高橋虫麻呂が書いた万葉集

高橋虫麻呂が書いた万葉集についてまとめました。

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掲載数 全 38 首

歌番号本歌
第3巻319番歌なまよみの 甲斐の国 うち寄する 駿河の国と こちごちの 国のみ中ゆ 出で立てる 富士の高嶺は 天雲も い行きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びも上らず 燃ゆる火を 雪もち消ち 降る雪を 火もち消ちつつ 言ひも得ず 名付けも知らず くすしくも います神かも せの海と 名付けてあるも その山の つつめる海ぞ 富士川と 人の渡るも その山の 水のたぎちぞ 日の本の 大和の国の 鎮めとも います神かも 宝とも なれる山かも 駿河なる 富士の高嶺は 見れど飽かぬかも
第3巻320番歌富士の嶺に降り置く雪は六月の十五日に消ぬればその夜降りけり
第3巻321番歌富士の嶺を高み畏み天雲もい行きはばかりたなびくものを
第3巻481番歌白栲の 袖さし交へて 靡き寝し 我が黒髪の ま白髪に なりなむ極み 新世に ともにあらむと 玉の緒の 絶えじい妹と 結びてし ことは果たさず 思へりし 心は遂げず 白栲の 手本を別れ にきびにし 家ゆも出でて みどり子の 泣くをも置きて 朝霧の おほになりつつ 山背の 相楽山の 山の際に 行き過ぎぬれば 言はむすべ 為むすべ知らに 我妹子と さ寝し妻屋に 朝には 出で立ち偲ひ 夕には 入り居嘆かひ 脇ばさむ 子の泣くごとに 男じもの 負ひみ抱きみ 朝鳥の 哭のみ泣きつつ 恋ふれども 験をなみと 言とはぬ ものにはあれど 我妹子が 入りにし山を よすかとぞ思ふ
第3巻482番歌うつせみの世のことにあれば外に見し山をや今はよすかと思はむ
第3巻483番歌朝鳥の哭のみし泣かむ我妹子に今またさらに逢ふよしをなみ
第6巻972番歌千万の軍なりとも言挙げせず取りて来ぬべき男とぞ思ふ
第8巻1497番歌筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥山彦響め鳴かましやそれ
第9巻1738番歌しなが鳥 安房に継ぎたる 梓弓 周淮の珠名は 胸別けの 広き我妹 腰細の すがる娘子の その顔の きらきらしきに 花のごと 笑みて立てれば 玉桙の 道行く人は おのが行く 道は行かずて 呼ばなくに 門に至りぬ さし並ぶ 隣の君は あらかじめ 己妻離れて 乞はなくに 鍵さへ奉る 人皆の かく惑へれば たちしなひ 寄りてぞ妹は たはれてありける
第9巻1739番歌金門にし人の来立てば夜中にも身はたな知らず出でてぞ逢ひける
第9巻1740番歌春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て 釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる 水江の 浦島の子が 鰹釣り 鯛釣りほこり 七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向ひ 相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り 海神の 神の宮の 内のへの 妙なる殿に たづさはり ふたり入り居て 老いもせず 死にもせずして 長き世に ありけるものを 世間の 愚か人の 我妹子に 告りて語らく しましくは 家に帰りて 父母に 事も告らひ 明日のごと 我れは来なむと 言ひければ 妹が言へらく 常世辺に また帰り来て 今のごと 逢はむとならば この櫛笥 開くなゆめと そこらくに 堅めし言を 住吉に 帰り来りて 家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて あやしみと そこに思はく 家ゆ出でて 三年の間に 垣もなく 家失せめやと この箱を 開きて見てば もとのごと 家はあらむと 玉櫛笥 少し開くに 白雲の 箱より出でて 常世辺に たなびきぬれば 立ち走り 叫び袖振り こいまろび 足ずりしつつ たちまちに 心消失せぬ 若くありし 肌も皺みぬ 黒くありし 髪も白けぬ ゆなゆなは 息さへ絶えて 後つひに 命死にける 水江の 浦島の子が 家ところ見ゆ
第9巻1741番歌常世辺に住むべきものを剣大刀汝が心からおそやこの君
第9巻1742番歌しな照る 片足羽川の さ丹塗りの 大橋の上ゆ 紅の 赤裳裾引き 山藍もち 摺れる衣着て ただ独り い渡らす子は 若草の 夫かあるらむ 橿の実の 独りか寝らむ 問はまくの 欲しき我妹が 家の知らなく
第9巻1743番歌大橋の頭に家あらばま悲しく独り行く子に宿貸さましを
第9巻1744番歌埼玉の小埼の沼に鴨ぞ羽霧るおのが尾に降り置ける霜を掃ふとにあらし
第9巻1745番歌三栗の那賀に向へる曝井の絶えず通はむそこに妻もが
第9巻1746番歌遠妻し多賀にありせば知らずとも手綱の浜の尋ね来なまし
第9巻1747番歌白雲の 龍田の山の 瀧の上の 小椋の嶺に 咲きををる 桜の花は 山高み 風しやまねば 春雨の 継ぎてし降れば ほつ枝は 散り過ぎにけり 下枝に 残れる花は しましくは 散りな乱ひそ 草枕 旅行く君が 帰り来るまで
