 仍作此歌贈入温泉)
校異歌 [西] 謌 別筆 歌 / <> 尓 [西(右書)][類][紀] / <> 枕 [西(右書)][類][紀]
用語挽歌、作者:坂上郎女、理願、地名、奈良、枕詞、天平7年、年紀
第3巻
スポンサーリンク
万葉集ナビ
タイトルとURLをコピーしました