第9巻1748番歌我が行きは七日は過ぎじ龍田彦ゆめこの花を風にな散らし
第9巻1749番歌白雲の 龍田の山を 夕暮れに うち越え行けば 瀧の上の 桜の花は 咲きたるは 散り過ぎにけり ふふめるは 咲き継ぎぬべし こちごちの 花の盛りに 見さずとも 君がみ行きは 今にしあるべし
第9巻1750番歌暇あらばなづさひ渡り向つ峰の桜の花も折らましものを
第9巻1751番歌島山を い行き廻れる 川沿ひの 岡辺の道ゆ 昨日こそ 我が越え来しか 一夜のみ 寝たりしからに 峰の上の 桜の花は 瀧の瀬ゆ 散らひて流る 君が見む その日までには 山おろしの 風な吹きそと うち越えて 名に負へる杜に 風祭せな
第9巻1752番歌い行き逢ひの坂のふもとに咲きををる桜の花を見せむ子もがも
第9巻1753番歌衣手 常陸の国の 二並ぶ 筑波の山を 見まく欲り 君来ませりと 暑けくに 汗かき嘆げ 木の根取り うそぶき登り 峰の上を 君に見すれば 男神も 許したまひ 女神も ちはひたまひて 時となく 雲居雨降る 筑波嶺を さやに照らして いふかりし 国のまほらを つばらかに 示したまへば 嬉しみと 紐の緒解きて 家のごと 解けてぞ遊ぶ うち靡く 春見ましゆは 夏草の 茂くはあれど 今日の楽しさ
第9巻1754番歌今日の日にいかにかしかむ筑波嶺に昔の人の来けむその日も
第9巻1755番歌鴬の 卵の中に 霍公鳥 独り生れて 己が父に 似ては鳴かず 己が母に 似ては鳴かず 卯の花の 咲きたる野辺ゆ 飛び翔り 来鳴き響もし 橘の 花を居散らし ひねもすに 鳴けど聞きよし 賄はせむ 遠くな行きそ 我が宿の 花橘に 住みわたれ鳥
第9巻1756番歌かき霧らし雨の降る夜を霍公鳥鳴きて行くなりあはれその鳥
第9巻1757番歌草枕 旅の憂へを 慰もる こともありやと 筑波嶺に 登りて見れば 尾花散る 師付の田居に 雁がねも 寒く来鳴きぬ 新治の 鳥羽の淡海も 秋風に 白波立ちぬ 筑波嶺の よけくを見れば 長き日に 思ひ積み来し 憂へはやみぬ
第9巻1758番歌筑波嶺の裾廻の田居に秋田刈る妹がり遣らむ黄葉手折らな
第9巻1759番歌鷲の住む 筑波の山の 裳羽服津の その津の上に 率ひて 娘子壮士の 行き集ひ かがふかがひに 人妻に 我も交らむ 我が妻に 人も言問へ この山を うしはく神の 昔より 禁めぬわざぞ 今日のみは めぐしもな見そ 事もとがむな [の歌は、東の俗語に賀我比と曰ふ]
第9巻1760番歌男神に雲立ち上りしぐれ降り濡れ通るとも我れ帰らめや
第9巻1780番歌ことひ牛の 三宅の潟に さし向ふ 鹿島の崎に さ丹塗りの 小舟を設け 玉巻きの 小楫繁貫き 夕潮の 満ちのとどみに 御船子を 率ひたてて 呼びたてて 御船出でなば 浜も狭に 後れ並み居て こいまろび 恋ひかも居らむ 足すりし 音のみや泣かむ 海上の その津を指して 君が漕ぎ行かば
第9巻1781番歌海つ道のなぎなむ時も渡らなむかく立つ波に船出すべしや
第9巻1807番歌鶏が鳴く 東の国に 古へに ありけることと 今までに 絶えず言ひける 勝鹿の 真間の手児名が 麻衣に 青衿着け ひたさ麻を 裳には織り着て 髪だにも 掻きは梳らず 沓をだに はかず行けども 錦綾の 中に包める 斎ひ子も 妹にしかめや 望月の 足れる面わに 花のごと 笑みて立てれば 夏虫の 火に入るがごと 港入りに 舟漕ぐごとく 行きかぐれ 人の言ふ時 いくばくも 生けらじものを 何すとか 身をたな知りて 波の音の 騒く港の 奥城に 妹が臥やせる 遠き代に ありけることを 昨日しも 見けむがごとも 思ほゆるかも
第9巻1808番歌勝鹿の真間の井見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ
第9巻1809番歌葦屋の 菟原娘子の 八年子の 片生ひの時ゆ 小放りに 髪たくまでに 並び居る 家にも見えず 虚木綿の 隠りて居れば 見てしかと いぶせむ時の 垣ほなす 人の問ふ時 茅渟壮士 菟原壮士の 伏屋焚き すすし競ひ 相よばひ しける時は 焼太刀の 手かみ押しねり 白真弓 靫取り負ひて 水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ 競ひし時に 我妹子が 母に語らく しつたまき いやしき我が故 ますらをの 争ふ見れば 生けりとも 逢ふべくあれや ししくしろ 黄泉に待たむと 隠り沼の 下延へ置きて うち嘆き 妹が去ぬれば 茅渟壮士 その夜夢に見 とり続き 追ひ行きければ 後れたる 菟原壮士い 天仰ぎ 叫びおらび 地を踏み きかみたけびて もころ男に 負けてはあらじと 懸け佩きの 小太刀取り佩き ところづら 尋め行きければ 親族どち い行き集ひ 長き代に 標にせむと 遠き代に 語り継がむと 娘子墓 中に造り置き 壮士墓 このもかのもに 造り置ける 故縁聞きて 知らねども 新裳のごとも 哭泣きつるかも
第9巻1810番歌芦屋の菟原娘子の奥城を行き来と見れば哭のみし泣かゆ
第9巻1811番歌墓の上の木の枝靡けり聞きしごと茅渟壮士にし寄りにけらしも
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